緑化計画 - そこに隠れている生態系破壊というリスク | プロムナード

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緑化計画-。

荒廃した土地に植樹を行ったり、草木を植える緑化計画。そうした政策はヒートアイランド現象の緩和、大気の浄化、更には地球温暖化防止という意味で優れた政策ではあるが、某国の様に採石の結果として岩がむき出しになったところに緑のペンキを塗るという緑化というのは問題外としても、この緑化計画、専門家の意見やアドバイスを十分に受けて着手しないと、却って生態系を崩し環境の悪化をもたらすこともあるのだそうだ。しかもこれらは不可逆的であるため、極めて厄介な状態をきたす。

そういえば、昨今、昆虫たちの棲息域の北進や南進が話題となっているが、地球温暖化の影響もさることながら、もっと端的で短時間に彼らに対して影響を及ぼすのが、生態系を無視した緑化政策なのだそうだ。

確かに、荒れた土地を緑化しようと試みる場合、一日や年間でみた気温の高低差、高温多湿や乾燥などに対する耐性の強い植物を植えることが定法だろう。しかし、新たに植樹や栽培される植物が、当初はその土地に生息していなかった種である場合もあろう。その結果、新たな植物が植樹栽培の結果としてそこに定住した場合、同時にその植物に付着していた昆虫の卵や幼虫が孵化し新たな地で繁殖していくという事は想像に難くない。

結果として、これまでは生息が確認されていなかった種類の昆虫が他の地から飛び火して来るがごとく、ある時期に忽然と大量発生するという事態をもたらすことだってあるわけだ。更にそれが災いし、従来から細々と生息していた「弱い種」の昆虫たちが、いつしか新たな侵入者達によって駆逐され絶滅していく。そんな事だって起こりうるのだ。

これは由々しき問題だろう。たかが虫達の問題と言うなかれ。

食物連鎖という、長い時間を経て精巧に組み立てられたプログラムの、たとえ一部であったとしてもそこに破綻が生じると、その影響によって取り返しのつかないことが生じる場合もあるのだ。

また、植物には植物同士での強弱があり、そこには種の存続をかけた縄張り争いが日夜展開されている。現在の姿が、拮抗するその争いの妥協点だとした場合、闇雲に人間が介在すると、草原や山の植生は別の方向に変異してしまう。その結果、昆虫たちの交代と共に、それこそ「ドミノ倒し」の如く他の野生生物達の衰退を生じせしめ、やがては人類に対しても大きな環境変化として影響を及ぼすことだってありうる。

緑化計画とは、ただ単に木や草を植えれば良いというものではない。生態系のメカニズムを良く理解した上で、正しく活動する必要があるということだ。


写真は草木のあるところ、どこでも見かけるベニシジミだ。ところがこの蝶、地球温暖化に伴って棲息域が狭まっているという。研究によると、2080年に平均気温が3.1℃上昇すると仮定した場合、欧州において2050年までに18%、更に2080年までに40%の棲息地縮小がシミュレーションされているそうだ。そういう地球規模的な変遷はともかく、身近なところとしても、植樹や栽培によって彼らの生活が脅かされるというのは愉快ではない。

現在、東京大学駒場博物館で開催されている特別展「日本の蝶」の中で詳しくその事が述べられている。緑化計画を進める上で、見識者たちは計画を正しく行う様、もっと声高に訴求すべきだと思う。