例えば有機物を細菌などの微生物が分解する場合に、
人間に害があればそれを腐敗といい、益をもたらすのであれば発酵と称す。
この分解に伴って発生するガスへの評価も同様で、悪臭と言う言い方も人類基準で考えた場合の、ガスに対する勝手な判定だ。ただし、よくしたもので押しなべて人類にとって有害なガスは大体汚臭として判別される(趣味嗜好は別として)。これは人類が嫌う様に予め本能という、いわばプリインストールされた遺伝的な記憶としてストアされているからなのだろう。
植物には炭酸同化作用(いわゆる光合成)と呼吸作用という二つの方法で、それぞれ酸素と二酸化炭素を排出していることはよく知られている。そのことと、以前、下水に関してここで述べた好気性生物、即ち増殖に酸素を必要とする生物と、嫌気性生物という酸素を必要としない生物との関係を植物の活動に当てはめてみて、すこし面白いことに気付いた。
ボルネオで撮影したジャングル
我々人類もそうだが、押しなべて大半の動物たちは、殆どが好気性だ。逆に嫌気性である生物は、その殆どが細菌である。嫌気性細菌には酸素があるとまったく生育できない偏性嫌気性菌と、酸素の有無にかかわらず生育可能な通性嫌気性菌があるそうだが、嫌気性細菌によっては高等生物に対して極めて危険な毒素を産生するものや、有機物をメチルメフカプタン、アンモニア、硫化水素といった有毒気体へ分解するものなどがいる。
因みに水は滞留すると、次第に酸素がなくなって嫌気性の微生物が繁殖し(嫌気性状態)、その状態で有機物の分解が始まると、嫌気性微生物によって生成されるガス(メチルメフカプタン、アンモニア、硫化水素)が腐敗臭などのいわゆる汚臭、悪臭の元となる。
この様に、細菌類や動物は好気性と嫌気性に大別されるのだが、一方、植物はどうかというと、乱暴な言い方をすれば炭酸同化と呼吸という両面性を持つ。つまり好気性でもあり嫌気性でもあるのだ。
ここで、相反作用をもたらす直接の原因である昼と夜の時間差について考察する。
実際に計算してみる。
昼の時間=Σ|日の出時刻-日の入り時刻|
国立天文台、天文情報センターに、東京地方の1月1日から12月31日までの日の出日の入り時刻が掲載されているから、それを用いてみよう。
(2013年)
一年計: 525,600分
昼時間計: 266,955分(4449時間15分)
夜時間計: 258,645分(4310時間45分)
差: 8,310分(138時間30分)
昼の割合: 50.79%
因みに赤道上だと4437.664時間、つまり12時間07分であり、わずかだが昼の時間の方が長い。また北緯、南緯とも緯度が高まるほど昼の時間は長くなる。
この様な年間を通じた昼と夜の合計時間差は、日の出と日の入りに関する定義によって生じる。即ち、日の出・日の入は、地平線から太陽が出た時と消えた時としてと定義されているので、太陽が浮き沈みする際に地平線に対する直径分の距離移動(天動説的な表現だが)時間分だけ昼の方が長いことになる。
ただし、この計算結果としての差は日の出と日の入りに関する人間による定義に基づいているので、植物にとってその差は影響ないと思われるが、地平線近くに見える天体は、大気中を通過する光が屈折することによって地平線よりも浮き上がって見えるために昼が長くなると言う現象があるが、これは物理的に影響がありそうだ。
それと、もうひとつ考慮すべきは、多くの植物が晩秋から初春までは枯れていて両作用は停止しているということだ。ただし、アメリカ西海岸のカリフォルニア州サンフランシスコ以南で見られる様な夏の乾季には枯れていて冬の雨季だけ育つ様な種もあるから一概には言えないかも知れないが、概ねの植物は太陽光を浴びている時間が長いほど酸素を排出しながら育っていると見て差し支えないと思われる。
これらを考慮し、東京地方での12月1日から2月末までの期間を植物の活動停止期間として差引き、再計算すると、
(2013年)
一年計: 396,000分
昼時間計: 211,695分(3528時間15分)
夜時間計: 184,305分(3071時間45分)
差: 27,390分(456時間30分)
昼の割合: 53.46%
これらの数字は幾つかの地域でサンプリングした地点でのデータなので、均等化するためには積分して相加平均を求めればよいだろう。
植物がどの瞬間に呼吸作用から炭酸同化作用へと変化するのかは分からないが、明るければ炭酸同化作用を行うということは、明るい時間が長いほど酸素の排出量は大きなものとなる。
上の数字に示されている様に、一年を通じて、植物が活動している期間中は「酸素を排出している時間の方が二酸化炭素を排出している時間よりも長い」ことになる。なぜか?その方が植物にとってよいからだ。本能として、自らを死滅させる活動はしないだろう。
そこで、小生は、
植物は酸素を排出することによって、己れ自身の腐敗を加速するような嫌気性微生物の活動を抑制しているのではないか、と思うのだ。
酸素も二酸化炭素もほぼ同量を大気中に排出する。これが全く同量であれば安定するが、安定状態に進化は表れない。進化、或いは淘汰は変化に追随することよってなし得る。だから排出についてて、自分のためになるようにほんの少しだけバランスを崩すような仕掛けがある。
安定すべくバランスを取ろうとして常に動く。その動きは、経済のバランスにも似ている気がした。
