6月に胃カメラでの検診を行なったところ、どうやらピロリ菌がいるらしいという判定が下り、駆除を行なうことになった。別に自覚症状はないのだが、胃癌発症の3%はピロリ菌保有者、逆にピロリ菌無保有者の胃癌発症率や0%と聞かされると、医者から強制されなくても駆除希望となるのはアタリマエだろう。
ということで、投薬中の1週間という長きに渡る禁酒生活を送った後、8月に入ってから駆除が成功したかどうかを検査したところ、どうやら成功したらしいということがわかった。
この検査は、ピロリ菌の体内にあるウレアーゼという酵素が人間の胃の中の尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解、この二酸化炭素が血液を循環して呼気に排泄されるので、その二酸化炭素の量を測定するというもの。測定に当たっては服用する薬に13C-尿素という尿素の同位体を用い、それが分解されると二酸化炭素の同位体である13CO2が排出されるので、もしも呼気の中にこの13CO2が検出されない、つまり排泄されていないとすれば、「ピロリ菌がいないために分解されていない」という方程式が成り立ち、駆除が成功したということになるわけだ。
この測定に赤外分光が使用されているという。いわゆるスペクトラム解析だ。化学の分野では定性分析などで良く使われている技術だが、エレクトロニクスでは解析したい信号にどの様な周波数成分が含まれているかを調べるために、頻繁に使われる技術で、その測定器を通称スペアナと呼んでいる。
かつて小生が学生だった頃は、スペアナの理論は机上で勉強しただけで、実際のリアルタイム解析装置は極めて高価だったこともあってか学生に触らせる余裕はなかった様で、実際に見たのは企業に就職してからのことであった。
スペクトラム解析というのは時間軸で信号を表示するのではなく、周波数軸で表示する方法。左の図が正弦波(サイン波)を時間軸で表したもの。人間は三次元に住んでいるから時間の経過に伴う変化は直感的に理解できるので、時間軸で表した方が信号の変化を理解し易い。
一方、正弦波を周波数軸で表すと右の図の様になる。一見、へんてこりんに見えるかもしれないが、信号、つまり事象を極めてシンプルに表現することができる。
これは信号に含まれる成分の周波数を横軸として右方向を高い周波数として表したものなのだが、実はこの方法の方だと、時間経過に伴って変化する信号が多数あって重畳している場合には、どういう成分がどれだけ含まれているのかが、目視的に判りやすくなるのだ。
オーディオ関係では、このグラフをイコライザとして表示させるようになったものなどが昔から商品化されているので、見たことある人も多いだろう。また、昔のカセットテープなどの包装パッケージにも、テープの周波数特性としてこのグラフが記載されていたものだった。
この表示は時間軸をフーリエ変換することによって描画できる。
近年、このフーリエ変換をコンピュータを用いて高速処理する方法、即ちサンプリングして繰り返し計算を行なう式に変換(これをFFT,Fast Fourier Transformという)、瞬時に周波数軸で表示させることが可能となった。

最近ではスマホでリアルタイム音声信号解析ができるアプリも登場している。小生等の様な年代から見れば、まるで夢の様な話だ。ひとえにコンピューティングパワーのなせる業といえる。
「時間軸を周波数軸に変換する」というと何やら仰々しいのだが、プロジェクト管理に応用してみると、大勢の人がコラボしてプロジェクトを進行させている時の進捗状態を分析するという場合、時間軸で見ると状態は時々刻々と変動する上、各人の動きが重なり合うために分析は難しいが、各人が置かれている位置を横軸としてその動きを見ると、進捗や効率は把握しやすくなる。
こういう解析が手軽にできるようになったことは、大変喜ばしいことだ。人のする仕事の評価にも、スペクトラムでの評価が有効だと思う。そうすればプロジェクトに埋もれてしまっている個人の努力が正しく評価できる。正しく評価できれば、本人に対する啓蒙となるだけでなく、次のプロジェクトで活かせる。

































