(163)私の古墳の楽しみ方(その5・副葬品と博物館ランキング)
石室などから出土した副葬品などは、古墳の現地で見ることはほとんどできない。
現地での発掘報告会などに限られる。
発掘や過去の盗掘によって見出された遺物は公的な博物館や資料館での保管や展示あるいは私的な所有に限られてしまう。
自治体によっては、墳丘や葺石、石室などを復元し、あるいは石室の副葬品までも複製して当時の配置を再現して、私たちによりリアルに在りし日の古墳の姿を伝えようと努力されていることは、とてもありがたいことで、担当課・職員の方々に感謝申し上げたいと思う。
出土遺物は、埴輪を除くと
武器・武具(大刀・刀子・甲冑・靫・鞆など)
私の最大のお気に入りが、熊本の江田船山古墳から出土した銀象嵌名鉄刀(国宝)
ワカタケル大王名が彫られているが、魚や鵜の模様が素晴らしく気に入っている。
装身具(帯金具・王冠など)
飾り物(勾玉・管玉・首飾り・耳環・腕輪)
馬具(鐙・杏葉・飾り金具・鞍・辻金具・轡)
特殊なもの・意味の分からないもの
土器(須恵器・土師器・弥生土器)
骨・歯などが主である。
古墳を訪れたあと、すぐ近くに副葬品などを展示している博物館や資料館に行ければ最高なのだけれど、出土遺物が貴重なものであればあるほど、現地から離れた場所にある傾向が強いから、時間的に行きそびれてしまうことが多いし、墳丘を見れた感動から博物館まで精神的な高揚を維持できない時もあったりする。
また逆に、博物館や資料館を目当てに出向いたときなどは、どこの古墳から出土!というより遺物の意味や形・文様・時代考察などを知ることができて、これはこれでまた楽しいものだ。
これまで、見る機会があった博物館や資料館のなかで、こと古墳関連に限っての展示の内容や方法、特に墳丘や埴輪の再現、武器・武具の復元と解説、古墳との隣接度合などから5か所、自分なりに感動したところをランキングしたいと思う。
第一位 今城塚古代歴史館
(大阪府高槻市)
継体天皇の本当の墓と目されている「今城塚古墳」のすぐ横にあり、墳丘や埴輪、時代背景などのきわめて詳細かつ丁寧な説明があり、展示物の配置も合理的で、復元してほしいと望む物が見事に復元もされていて、すばらしい!
グッズの販売があるのもうれしい。バス停も駐車場もある。
第二位 かみつけの里博物館
(群馬県高崎市)
博物館の周辺には国の史跡である保渡田古墳群の八幡塚古墳や二子山古墳が復元整備され、墳丘に登ることができるほか、石室も公開されている。
館内には5世紀に2度の大噴火を起こした榛名山二ツ岳の火山灰や軽石・火砕流によって埋没した当時の豪族の館を再現した模型のほか、八幡塚古墳の築造過程を精巧な模型で紹介している。古墳から出土した人物や動物埴輪の展示もすばらしい。
広い駐車場と子供も楽しめる古墳公園となっている。
第三位 岩戸山歴史文化交流館「いわいの郷」
(福岡県八女市)
筑紫君磐井の墓である岩戸山古墳に隣接している市立の館。
九州の豪族「筑紫君」一族の古墳時代文や朝鮮半島との関係、磐井の乱と継体天皇との対比など資料展示が見どころ。また初代の筑紫君が眠る石人山古墳や岩戸山古墳の特徴である貴重な石人・石馬の実物も見ることができる。九州の古代史を考えるならここ!
駐車場や売店・研修施設など充実している。
第四位 芝山古墳・はにわ博物館
(千葉県山武郡芝山町)
町立でありながら、芝山古墳群の詳細な紹介と出土した様々な特色ある埴輪の展示の充実ぶりには目を見張るものがある。また人物埴輪から実際の当時の王と従者の姿を再現した実物大の人形たちはリアルで面白い。最近リニューアルし殿塚・姫塚古墳から出土した西洋人的な非常に珍しい埴輪などが常設展示されている。
夏休み時には勾玉づくり教室なども開かれている。駐車場もある
第五位 伊都国歴史博物館
(福岡県糸島市)
博物館近郊にある平原(ひらばる)王墓は、日本最多の40面の銅鏡と日本最大の大きさの「内行花文鏡」(直径46.5㎝)が出土し、弥生時代後期の女性の被葬者の葬礼の儀がうかがい知れる墓として有名になった。一説には魏志倭人伝に登場する伊都国の王の墓や卑弥呼の母の墓とも!そうした王墓の発掘現場の再現は見どころで、国宝の銅鏡のオンパレードには圧倒される。内行花文鏡マニアには必見!
駐車場もある。
引用・参考/訪問した博物館・資料館など
(162)私の古墳の楽しみ方(その4・葺石と埴輪)
あまり有名でない古墳を見つけて墳丘に登ることができた時は、とても幸せな気持ちになるのは古墳マニアとして当然のこととして、葺石の痕跡や埴輪の破片がないか目を凝らしてしまうのは、もはやマニア癖の何物でもない。
◎葺石の配置状況と種類を楽しむ
葺石が有るナシは県や国の史跡レベルの古墳ならば説明版があって、記載されていることは多いが、市や町の史跡レベルになるとなかなか書かれておらず、古墳名が書かれた立看板が関の山だから、墳丘に登ってみて初めて葺石の存在を知ることも多い。
〇配置状況
古墳好きの方々には当たり前のことだが、墳丘に石が葺かれているといっても、私たちが確認できるのは、表面に密集して露出した主に川原石を見つけた時ではないだろうか。
発掘報告書を見ることができた場合にはじめて全体像が想像できる程度だ。
私の知る限り、墳丘の全面に葺いた古墳はまれで、
墳丘の保護のために斜面のみ葺いた古墳が一番ポピュラーではないかと思う。
2段・3段築成のテラス(各段の平たい部分)のみ、あるいは平面(前方部と後円部の上とテラス)に葺いたもの、外から見える場所だけ葺いた古墳などがある。時の権力の大きさや財力、あるいは近くに川があるかどうかで違いがあるように思う。
圧倒的に川原石が多い気がする。
まれに自然石や割石らしきものも。
◎埴輪の種類と配置を想像して楽しむ
古墳の現地案内板や博物館でしか見られない埴輪!
埴輪は、古代の吉備(岡山~広島)地方で、弥生時代に築造された「弥生楯築墳丘墓」などに見られる「特殊器台」が、簡略化されて埋め込み型の円筒埴輪として全国に広まったと言われている。
この埴輪がヤマト王権の前方後円墳と融合して古墳に配置されるようになったようだ。
古墳時代初期の3世紀後半、奈良の箸墓古墳などに初めて円筒埴輪が配置され、
その後に形象埴輪や動物埴輪、古墳時代中期以降に人物埴輪が登場し、6世紀終わりには前方後円墳の消滅とともに突然見られなくなる。
世間一般的には埴輪と古墳はセットなのだが、大きな古墳なのに埴輪がないもの、小さい墳丘なのにしっかり配置してあるものなど、前方後円墳が許可制だったのに対して埴輪の配置の有無には明確な基準がなかったのではないかと思われる。
〇形象埴輪
①人物埴輪
王
兵士(武人)
巫女
踊り子
力士
鷹匠
楽器奏者
※北九州では磐井の君の岩戸山古墳などに石人が該当する
〇器材埴輪
祭祀道具(高坏・杯)
武器(靭形・盾)
蓋(きぬがさ)
〇動物埴輪
馬(馬具付き・農耕馬)
猪
猿
〇家形埴輪
王の館
子持ち館
家形
水の館(水の祭祀場)
船
〇円筒埴輪
弥生時代後期
「特殊器台」(高い円筒上の焼き物の上に壺が乗る)
古墳時代初頭
特殊器台の器台と壺を一体化させた「朝顔型円筒埴輪」
古墳時代前期~
「鰭付円筒埴輪」・「円筒埴輪」
〇埴輪の配置状況
円筒埴輪は、墳丘頂部、テラス(段の平坦面)、周提帯の上(大仙陵古墳など)に並べられることがほとんど。
形象埴輪は、墳丘頂部に方形に配置されたほか、テラス(段の平坦面)、「造出し」の上にも並べられている。
埴輪の大行列は大阪の「今城塚古墳」や
群馬の「保渡田八幡塚古墳」などで見ることができる。
これらは「葬送儀礼を再現した」説や
「首長権継承儀礼」(群馬・塚廻り古墳群4号墳)、
あるいは「当時の王宮」をイメージした説がある。
また墳丘の円筒埴輪などの配列には、「聖域を区画する」役割や盾形埴輪は「魔よけ」の意味があったなど諸説ある。
埴輪が造られた窯跡なども見どころではあるが、実際とても地味な光景しかないので、ついパスしてしまうのが素人の私。
引用・参考/西都原考古博物館・伊都国歴史博物館・今城塚古代歴史館・かみつけの里博物館・高崎市観音塚考古資料館・東京国立博物館・芝山古墳はにわ博物館・国立歴史民俗博物館・岩戸山歴史文化交流館・藤岡歴史館など