ファースト・インプレッション

はじめに思ったことは、忘れてしまうからこそ貴重である。

その貴重さに気がついている人は少ない。



いままで一人だけ、

はじめに思ったことをとても大切にしている人がいた。

はじめて会った人の印象を

忘れないように書き留めておくのだそうだ。

あとから見直してみると、

ずいぶん印象が変わったなとわかる。

それがおもしろいといっていた。



職場改造計画がじわりじわりと範囲を広げ、

とうとうゴミ箱の数を大幅削減するに至った。

もともと7個くらいのゴミ箱が

一つの部屋においてあった。

7個もあれば、部屋のどこにいても

近くにゴミ箱があるのだけれど、

本当にそんなに必要か。

ゴミを集めるのも大変である。

ゴミを集めるのは新人の仕事である。



それで思い出した。

新人のころは、

なんでこんなにゴミ箱があるんだと思っていた。

減らせばいいのにと。

でも職場に馴染むに従って、

一つの部屋に7個ゴミ箱があるのが

ふつうになってしまっていた。

ゴミ箱の個数の感覚がいつのまにか鈍ったのである。



慣れてしまったら、二度と感じられることはない。

だから、最初に思ったことは貴重である。