私がおじいさんの姿に気が付いたと同時に、おじいさんも私の方を見たのでお互いに目線が合いました。

「久しぶりじゃのう。」
向こうから声がかけられました。
「どうか?」
「はい?」
と私。
「縁の意味について考えてくれたな?」
周囲は人々の移動する靴音とざわめきが響いています。前回のコンサート会場の中のような大きなざわめきといい、今日の人の集まってくる交差点での出会いといい、人の流れと何か関係があるのかな、縁というものは?
ふとっ、人の流れが縁なのかな、と考えている私。
「そうだな、それも正解だな。」
私の考えていることが、漫画の本にあるようなふきだしになって頭の上にでも出ているのか、何故、人の考えていることがいつもわかるのか不思議に思います。
そんなことには構わずに、おじいさんは話を続けられます。
「縁というのはな、こういう人と人の中にあるだけではないんじゃ。」
「はい。」
と、さっきと同じ返事をする私。
「人同士の縁。男女の縁、夫婦の縁、親子の縁、兄弟の縁。さらにはペットとの縁もあるし、土地との縁もあれば、家との縁もある。病気との縁というのもあるぞ。ちょっと怖いのは、お金との縁じゃろな!」
もしかすると、縁というのはその人の生活と行動パターンの軌跡のように残る思いのエネルギーが違うパターンの思いと絡み合ってできるものなのかな、とふとっ思いました。
「さてね、わしは時に縁をつないでくれ、と頼まれることがあるのじゃがな。」
この言葉に私は、一瞬ですが思考が止まってしまったのです。このおじいさんは…いったい誰なの?
ちょっと待てよ。だいたいが白い作務衣姿でこの渋谷の交差点を歩いているなんて変だぞ、と思ったのです。
私はすかさず軽く頭を下げました。
同時におじいさんはにこっと笑い返されました。
そのとき信号が変わって、群衆の大きな波が動き出しました。渋谷のこの交差点は、地方の方には想像できないでしょうが、夕
方の会社が終わる時間に重なると、それは大きな祭りがあって人々が向かってい
くのか、たった今演奏が終わったコンサート会場から人々が帰る時のような物凄い人の波です。
その波の中で、私の足は自然とおじいさんの方に向かいます。
方の会社が終わる時間に重なると、それは大きな祭りがあって人々が向かってい
くのか、たった今演奏が終わったコンサート会場から人々が帰る時のような物凄い人の波です。
その波の中で、私の足は自然とおじいさんの方に向かいます。
「久しぶりじゃのう。」
向こうから声がかけられました。
「どうか?」
「はい?」
と私。
「縁の意味について考えてくれたな?」
周囲は人々の移動する靴音とざわめきが響いています。前回のコンサート会場の中のような大きなざわめきといい、今日の人の集まってくる交差点での出会いといい、人の流れと何か関係があるのかな、縁というものは?
ふとっ、人の流れが縁なのかな、と考えている私。
「そうだな、それも正解だな。」
私の考えていることが、漫画の本にあるようなふきだしになって頭の上にでも出ているのか、何故、人の考えていることがいつもわかるのか不思議に思います。
そんなことには構わずに、おじいさんは話を続けられます。
「縁というのはな、こういう人と人の中にあるだけではないんじゃ。」
「はい。」
と、さっきと同じ返事をする私。
「人同士の縁。男女の縁、夫婦の縁、親子の縁、兄弟の縁。さらにはペットとの縁もあるし、土地との縁もあれば、家との縁もある。病気との縁というのもあるぞ。ちょっと怖いのは、お金との縁じゃろな!」
もしかすると、縁というのはその人の生活と行動パターンの軌跡のように残る思いのエネルギーが違うパターンの思いと絡み合ってできるものなのかな、とふとっ思いました。
特にお金などというものには、人の強い念やむき出しの欲が絡みついているので、その強いエネルギーと縁を結ぼうなどと思うと、こちらがバリアーみたいなものを張って、しっかりと防御しないと自分の縁を根こそぎに持って行かれるのかなぁ、と取り留めのないことを考えてしまいました。
「さてね、わしは時に縁をつないでくれ、と頼まれることがあるのじゃがな。」
この言葉に私は、一瞬ですが思考が止まってしまったのです。このおじいさんは…いったい誰なの?
ちょっと待てよ。だいたいが白い作務衣姿でこの渋谷の交差点を歩いているなんて変だぞ、と思ったのです。
そして、その瞬間に、私たちは、真っ白な雪が残る雪山の中にいました。
「ここからが大事だぞ!
余計なことを考えずに、よく聞いてくれ。」
たぶん読者の皆さんも、こんな悪人までも肯定するような話は、にわかには信じられないでしょう。
白いおじいさんは続けられます。
「ならば、この世の中を見てみるがいい、組織の上の方にいる者ほど自分が何をすべきで、何ができないかと、よく知っているよ。
話をかえて、身近な例を言うと、結婚相手が欲しいという相談は一番多いようだな。
この時に人が頼むのは必ず○○な顔立ちで、△△なスタイルな人と縁が欲しいと
か、□□のような優しい人がいい、という注文が必ずあることだよ。本人は口に出していなくても、心の中でしっかりと念じておる。
この前は、自分に対してよく気を遣ってくれる日本的な女性と縁ができるように、と頼んでいった者がおったぞ。
そのときは、人に頼む前にあなた自身がもっと他人に気遣いをすると、やはりそういう思いを持つ者同士の縁ができるのだよ!と教えてあげたのじゃが、彼には聞こえなかったようじゃ。
だからな、良い縁を繋ぐということの基本は、まづ自分をよく知り、しっかりとした自分を持つこと。それからな、これはちょっと難しいかもしれんが、自分の生活の範囲を適当に変化させるということ。」
余計なことを考えずに、よく聞いてくれ。」
「はい。」
「人は縁をくれ、とよく頼みに来る。しかしな、縁の基本はその人の生活と考え方に大きく左右されるということなんだ。
縁の正体は、おまえが先ほど考えていたように思いの軌跡なのじゃよ。言い換えると思いの糸ということができるかもしれん。
だから、良い縁をもらおうと思えば、自分自身をしっかりと持たなきゃならん。
…… アイデンティテイという言葉になるな。
自分は何者であるか、自分は何をするのか、ということをしっかりと持たなけれ
ばいかんよ。
心優しい善人が苦労をしているのに、かたや欲の強い悪人が人の羨む財や幸せを手に入れているのが、よくあるお金の縁の例だよ。
「人は縁をくれ、とよく頼みに来る。しかしな、縁の基本はその人の生活と考え方に大きく左右されるということなんだ。
縁の正体は、おまえが先ほど考えていたように思いの軌跡なのじゃよ。言い換えると思いの糸ということができるかもしれん。
だから、良い縁をもらおうと思えば、自分自身をしっかりと持たなきゃならん。
…… アイデンティテイという言葉になるな。
自分は何者であるか、自分は何をするのか、ということをしっかりと持たなけれ
ばいかんよ。
心優しい善人が苦労をしているのに、かたや欲の強い悪人が人の羨む財や幸せを手に入れているのが、よくあるお金の縁の例だよ。
そういうのを見て、人は、世の中はなんて不平等だと天を恨むが、そうじゃないんだ。
欲でも何でもいい、強い自分をしっかりと持つことが大事なんだ。
そこから縁も生まれ、ほかの縁と絡み合い、新しい縁が引き寄せられてくるんじ
ゃ。」
私はびっくりして思考は止まったままです。
欲でも何でもいい、強い自分をしっかりと持つことが大事なんだ。
そこから縁も生まれ、ほかの縁と絡み合い、新しい縁が引き寄せられてくるんじ
ゃ。」
私はびっくりして思考は止まったままです。
たぶん読者の皆さんも、こんな悪人までも肯定するような話は、にわかには信じられないでしょう。
白いおじいさんは続けられます。
「ならば、この世の中を見てみるがいい、組織の上の方にいる者ほど自分が何をすべきで、何ができないかと、よく知っているよ。
話をかえて、身近な例を言うと、結婚相手が欲しいという相談は一番多いようだな。
この時に人が頼むのは必ず○○な顔立ちで、△△なスタイルな人と縁が欲しいと
か、□□のような優しい人がいい、という注文が必ずあることだよ。本人は口に出していなくても、心の中でしっかりと念じておる。
この前は、自分に対してよく気を遣ってくれる日本的な女性と縁ができるように、と頼んでいった者がおったぞ。
そのときは、人に頼む前にあなた自身がもっと他人に気遣いをすると、やはりそういう思いを持つ者同士の縁ができるのだよ!と教えてあげたのじゃが、彼には聞こえなかったようじゃ。
だからな、良い縁を繋ぐということの基本は、まづ自分をよく知り、しっかりとした自分を持つこと。それからな、これはちょっと難しいかもしれんが、自分の生活の範囲を適当に変化させるということ。」
ここで私は、はぁ?と心の中で思ったのですが、例によって、白いおじいさんには筒抜けだったようで、一瞬、私の顔をじっと見たのです。


