乃木坂46と言うグループは「ファンを選ぶグループ」だということに、最近気づいた。
ファンになるためには乃木坂46から提示された「ファンになるための条件」を許容する必要があるのだ。というと少し大袈裟なのだが、要はその条件を容認出来なければ乃木坂46を好きになれないといった方が適切かもしれない。
もちろん、彼女たち、他のアイドルグループと同様に日夜ファン獲得のために奔走しているとは思うのだが、ファンを増やすためには何でもするグループとは獲得手法がかなり違う様に思える。早い話、新規に対して特別に秋波を送る様な媚びはせず、「こんな私たちでよろしければよろしくお願い申し上げます。」という、ある意味古風な対応で接してくるグループなのである。
元々、そうった「媚びない」というコンセプトで誕生したと言うことではないはずだから「たまたま」そうなっただけなのだろうか。
そもそも、よく知られている様に乃木坂46発足のキャッチフレーズは「AKB48の公式ライバル」という謳い文句だった。何を以ってライバルと言うかという事を鑑みれば、ビジネスである以上、ファンの数というのはライバル同士として比較する上で大変重要な要素なはずだ。従ってその数を増やすと言うことは「いの一番に達成すべき大命題」だろう。 しかし乃木坂46にはAKB48の様な専用劇場という活動拠点やグッズショップなどはなく、ライバルと言わせながらも甚だしく大きなハンディキャップを負わされているということも事実だ。つまり、ライバルとして戦うための土俵は当初からAKB48とは全く異なっていることを理解する必要があるのだ。また、メディアや一般人への露出が圧倒的に少ない集団でもあり、そもそも乃木坂46は「何の、何が、どの様に」AKB48のライバルなのだろうと疑問を持たざるを得ないグループでもあるのだ。
要は、48と言う数字は2つにも3つにも4つにも、或いは8でも12でも24でも、10通りの数で割り切れるということで、同じ数での分割が容易に出来る数字であることに対し、46は1と46以外には2と23でしか割り切れないという「融通の利かない数字」なのだ。即ち、もしも構成人数が46人である場合には同人数でグループ分けするには23人で分けるしかないわけで、AKB48のようにチーム分けして戦わせるという構図が取り難いことを意味しているのだ。その辺りがオーディション寄せ集めグループの割には、メンバー同士の化学的結合感が強く見える理由かも知れない。
とにかくベールに包まれたナゾ多きグループなのである。ファンになるためには、まずはそれを条件として許容しなければならない。
この、謎めいたところが年齢の割りにクールだとか、お嬢様女子高校生集団の様だと言わせしめる理由のひとつかも知れない。とにかく彼女たちとこちら側との間には、良くは判らないが何か見えない壁があると感じさせるのだ。
これを理解し、許容することがファンになるための最も大きな条件である。この壁は同様のグループであるAKB48にはなかった。というより、あっても見せない様に振舞ったのがAKB48だった。
映画によると、乃木坂46主要メンバーの多くは、小中学生の頃に壮絶なイジメにあって不登校になるほどの激しいストレスに晒されたり、受験に失敗して自暴自棄になりかけたりといった様な、暗い歴史や挫折感にもがいていた経験があるという。であるならば、目立つことそのものがストレスであり、西野七瀬や白石麻衣の様に、アイドルと言う稼業に全く興味はなく、オーディションでは落選したかったという子がいてもおかしくなかった。つまり、アイドルになりたくてなったのではなく、周囲から背中を押されてアイドルになったという子がたくさんいるところが、他のアイドルグループと著しく異なる点なのだ。これをしっかりと理解する必要があり、そういう経緯が踏まえて現在アイドル稼業に従事しているという事情を許容できなければ、ファンになることができないのである。
たとえ乃木坂46が「ファンになってください」と懇願してきたとしても、それはいわゆる「 Business-like」としての行動だ。本心としては、プロモーション活動や公演活動を客観的に見据えている。即ち乃木坂46とは、現在の位置やビジョンを的確に分析する卓越した能力やバランス感覚を持つ持つ子がたくさんいるグループなのだ。そこまで理解して彼女たちを見ると、納得できることがたくさんあることに気づく。
では、何故その様な分析が可能なのか。
それは挫折を経験してきたからだろうと考える。 映画の中では語られていなかったが、彼女たちの中には、自ら死の淵まで歩み寄った子もいたのでないかと小生は想像する。彼女たちはそこから更正してきたのだ。
この子達こそ、文字通りの地獄から生還した子なのだ。
一方、いまだにアイドルという位置に対してこだわりや固執がない子もいる気がする。価値が見出せなければ頂点にいたとしても突然引退してしまってもおかしくない。それほど真面目な子が多いグループだということも知っておくべきだと思う。
今日び、イジメを苦にして、或いは辱めを受けて命を絶つ子供のニュースが絶たない。人によってその状況は様々であり、その苦しみを他人に理解してもらうことは出来ない、出来るはずがない。「私達がそうでした。でも、そこで一度冷静になって欲しい。悲しみは忘れ方があるんです。」
「命は美しい」と乃木坂46は歌う。メンバーの誰も、そういう言葉を詞にすることはしないだろう。随分後で知り合いになった秋元氏だからこそ書けるのだ。だから歌える。挫折から更正した西野、白石、橋本、生田をはじめ、多くの子が歌う。そして堀もだ。
イジメにあったって、 受験に失敗したって、センターを下ろされてたって、くじけるな。そこで行動を起こせば、今まで見えなかったことが見えてくるよ。経験者たる乃木坂46のメンバーたちは、そう歌っている。