米国といっても、仕事柄、行く場所は殆ど決まっていて、いわゆるシリコンバレーなのだが、このシリコンバレー、その領域が広がったことから、最近ではこの地区の名称である「ベイエリア」という言い方が一般的になってきている。
ただし、ベイエリアというとサンフランシスコの北側地域も含むことになるのだが、IT関連の企業がひしめいているのは専らサンフランシスコ南側であって、サンフランシスコベイを挟んで西側のパロアルト、マウンテンビュー、サニーベール、クパチーノ、サンノゼ、ロスガトス、キャンベル当たり、ベイの東側のオークランド、フリーモント、そしてミルピタス当たりがIT企業の本拠地となっている。その辺りを総称してシリコンバレーと呼ぶ。
数えてみると、これまでのベイエリアへの出張回数は80回以上となっており、シリコンバレーに限れば、大体の土地勘はついた。
空港で借りるレンタカーには、一応「おまじない」としてGPS(米国ではカーナビとは言わず、GPSという)を付けているが、実際には目的地への誘導としては殆ど使うことはなく、もっぱら道路名称の確認用としてしか使っていない。というか、出張中一度も触らない事すらある。レンタル料が勿体ないといえば勿体ないのだが、「保険」として借りる様にはしている。
何故GPSに頼らずに済んでいるかというと、つまりGPSが普及する前は地図だけが頼りだったから、散々迷って目的地に着くことなどアタリマエだったので、いきおい、道を覚えることができたというのが正直なところでもある。
散々迷った挙句、ようやくホテルに戻り、辿って来た道を思い出しながらベッドの上に広げた地図へプロットし、食事処などを書き込んでは頭に入れる。道や店などを記憶できた背景には、長いことそんな出張暮らしをしていたことが奏功したのだろうと思う。
今はもうその地図を見る必要もなくなってしまったが、ボロボロになった地図は、小生にとってシリコンバレー出張を無事に過ごすための、文字通りのバイブルでもあった。
この紆余曲折というか試行錯誤というか、実はこれ、大変に重要なのだ。
最近の出張者は、GPSがあるから迷うことなく目的地に着くことが可能となったが、その功罪は道を覚えないことだ。一度しか行かないということであれば、それでもいいのかもしれないが、出張ともなれば幾度となく行く可能性があるはずだから、後々のことを考えて、道路名称の把握はもとより、右折左折する場所の景観を頭に入れて道をたどるという心構えは必要だろう。
ところがGPSに頼ると、道路の名前すらわからないまま目的地に着いてしまう。この道路名称や景観といった記憶は、現地の人達と食事をしているときなどのネタ話にもなるのだ。どこに住んでいるとか、どこの店が旨いとか、そんな他愛のない会話も、GPS頼りで行動しているようだとおぼつかないだろう。
また、GPSを使わなければ周りを見るようになるので観察力もつく。以前あった和食のレストランがインド料理になっているとか、そういう変化に気づく。景気の動向や人の流れ、或いは金の動きなども見えてくるというもの。それが生きた情報となる。
GPCに導かれ、そつなく無駄なく目的地に着くことが出来る今日。確かに便利な時代になったとは思う。しかし、米国ベイエリアは、道路も広いし、住人達の運転も紳士的だから、再度訪問する可能性があるならば、慣れない土地とはいえ、
GPSだけに頼らないことを勧めたい。
