2011年 4月 30日。 シベリア鉄道も今日で 4日目。 朝 8時に、クラスノヤルスクに到着して、目が覚めました。
ここから時差が 1時間繰り上がるので、時計の針を 1時間繰り上げます。 広大なロシアでは地域によって時差があるので、注意しながら自分の時計の時間を合わせていく必要があります。しかも、ロシアの列車の運行 (時刻表) はすべてモスクワ時間で行われていて、実際のローカル時間とは時差があるのでややこしい。ときどき時間間違ってました。 比較的大きな工業都市、クラスノヤルスク。外の風景は (窓が汚れているので画像が汚くて申し訳ないですが)、昨日とはうって変って、都市っぽい。
今日の朝食は、ワンタン入りたまごスープと、五穀ビスケット。
さて、朝は毎日、シーツや毛布を畳んだり、着替えたり顔を洗ったりと一日の準備をします。 顔を洗うのは、トイレのシンク。歯磨きも、そこでします。
鉄道内ではシャワーが浴びれないので、毎日体を拭くのが日課。(別にそれほど汗をかいたりしないんだけど、どうしても気になるので、朝夕なんどか拭いたり)。サモワールのお湯や、たくさんの除菌系シート類に活躍してもらいました。
シーツは 6日間一度も取り替えられないし、洗うこともできないので、毎日大量のリセッシュをスプレーしてから畳んでいました。これだけでだいぶ違う。
今回も、布団やソファ、服に靴にと大活躍でした。
(Tシャツまでは毎日替えられるけど、上に羽織るものは洗えないし気になるので)。 朝食後は、みっちりストレッチやヨガをやってから、読みかけの本を開いたり、 カメラを持って廊下で窓の外の写真を撮ったり。
念のためその付近の前後数十分間、ずっとカメラを持って待ち構えていたのですが、見つけることはできませんでした。残念。 それにしても、中間地点を越えたということは、北京からモスクワの、半分を過ぎてしまったということ。 日程的には折り返し地点は昨日だったのですが、距離的には今日、やっと半分を過ぎました。
実際、このあたりから、列車の揺れがやや激しくなっていたと思います。
さて、ランチは、ふたたび食堂車へ。 時間の問題なのかな、わたしのほかには ひと組しかいませんでした。
まずはビールを頼んで、メニューをゆっくり眺めて、迷う。
迷ったけれど、昨日と同じサラダと、メインにはチキンをオーダーしました。
ちなみに、ここのレストラン (食堂車) 、結構味がよかったです。 ロシアでは、どんなシェフが乗っているかによって食堂車の当たり外れが大きいらしいのですが、私の場合はけっこうあたりだったのでは? 食事をしながら外を眺めれば、しらかばの森が広がっています。
空が青くて、すごく気持ちがいいです。ますます、食事が美味しい。 赤い大地や、大雪のシベリア、そして青空と森の風景。 景色が変化に富むのは北京=モスクワ路線の、この季節ならではです。 さて、ランチも済んだ 14時前に、「マリインスク」 駅に到着。 ここでの停車は 25分。長く停車をするということは、車両交換があるということ! 行程が長いシベリア鉄道では、中国、モンゴルは非電化区間 (ディーゼル車を使用) だし、ロシアでも地域によって電気方式が切り替わるため、あわせて機関車を交換する必要があるんです。 北京を出発してからすでに何度か行われていますが、今回は明るいうちの交換で、しかも天気も良かったので、ホームのはじまで走って行って、その一部始終をずーっと眺めてみました。 まずは、いままで牽引してくれていた赤い機関車が、緑色の客車から切り離されます。
赤い機関車がずーっと去っていったあと… …待機していた次の機関車 (今回は緑色) がゆっくりと近付いてきて、客車と接続!
北京からモスクワに行く間に、赤や水色などいろんな機関車にけん引されるのですが、緑だと統一感がありますね。 この子は顔もなかなかよろしい。勇ましい感じで、ちゃめっ気もあって。 そうそう、この、車体の横についていたロシア鉄道のマークのデザインがすごく好みだったので、何かグッズが欲しくて。
モスクワで探そうと思っていたのですが、そういえば、すっかり忘れて帰国しちゃった。 無事機関車を交換し、再び動き出した列車は、19時前、「ノヴォシビルスク」 に到着。 ここ 「ノヴォ (新しい) シビルスク (シベリアの町)」 は西シベリアの首都、さすがに駅も大きい。
さあ、わたしには、こでで果たさなくてはいけない、大きな約束があります。 それは、ナスチャさんに預かった毛布を無事に渡すこと。 列車が駅についてすぐに、毛布の入ったバッグと、ナスチャさんとお姉さん夫婦の名前を書いたノートを手に持って、ホームに降り立ちました。 無事に会えるのかどうか、ちょっと心配。 カザフスタンのおっちゃんたちと、車掌さんに囲まれて立っていると、向こうから、メモを片手にきょろきょろしながら歩いてくる小柄なロシア人のおじさんが。もしかして! 「あの、もしかして、セルゲイさんですか?」 「あなたがミカ?」 「わあ、ちゃんと会えた!よかった!!」 「ありがとう、ありがとう!」 ちゃんと役目を果たせて、嬉しくて笑顔で毛布を手渡すと、セルゲイさんは、カバンの中から大きな板チョコを 2枚取り出して、お礼にと持たせてくれました。 ここでもらった、こってりした感じの包み紙の、ロシアの大判の板チョコ。 なんだかすごく嬉しかったんですよね。
そして、それを見届けてから、カザフのおじさんたちが、「じゃあ、ミカ、僕たちもここでお別れだ」 と寂しそうな顔をして握手の手を伸ばしてきました。
そう、彼らはこの駅で、カザフスタンに南下する路線に乗り換えるのです。 元気でね、気をつけてね、と握手して。 別れられなくて、また、元気でね、って言って。 数日間一緒にいて、ときどき言葉を交わしたりしていただけの間柄で、一緒に笑ったり、片言の英語と片言のロシア語で一生懸命話をしたりしただけなのに。 息子さんが日本にいるんだって、自慢げに言ってたこと。 すごく寒い駅で裸で走り回る子供を見て、3人で目を丸くして笑ったこと。 カザフスタンは最高だぞ!いつか来るといい、って一生懸命言ってくれたこと。 「サマルカンド、行ってみたいんだ」 っていうわたしに、「それはウズベキスタンだ」 とガッカリしていたこと。 それらは、このとき、この場所にいなかったら、出会わなかった人との、しなかった会話。 20分の停車のあと、車掌さんにせかされて、電車に戻る。 列車に手をふるおっちゃんたちをホームにおいて、動き出した列車は、オビ川を渡ります。
たとえば。毛布を渡したことで、一瞬だけ、見ず知らずのロシア人家族をつなぐ輪になれたこと。
わたしの旅が、毛布を通して、あの家族の一部としてずっと残ること。 あの場所にいなかったら出会わなかった人と、ほんの一瞬でも心が通じるときがあって、別れが寂しかったこと。 何かの偶然がめぐりあっていなければ、起らなかったいろんな出来事。
いままでもいろんな旅で繰り返されてきた、ほんの小さな出会いと別れ。 あたりまえだけど、きっとあたりまえじゃなくて、これらはたぶん、小さな小さな奇跡だと思う。
食堂車でランチ 505 Rub (ロシア食堂車)
※ 1 ルーブル = 約 3 円
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