【今回読んだ本】
「イノセント・ゲリラの祝祭」海堂尊
「ジェネラル・ルージュの伝説」海堂尊
「アリアドネの弾丸」 海堂尊
「玉村警部補の災難」 海堂尊
「ケルベロスの肖像」 海堂尊
「カレイドスコープの箱庭」 海堂尊
「イノセント・ゲリラの祝祭」海堂尊
「チーム・バチスタの栄光」から続く「田口・白鳥シリーズ」第4作。
厚生労働省の組織内部の話が多くて、これまでとは趣が変わっていた。
法医学の話は興味深いけど、とっつきはかなり悪くて、予備知識のない私にはしんどい内容だった。
作者の幅の広さはすごいものだと感服する。エンタメだけど勉強になった気がする1冊だった。
「ジェネラル・ルージュの伝説」 海堂尊
「チーム・バチスタの栄光」から続く「田口・白鳥シリーズ」の番外編。
主に4部から成り、最初は短編小説が3つ。
「伝説 1991」、「疾風 2006」、「残照 2007」はいずれも救急医・速水が活躍する「ジェネラル・ルージュの凱旋」を補完するような話。
次の「海堂尊物語」は小説の背景が垣間見えて興味深く読んだ。
幼年時代から外科医、病理医時代と続き、2005年が「海堂尊・0歳」となっていた。
本は「5歳」まで書かれている。今年(2025年)で成人。続きも読んでみたい。いつか書かれるだろうか。
次は「自作解説」。
「医学のたまご」で
「子どもは難しいことがわからないのではなく、不明瞭なものがわからないのだ」
という気づき(悟り)はなるほどと思った。
最後は「海堂尊ワールド」。
「桜宮市年表」「登場人物リスト」「用語辞典」。
著者の小説は「桜宮市」「東城大学医学部付属病院」を主な舞台に、緩やかなつながりを持って描かれている。
ということながら、他の部分で「辻褄が合わなくなってくる」と書かれていた。
これだけ世界が広がると、プロとは言えそりゃそうだろうと思う。
「アリアドネの弾丸」 海堂尊
「田口・白鳥シリーズ」第5作。
前作「イノセント・ゲリラの祝祭」に続いて、なかなか取っつきにくい内容。予備知識がないのでしんどかった。
シリーズの中でも本作は本格ミステリー寄り。題材は難しいものの、話はとても面白い。
高階院長が無実の罪で逮捕され、田口・白鳥たちは無実の証明と真犯人を突き止めるために悪戦苦闘する。
白鳥の謎解きは鮮やか。
「間接証拠」ばかりで手強い宇佐警視を追い詰めるのはお見事。それ故に分かりづらくて難しくもあるんだけど。
よく、こんな話を考えつくものだと思う。
印象に残った所。(宝島社文庫で読みました)
7章 警察官僚達の会話が、まるで時代劇でお馴染み“越後屋”のよう。
本作では警察は完全に悪役として描かれている。
27章(下巻109ページ) 白鳥が宇佐美警視を評して「ウサちゃんは油断なんかしてないよ。休める時に休む、というのは強敵の証拠さ」
37章(下巻255ページ) 宇佐美警視の死に対して、冷たくビジネスライクな態度の斑鳩広報室長に白鳥が言う
「(~前略)ウサちゃんの背中に憑いた化け物が、僕の本当の敵なんだ。(後略~)」
続編が楽しみになる台詞。
死因不明社会、エーアイについて、田口・白鳥を始めこの後どんな展開が待っているのか。
「玉村警部補の災難」 海堂尊
「田口・白鳥シリーズ」番外編。短編集。
本編より大分軽め。
玉村警部補は桜宮警察署捜査一課勤務。警察庁から出向中の加納警視正の部下。
加納警視正の命令で、東城大学医学部付属病院の不定愁訴外来を訪れ、田口講師と過去5件の事件を振り返る。
各タイトル。
「不定愁訴外来の来訪者」
「東京二十三区内外殺人事件」
「青空迷宮」
「四兆七千億分の一の憂鬱」
「エナメルの証言」
「ケルベロスの肖像」 海堂尊
「田口・白鳥シリーズ」第6作。
前作「アリアドネの弾丸」から1年後。
東城大学Aiセンター長に就任し(お飾りとして祭り上げられ?)た不定愁訴外来の田口講師は、センター稼働を目前に控えて忙しい日々を過ごしていた。
そんな中、高階病院長から、厚生労働省の依頼で院長宛に送られた「八の月、東城大とケルベロスの塔を破壊する」と綴られた脅迫状の調査協力を依頼される。
「アリアドネの弾丸」までしばらく難しい話が続いていたんだけど、本作は取っつきやすい。
会議のシーンも、第4作「イノセント・ゲリラの祝祭」と比べてスッと頭に入ってくる。
(ひょっとしたら、こちらが慣れただけかもしれないけど)
シリーズもの特有の、ホームに帰ってきたような安心感を感じる。
印象に残ったところ。(宝島社のハードカバーで読みました)
第2章(19ページ) 脅迫状についての描写。
「(前略)~という文面が、大小不同の新聞の切り抜き文字で貼り付けられていれば、幼稚園児だって一発で脅迫状だとわかるだろう。」
シンプルで、とても分かりやすい表現。刑事ドラマなどで見た脅迫状がすぐに頭に浮かんでくる。
さすが作家。と、言うまでもないことを思って感心した。うまい。
第8章(78ページ) 薬を飲む理由。
「お薬というのは、もともと毒なんです。(中略)ではどうして毒を飲むのか。それは毒の害以上に、病気の状態が悪いからです。薬は毒だから身体には悪いんですが、同時に病気に対しても害になります。病気に対する害の度合いが、身体に対する度合いより強いので、お薬を飲む意義があるのです。」
これも、感動するくらいの分かりやすさ。
第9章(86ページ) Ai導入に反対する勢力に対して
「つまり法医学者の一部は、自分たちの保身のために、自分たちの領域に社会的に有用なAiを封じ込めてしまおうとしているわけか」
(中略)「~彼らは、市民社会に有用な死因究明制度を作ることではなく、自分たちの領域の権益を保全したいだけなんだ」
「あさましい話だな」(後略)
小説という形を取ってはいるけど、強烈だ。
でも、「ジェネラル・ルージュの伝説」等を読む限り、現実もそうなのかと思った。
第18章(188ページ) Aiセンター運営連絡会議で、アンチAi派の1人、循環器内科の陣内教授と彦根Aiセンター副センター長のせめぎあい。
「(前略)内科学会がAiという用語をないがしろにするのは、法医学会と結託し、解剖主体の死因究明制度と、おこぼれのモデル事業というミニ利権を守りたいだけだ(後略)」
こちらも強烈だ。
第19章(196ページ) 火花が散るような丁々発止のやり取り。会議は続く。
「まあ、文学的表現というものは往々にして底意地が悪いものかと」
第20章(220ページ) 東堂Aiセンター・スペシャルバイザー(マサチューセッツ医科大学上席教授)が、田口Aiセンター長に対して
「改めてマイボスの決断を、心の底からリスペクトしたい。(後略)」
シリーズでおなじみのキャラがコミカルなやり取りをするシーンで楽しい。(東堂は本作「ケルベロスの肖像」からの新キャラだけど)
第21章(224ページ) 空港の説明。勉強になった。
「尾張市の大牧空港は、民間空港に自衛隊の航空基地が併設される相乗り型の地方空港だ。
自衛隊基地と民間空港が併設されていると、経費削減などの点でメリットがあるという。
普通の国家なら、自衛隊施設は軍事施設に相当するから、側に民間施設を設置するなど考えられないが、日本の自衛隊は攻撃性に乏しく、社会的な公益性が高い組織だから可能なのだろう。」
ちなみに、大牧空港は愛知県の小牧空港がモデルだと思うけど、中部国際空港(セントレア)が出来るまではよく利用した。
確かに自衛隊の航空基地が併設されていた。
第25章(261ページ) 東堂スーパーバイザーとAiアンチの南雲・元極北市監察医務院院長とのやり取りを見た田口センター長が
「俺は震えた。これは東堂の宣戦布告ではないか」
この辺りから物語は佳境に入る。
第28章(290ページ) モチを喉に詰まらせて死亡したと偽装した死体を見事にAiで覆したところを目の当たりにした南雲・元極北市監察医務院院長が
「検視の質も低下している。理詰めで相手を説得できるAiセンターは必要悪かもしれんな」
風向きが変わってきたのか!?と思った。
素人目にはAiの有益性は明らかで、さっさと推進すれば良いと思うんだけど、医療とは関係のない業界にいる自分でも既得権益やしがらみから抵抗勢力が出てくるのは理解できる。
第33章(330ページ) ブラックペアンの話がここでつながってくるのかと驚いた。
この後の急展開は驚きの連続で、34章のクライマックスでは呆然とした。何と言う、予想外の展開。
これは、次作もすぐに読まなければ。
「カレイドスコープの箱庭」 海堂尊
そう思って早速買った。笑
「田口・白鳥シリーズ」第7作にして、最終作。
「ケルベロスの肖像」事件で閉鎖の危機に陥った東城大学医学部附属病院。
そんな中、「不定愁訴外来(別名・愚痴外来)」の責任者・田口に今度は病理医の検体取り違え疑惑の調査が依頼される。
田口はAiセンター長としてAi標準化国際会議の準備も抱える中、厚労省の白鳥圭輔らと疑惑調査に取り組む。
患者は激減しているものの、市民の支えもあって病院は継続している。
今回の事件は患者検体の取替え疑惑。
解決後、存続が危ぶまれた病理学科の新しい体制が立ち上がり、期待と不安が描かれて物語は終結する。
最後にしてはちょっと短いかな?と思ったけど、速水、桐生と懐かしい面々が次々に登場するところなんかは最終作にふさわしい。
後半は「放言日記2010〜2015」。
「ジェネラル・ルージュの伝説」にあった「海堂尊ワールド」の続き。
「海堂尊・5歳」から。
Aiについての記述は相変わらず鋭く、阻害する者には辛辣な描写が並ぶ。
「放言日記」の後は「あとがき」。
「永遠の二葉書店」良い話だった。
著者は結構テレビに出ていたのだと知る。
どこで見たのか、見覚えのある人だと思っていた。
著者が文学賞に縁がないのは不思議だ。何かしら獲っていておかしくない作品だと思うけど。
色んなところに噛みつきすぎたせいか。
まあ、一般読者はほとんどの賞を知らないし関心もないけど。