2019年 1月。
エルサレムから北上し、ガリラヤ湖沿岸の教会を巡ったあとは、キリストの育った町ナザレに向かいます。
日が暮れるのは16時半くらい。遅いランチをゆっくり楽しんだあとなので、そろそろ夕暮れが迫って来てしまいました。
ガリラヤ湖からは途中の小さな町カナに立ち寄ります。
この町の結婚式に出席したキリストが水をワインに変える奇蹟を行ったという新約聖書の記述に基づき、修道院があるのです。
残念ながら17時を過ぎてしまっており、もう閉まっていたので門の隙間から写真だけ…
この日の宿泊はナザレの丘の上。
当日になって取った宿だったのですが、駐車場が少し離れていたけれどホテル自体はとても綺麗だった。翌日歩いてみて気づきますが、立地も最高。
オーナーさんは離れたところにいて、宿のお世話をしてくれる女性が1人いて面倒を見てくれるのですが、片言の英語ながら感じが良くて気持ちよく過ごせました。
翌朝の朝食。朝食をとるお部屋も可愛いし、ごはんも美味しかった!
さてと!午前中は、ナザレの町を歩いてみようと思います。
ホテルを出てすぐ近くには、復活後にキリストが弟子と食事をしたとされる場所 「メンザ・クリスティ Menza Christi」 が。
地図で見る限り、そのままスークに出れるようなのでどんどん坂を下りて行きます。すぐに、生活感のある地区にでました。アラブ人の暮らす地域です。
モロッコやヨルダンはもちろん、南スペインやシチリア、マルタなどでも歩いた、汚れたスタッコ(漆喰)のアラブ風の町なみ。
うす暗い道の向こうや階段の上にアラブ人の男性が(特に何人か)たむろしていたりすると、なんとなくこちらは最初すこし身構えてしまう(良く知らない場所で男性が固まっていると、やはり怖い感じがしてしまう)のだけど、彼らはこちらに気づくと特に笑顔になるわけでもなく、当たり前に 「ハロー」 って声をかけてくれる。
子供たちはもっとわかりやすく 「ハロー!ハロー!」 って、笑顔でめいっぱい手を振ってくれる。よその人に対する、素朴な、田舎っぽい、だけど暖かいおもてなし。
…ヨルダンでとても良くしてもらって、アラブに対する見方が変わっていたこと。その後、(ここでは書かなかったけれども)エルサレムで何度か嫌な思いをして、イスラエルに少し疲れていたこと。
そんなこともあって、ここナザレのアラブ地区で少しほっとしたのは確かです。
お店が密集したスークを、ぐるぐると歩いてみます。雑多でカラフル。
楽器店で見つけたアラブの楽器たち。見慣れない美しい楽器が並んでいました。
ウードもいろんな形があるんだな。ヨルダンで聴いた音色がよみがえります。
広場の近くでみつけたのは、かつて聖母マリアが使っていたであろう 「マリアの井戸」。残念ながら、いまは水は出ないそう。
そして… ほかの場所歩いていて気付いたのですが、ナザレのマンホールにはこの 「マリアの井戸」 が描かれていました…!
実はこのことは、この国の様子を知ることにおいて重要なことかも。
イスラエルにありながら、この町は、キリスト教の遺跡を町のシンボルとしているということなんです!
そのことから、この街はユダヤよりアラブのほうが勢力が強いんだなということがわかります。実際、ほかの場所にくらべてアラブ地区が明らかに大きく、アラブの方々が多かった。
そして、帰国して調べて知るのですが、ナザレは、イスラエル内では最も多くのアラブ人が住む町なのだそうです。
…そして、思い出すのです。前の夜に食事をともにしたユダヤ人夫婦の旦那さんが 「なんでナザレなんかに行くんだ?あんな町に行ったって何もない。ほかに行くべき場所がたくさんあるだろう?」 と、責めるような、うんざりしたような強い口調で言っていたこと。
教会などを見て回って、再びアラブ街を通ってホテルに戻ります。
ナザレで印象的だったのは、猫が多かったこと。
道案内をするように連れだって前を歩いて行った三兄弟(三姉妹かも?)。岩合光昭さんに教えてあげたくなる街だな。
ぷらぷらと猫のあとを追うように、ホテルに戻ってきました。
こんな感じだったんだなぁ。昨夜は暗くなってから到着したので外観の様子などよくわかんなかったけれど、綺麗なホテル。
そして、丘の上に建つこのホテルの屋上からは町が一望できました。
ナザレ旧市街、古いヨーロッパとアラブが混ざったような感じで、すごく綺麗な可愛い町。
ここではわざわざ紹介しなかったけれど、少し車で町の外に出ると近代的な大きなショッピングモールがいくつも建っていて、実は、ナザレはイスラエル北部では一番大きな町。
イスラエルにおいて北部最大の町がアラブの町というのは、やはりここが 「キリストの育った町」 であるからなんでしょうね。この町のマジョリティはキリスト教系アラブ人だそうなので。
なんなら、キリストの時代から(もっというとそれ以前から)代々ここに住んでいる家族だっているかもしれない。
キリスト教の遺跡や聖地があちこちに溢れていて、だけど今はユダヤの国。
イスラエルという国は本当に複雑な国だなと、ここでまた改めて思いました。