1TW/h当たりの死亡率、つまり1テラワット(1兆キロワット)の発電に於いて何人が命を落としているか問う数字。
http://nextbigfuture.com/2011/03/deaths-per-twh-by-energy-source.html
Energy Source Death Rate (deaths per TWh)
Coal – world average 161 (26% of world energy, 50% of electricity)
Coal – China 278
Coal – USA 15
Oil 36 (36% of world energy)
Natural Gas 4 (21% of world energy)
Biofuel/Biomass 12
Peat 12
Solar (rooftop) 0.44 (less than 0.1% of world energy)
Wind 0.15 (less than 1% of world energy)
Hydro 0.10 (europe death rate, 2.2% of world energy)
Hydro - world including Banqiao) 1.4 (about 2500 TWh/yr and 171,000 Banqiao dead)
Nuclear 0.04 (5.9% of world energy)
一方、原子力の場合の死亡率が極めて低いことが注目に値する。これを以って原子力発電が安全という安易な説を唱えることは全く出来ないものの、冷静に考えると建設後に事故は起きないという大前提があれば、死亡事故が少なくてもおかしくはない。問題は危機管理が十分に行えているかどうかということに尽きるわけだが、ここでは太陽光発電について考えてみたい。
太陽光発電は、一部の追尾型太陽電池モジュールを除けば、基本的に稼動部がないため機械的な故障は発生しない。静かに発電をし続けるという発電機だ。建設について考えて見ると、火力や原子力が冷却を必要とすることから海岸近傍に建設することを余儀なくさせられるが故、くだんの震災で経験したように津波という危険と常に背中合わせ状態にあるし、水力発電は逆に山中に建設されるものであり、これまた地すべりなどの危険と常に向き合っている。その意味、太陽光発電の発電所は比較的穏やかなところが大半であり、自然災害による被害は少ないといってよいだろう。砂漠地帯に建設されることも多いが、それでも津波や洪水などの自然災害に晒される機会は相当に低い。
そういう優等生的存在であるはずの太陽光発電所の死亡率が決して低くないのは何故か?
その理由は、施工時の転落事故や感電事故にあるという。
考えてみれば、例えば住宅用の場合であれば屋根から転落する可能性があるし、商業用や産業用、更にメガソーラーの場合には大型の太陽電池モジュールが使用されるために、思わぬ事故が起きる可能性がある。
また、太陽電池は太陽光に晒すだけで発電を始めるわけだから他の発電機とは異なり、スイッチを入れるまで発電しない他のシステムとは根本的に異なる。この点は盲点だ。特に商用・産業用グレードやメガソーラーの場合には、パワーコンディショナーへの接続を行う上で、数枚の太陽電池モジュールを直列につなぎ、600Vに昇圧してパワーコンディショナーへとつながれる。ヨーロッパの場合だと、900Vというシステムも存在する。系統連系については、全体のシステムが2MW以下であれば6600V、2M以上であれば特別高圧に昇圧して系統連系することになるが、その場合には送電鉄塔の建設が必要だ。この当たりは他の発電方法でも同様であるが、問題は系統連系云々という以前に、太陽電池パネルを直列につないだ時点で既に高電圧を発生しているから、施工最中にインストーラが感電する可能性が高いということである。この危険性は他の発電方法では見られない。
昨今、再生可能エネルギーへの期待度が高まっている。もちろん、この種のエネルギーは不安定であるし、なにせエネルギーの変換効率が驚くほど低いので再生不可能エネルギー(こういう言葉はないが)に比べて採算性が悪すぎるため、再生可能エネルギーだけで総てを賄うようになるには発電効率を高める技術と消費電力の縮小という両面からの技術アプローチが必要であるが、恐らく長い時間を必要とするだろう。
一方、地球環境を鑑みれば再生可能エネルギーへの転換は今後もどんどん進めるべきなわけだが、この死亡率というのはいただけない。今後、変換効率の向上もさることながら、施工の簡便性や安全設計、特に低電圧での運用範囲を広め、系統への連系までの経路に於いては低電圧で運用できるというシステムの技術開発が必要であると思う。