シベリア鉄道の旅 - 雪のシベリア、バイカル湖 | * たびばな * 旅好き女子のあちこち歩き

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主に鉄道でヨーロッパ34カ国、世界57か国をぐるぐると駆け回り、とにかく歩き回った、充実した旅の記録です。いろんな人に出会ったり、いろんなものを食べたり、旅のワクワクを少しでもおすそ分けできれば嬉しいです。持ち物やルート、予算についても情報いっぱい。

2011年 4月 29日。
 

夜中、寒くて目が覚めました。暗い中、手さぐりで毛布を 2枚足して、もう一度眠りについて、そして、明け方。

 

列車がとまるブレーキ音と、ガタン という衝撃でふと目が覚めました。

目を開くと、目の前の窓の外が・・・ 真っ白! 吹雪です。

 

 

 

 シベリアは冬全開。昨日のモンゴルまでは赤い大地が広がるばかりだったのに、ロシアに入って最初の視界がこれだなんて、やっぱり面白いです、この鉄道。いろんなものを越えていく。

とはいえ、面白がってる余裕がないくらい寒いので、ハーフパンツの足元にレッグウォーマーをプラス。空腹だと寒いので、急いで朝ご飯に。

 

 

 

今日の朝ご飯は、ワンタンスープとビスケットです。

 

 

むかしスウェーデンで北極圏に向かう寝台列車に乗っていた時も、目が覚めたらあたりが雪で真っ白で、自分がいま北極圏に向かっているんだってことに、改めてはっとさせられたんだっけ。

 

 

「ウラン・ウデ」 の駅を過ぎ、窓の外にはバイカル湖が見えてきましたが、湖は完全に凍っています。打ち寄せる波が、湖面にしわを寄せるような、そのままの形で固まってる。

 

みんな、部屋から廊下に出てきて、ただただぼーっと、真っ白い景色を眺めています。

 

Tシャツで。

 

そう。極寒のシベリアを行くこの鉄道、すごく寒そうだけど、実は案外、暖かいんです。

 

各車両には石炭のストーブが付いていて、車掌さんが石炭をくべていつも暖かくしてくれているので、車内で寒いと感じたのは、北京で乗車してしばらくの間 (まだ電車が温まってなかったらしい) と、吹雪の中を走っていたこの日の朝方くらい。

 

 


黒いすすが出るし、石炭をくべるのも大変そうな、石炭ストーブ。

すべて電化されている鉄道でわざわざ石炭ストーブを使うのには、理由があります。

 

それは、シベリアがとても、とても、寒いから。

 

もし電気で車体を温めていたとして、事故で立ち往生して電力が切れてしまったら、車内がこの極寒のシベリアと同じ気温になってしまう。そんなことになっては命にかかわるので、電気が切れても車内を温め続けられるように、石炭を使っているんだそうです。

ただ古めかしいだけじゃないんですね。


そして。

この石炭ストーブの真裏にあるのが、「サモワール」 と呼ばれる、この給湯器!

これなしには、シベリア鉄道の旅を語れません。

 

 


各車両の廊下の突き当たり、車掌室の前あたりにあって、シベリア鉄道の乗客の強い味方であり、非常に便利で心強い憩いのマシン、それが 「サモワール」。

 


「サモワール」 というのはもともとロシアでお茶を飲むのに使っていた、お湯を沸かせる金属製のポットのようなもの。シベリア鉄道内でも、お茶を入れたり、スープを作ったり、大活躍です。

 


 

旅のあいだ、何度この場所に足を運び、コーヒーや紅茶から立ち上る湯気に、なんどほっとさせられたことか。

 

 

ただの給湯器なんだけど、その古めかしい佇まいのせいかな、それとも、ひとりで窓を眺めながら飲むお茶が美味しかったからかな。

 

なんだかすごく思い出に残りました。サモワール。

 


標高がやや下がってきたのか、バイカル湖の氷がところどころ解け始めました。

 


世界最大の湖、世界遺産のバイカル湖。

湖の氷がすべて解けて、シベリアに春が来るのは 6月に入ってからだそうです。

 

 

バイカル湖にも飽きて、部屋で本を読みながらお茶を飲んでいたわたしのところに、隣のコンパートメントにいるロシア人母子のお母さんがやってきました。セルジュ君のお母さんです。

お願いがあるといいます。

 

ウランバートルで働いているお父さんに会った帰りで、イルクーツクの自宅に帰るところなのだけれど、その先のノヴォシビルスクの町にお姉さん夫婦が住んでいる。

モンゴルで彼らに買ったお土産を、わたしたちの替わりに届けてほしい、というのがそのお願い。

 

写真は、彼らのお部屋に遊びに行った時のもの。

お母さんのナスチャさんと、セルジュくんの妹、モナちゃん。

 

 

 


お礼に、モンゴルで買った絵をくれました。

 

 

ナスチャさんも気に行って買った絵だというので申し訳なかったのですが、すごく素敵な絵だし、わたしも何か 「モノ」 として思い出が残るのが嬉しかったので、遠慮せず頂くことにしました。

 

「変なものを運ばせようとしているわけじゃないの。心配なら、パスポートや身分証明書を見せてもいいわ」 と、いろんな身分証明書を持ってきていたナスチャさん。彼女は学校で歴史の先生です。

 

お土産は、モンゴルカシミアの暖かい毛布。

 

その後、お互いの連絡先を交換しよう、ということになったので、住所とメールアドレスを渡したら、「ミカ。ロシアで他人に住所を教えるなんてキチガイ沙汰よ。絶対にしてはダメ」 と言われました。「いい?わたしはいい人間だと思う。あなたに悪いことをしようとは考えていない。でも、ロシアには悪い人間がたくさんいるの。簡単に人を信じてはだめよ」 と念を押されたり。

 

でも、ナスチャさんも 「今度は夏にイルクーツクに遊びに来て」 と住所を教えてくれたので、帰国したら日本からポストカードを出そうと思います。



さて、今日のお昼は、じゃがいものポタージュスープと、ファイバーチャージ・ビスケット。


 

電車の中で 6日間も運動をしないわけなので、意識してファイバー系の食べ物を持ってきました。

 


プラスティックのマグカップと、スプーン/フォークになる 「スポーク」 は、北欧生まれの登山用品。

 


そうこうしている間も、列車はえんえんと、バイカル湖沿岸を迂回して走り続けます。


朝 8時ごろ到着した 「ウラン・ウデ」 から、ずーっとバイカル湖の西岸に沿って走っていますが、「イルクーツク」 からはバイカル湖とお別れ。

 

 

「イルクーツク」 のひとつ手前、バイカル湖の西端 「スリュジャンカ」 の駅のホームでは、地元の物売りがやってきて、バイカル湖名物 オームリ という魚の燻製を売りにきます。

 

残念ながら、短い停車時間 (2分!) の間に物売りを見つけることができませんでした。


そして午後15.40ごろ、母子の住むイルクーツク着。雪です。

真っ白なホームで、母子とお別れをしました。

 

 


イルクーツクはバイカル湖を観光する基点となる町。夏は賑わうんでしょうね。

ここでバックパッカーの男の子たちも下車していきました。

 

また、ちょっとだけ触れあった誰かとお別れ。

すこし寂しい気持ちで、部屋で日記をつけたり、コーヒーを飲んで、読みかけの本を読んだり。

 

なんだか、静かです。

 


そろそろ 18.30。 列車内ではなんとなく毎日 18.00 から 19.00 くらいの時間に夕食を食べていたので (普段はそんな早くに食事をしないのですが、明るくて景色が見えるうちに食事したかったんですよね)、そろそろ夕ご飯の時間。


はじめてのロシアの食堂車に出かけてきました。

モンゴルの食堂車に比べたらシンプルな内装だけど、こぎれいな感じ。

 

 

食券で食事ができた中国の食堂車は、中国人やモンゴル人でごった返していましたが、モンゴルに入ってからは、欧米人観光客しか来なくなり、毎日同じ人と顔を合わせるように。

 


ロシア人のウェイターさんはぶっきらぼうで、最初はなんだか怖い印象だったのですが、案外笑顔になるとやさしそうな人で、テキパキとよく動く人でした。

 

 

 

ロシアのビール、サラダと、ビーフステーキを。

 

このなんでもないサラダがすごく美味しかったんですよね。トマト、きゅうり、たまねぎに、オリーブオイルのドレッシングとディル (ロシアのハーブで、何にでもこれがかかっている) だけなんだけど。

 

ここで使えたのは、ロシア ルーブル、US ドル、ユーロ だけ。羽田で両替してきたルーブルがここで役に立ちました。

 

 

食事が終った頃、「ジマー」 駅に到着。

雪が残るなか、日が落ちてきて寒い。

 

 


写真のくろっぽい塔、何なのかわからないのですが、こういう古い塔がどこの駅にもかならずあったんですよね。給水塔なのか、石炭をためておく場所なのか。



で、ホームから 「寒いー」 と言いながら戻ってきて、中国人の車掌さんと 「サムイ、サムイ」 「ラウ、ラウ (中国語で「寒い」)」 と言い合っていたら、突然、カザフスタンのおじさんが 「トモダチが来たぞ」 と。

 

 

見てみると、でっかいカメラを持った日本人の女の子がこちらに向かってきているのでした。「日本語が聞こえたので、びっくりして、走ってきました」 って。

 

聞いたら、北京からずっと、一等の 「高包」 の車両に乗ってきているんですって。

ここまで合わなかったのが不思議。今度、一等車を見学させてもらうことに。

 

誰かと別れて、また誰かと知り合って。シベリア鉄道は、本当に小さなコミュニティです。

刹那的な出会いですが、それが面白い。

 

 

夜は、本を片手に、部屋で落ちていく夕陽を見送る。

なんだか、燃えているみたい。

 

 

 


シベリア鉄道 3日目の夜が更けていきます。

 



 

食堂車でランチ 655 Rub (ロシア食堂車)

 

※ 1 ルーブル = 約 3 円

 

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