バンクシーのアートを巡るパレスチナ | * たびばな * 旅好き女子のあちこち歩き

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主に鉄道でヨーロッパ34カ国、世界57か国をぐるぐると駆け回り、とにかく歩き回った、充実した旅の記録です。いろんな人に出会ったり、いろんなものを食べたり、旅のワクワクを少しでもおすそ分けできれば嬉しいです。持ち物やルート、予算についても情報いっぱい。

2019年 1月。

 

今日は朝からベツレヘム内に描かれた バンクシー のアートを巡ります。

 

バンクシーは正体を隠して活躍しているアーティスト。

社会風刺的なメッセージで有名で、東京でも最近バンクシーらしきグラフィティが見つかったほか、昨年はオークションで落札された絵がシュレッダーにかかる仕掛けが話題になりました。

 

ベツレヘムにはバンクシーが描いたアートが 4つあると言われていて(行ってみたらもっとあったのですが)、それを巡るツアーもベツレヘム観光の目玉のひとつになっているんです。

 

ホテルの外にいたタクシーと交渉して、ベツレヘム内にあるアートを回ってからチェックポイントまで連れて行ってもらうことにしました。

 

この、ライフジャケットを着た白い鳩の絵が本日の 1枚目。

 

 

 

2枚目は金のハートを天使の絵。

これが、バンクシーのベツレヘム内で最初のアートなんだそう。

 

 

 


3枚目のアートは、とても有名な 「花束を投げる少年」。

巨大な壁面に描かれた、これまでで一番大きな絵です。

今回、一番見たかったのがこれなのですが、驚いたのは、その壁。

 

町はずれの、放置されたガソリンスタンドの裏側にありました。

 

こんな場所、知らなければまずわからない。

 

 

ほかの絵は町中に点在しているのですが、この絵は中心部からすこし離れているので 「タクシーで巡る」 ということになります。おそらく、バンクシーはそれが経済効果を生むことをわかって、わざわざ遠くに大型の作品を残したんだと思う。


 

今回の運転手さんは、お父さん、お兄さんもタクシーの運転手だそうなので「じゃあファミリービジネスだね」 って言ったら、苦笑したあと 「パレスチナには仕事がないから…」 ってポツンと言っていた。

 

ベツレヘムにバスで着くと、終点にはたくさんのタクシーが待っていて 「バンクシーを巡ってからホテルまで乗せていくよ」 って寄ってくる。なかにはぼったくりの値段も多いからあまり良い気持ちはしていなかったけれど、バンクシーが来なかったら存在しなかった仕事が生まれているわけで、やっぱりすごいことだなと思います。


 

ちなみに、最後の 1枚の描かれた壁は、たぶんあとから建てたであろう雑貨店が目の前にあって、壁の部分をアクリル板で保護しています。なので、そのお店に入らないとみられなくなっているのですが、残念ながらこの日はお休みでした。

 

 

タクシーから見えた白い町は、イスラエルかと思ったら、「ユダヤ人の入植地」 だそうです。

 

 

イスラエルはパレスチナ自治区の中にユダヤ人の入植を奨励しており、パレスチナ側の土地はどんどん浸食されています。イスラエル建国時から 70年、自治区はじわじわと縮小しているのです。

 

 

タクシーは最後にチェックポイント(検問所。イスラエルとパレスチナの国境のようなもの)に到着。ここから、イスラエル側に入るにはパスポートが必要になります。

 

ここがもう、なんだか・・・・すごかったです。ものものしくて。

 


あえてこういう作りにしているのでしょうね。すごく殺風景で、牢獄かなにかのような雰囲気なの。

 

イスラエル側に出られる許可を持っているパレスチナの人は多くないので、ここを通る人の多くは特別な許可を持つイスラエル人か、観光客。数もそれほど多くありません。


 

エントランスまでのアプローチも、なんだか怖い。

 

 

 

銃を持ったイスラエル兵もうろうろしているし、まあよほどじゃない限りは不当に撃たれることも無いと思うけどやっぱり緊張感はある。


 

中ではさすがに写真は取れなかったけれど、内部もがらーんとしていてそこに係員の人がいて、検問所を通ってイスラエル側に入ります。

 


 

 

こうして、イスラエル側に戻ってきました。

 


今はパレスチナの人たちはイスラエル側には簡単には入れません。イスラエルの言い分は、「自爆テロなどを防ぐためにイスラエルを守るための防御壁」。だけど、壁はパレスチナ側の領土の中に建っているし、パレスチナの人たちを閉じ込める壁となっています。

 

狭い自治区からイスラエル側に出られないパレスチナの人たち。イスラエル側にある空港などは使用できません。彼らが国外に出るにはどうすればいいのでしょう。

 

…ここで、ヨルダンのキング・フセイン橋の国境が出てくるのです。

 

あの国境は 「ヨルダン政府から正式に認められていない」 国境でした。ヨルダンから出国したときも、パスポートにスタンプさえ押されなかった。

 

そして、あの国境が繋がっているのは …そう、パレスチナ自治区です。

 

あそこはパレスチナの人たちが外とつながるために同じアラブ国であるヨルダンがパレスチナのために開けている秘密の抜け穴のようなもの(秘密といっても、公然の秘密なのですが)。パレスチナの人はヨルダンを経由して他国に出ていくこともできます。

 

南に位置する「ガザ地区」も同じように壁で囲まれていますが、南端で接しているエジプトが彼らにゲートをひらいています。

 

こうして、同じアラブの国たちが団結してパレスチナを支持し、イスラエルと対抗することによって、パレスチナ問題はパレスチナだけのものではなくなっているのです。



 

町を出る前にベツレヘムのATMでお金をおろしたのですが、あえて 「パレスチナ銀行」 を利用してみました。

 

 


 

パレスチナ自治区内にしかないのではないかというのもあり、主に 「珍しいから」 利用したのですが、あとで調べてみたらやはりパレスチナ自治区内にしかなかったです。


 

さて、今日はこれから、エルサレムでレンタカーを借りてイスラエル北部に向かいます。