この夏、二日間ほど休暇を取り、長野県の白馬や八方を散策してきた。やはり晴天の山岳を眺めるのは気持ちいい。
小生、かつては厳冬期の冬山登山として、年末年始に岩手県の早池峰山で過ごしたことが何度かあったが、その後の登山としては富士山や米国のピナクルスぐらいなもので、登山というには程遠い軟弱登山しかしていないのだが、今回、こうやって山の頂をみると、なんかもう一度登山を始めようか、なんて思った。
ところで、この白馬で今回初めて見たものがあった。
それはベニヒカゲという高山蝶だ。
ベニヒカゲについては、以前から写真や現物の標本は見たことがあったが、実際に見たのは初めてだった。この蝶は県指定の天然記念物であり、長野県や群馬県では採集が禁止されているし、地域によっては絶滅危惧種となっている高山蝶であるし、発生地も限定的らしい。
とにかくこれまで一度も見たことがなかったし、今回だって少しも期待していなかったのだが、八方のゴンドラを降りたところでこの蝶に遭遇した時は、まさかと思った。
蝶に対しては人一倍思い入れのある小生なので、身近にいる蝶たちについては数十種類の標本も作製し、この10年ぐらいは殺生は中止して専ら写真撮影に勤しんでいるのだが、とにかくベニヒカゲとの遭遇は未体験だったから、ものすごく興奮した。
しかし、その後尾根の登山道を歩いていると、意外とたくさん飛んでいることが分かる。というより、小型の蝶が飛んでいるとすれば、みなこのベニヒカゲなのだ。これには正直驚いた。尤も、このベニヒカゲを見れるのは八方尾根のみで、近くにある栂池湿原や八方尾根を挟んだ反対側にある白馬五竜では一頭も見ることがなかった。つまり、先に書いたように棲息域は限定的なのかもしれない。
撮影するにあたっての問題は、この蝶、他のジャノメチョウの仲間と比べても、相当すばしっこいし、とにかく葉や岩の上で休むことをしないこと。だから、写真に収めることが難しいことだった。しかも止まるときは草の中に埋もれる様にして止まるし、なにしろ警戒心が強いのか、近づくとすぐに飛び立ってしまう。結局写真に収めることができたのは、十数頭の目撃のうち、たった一回だけ。それがこの写真だ。ご覧の様に、近場での撮影ではないので、かなりぼけている。っが、とにかく撮影できたことは大変うれしかった。
ところで、ベニヒカゲにはベニヒカゲとクモマベニヒカゲの二種類がいる。この二種は相当に類似しているので、捕えて比較しないと同定が難しい。従って、この写真だけではそのどちらなのかが分からないというのが、実のところなのだが、文献によると標高と地域によってある程度の棲み分けがされているようなので、現段階ではベニヒカゲとしておく。
小生的には、この「現段階での暫定的同定」というのがもどかしく、白黒つけようじゃないかというところが本音なのだが、何しろ相手は天然記念物なので捕獲はできないから、「たぶん」の域を出ることができないわけだ。
しかし、まぁ、いずれも高山にのみ生息する珍蝶であることに変わりはないし、とにかく初めて見たということで、満足ではある。
いずれこの地を訪れることがあったら、その時はじっくりと付き合ってみたい。「君は誰?」ってね。
