それでは、今日は国立新美術館で開催中の、日展(第9回日本美術展覧会)について書きたいと思います。

(会期 11月4日(金)~11月27日(日))

 

日展の歴史は古く、明治40年にまで遡ることができます。

日展目録を拝見すると、今回の第9回日展は、昭和33年に社団法人日展(平成24年度より公益社団法人)として再出発して、通算65回目の展覧会であり、明治40年の第1回文展まで遡れば、通算115回目の展覧会とのことです。

 

現在、日本画、洋画、彫刻、工芸美術、書の5部門で開催されていますが、私は、日本画、洋画、彫刻の3部門を拝見してきました。

 

それでは、日本画部門から触れていきたいと思います。

日本画部門の会場は1階になります。

受賞者が掲示されています。

 

まずは、受賞者の初めに掲げられている、文部科学大臣賞の日本画部門の受賞作を紹介します。

「緑韻に白く」 長谷川喜久 文部科学大臣賞

落ち着いた色彩のなかで緑が印象的な作品で、日本画らしい、張りつめた静けさを感じる作品です。

 

日展を毎年、拝見していると、当然、私のお気に入りの作家がどのような作品を出展されているか、気になるところです。

まず、このお三方の作品を紹介します。

「野に遊んだ日」 山下容子

山下容子さんは、ご婦人を優しく、上品に描かれており、いつも楽しみに拝見している作家さんです。

今回は、子供の頃の遠い思い出を描いた作品でしょうか、記憶の中の風景が花とともに描かれています。

 

「黎明」 村居正之

古都の風景を、独特の藍で描く村居正之氏の世界です。

 

「秋色」 池内璋美

池内璋美氏は、大変写実的に生き生きとした動物を描くことが多いのですが、今回は、曼珠沙華の群生を描いており、その見事さに目を奪われてしまいました。

 

次は、私がご本人をよく存じ上げているお二人です。

「花燦燦」 福田季生

福田季生さんは、着物の女性を描かれており、日展ではいつも見事な作品を発表されています。

今回は、金箔主体の背景に、振袖の立ち姿を描いており、背景の中で着物の扇形の柄を補うなどして、着物の柄の美しさを画面全体を使って表現している作品と思いました。

 

参考に、今年6月の個展の記事を紹介しておきます。

「福田季生展ー願い事ー」(於 ギャラリーアートもりもと)に行ってきました!(2022年6月)

 

なお、福田季生さんの作品の一つ置いて隣には、たまたまでしょうか、福田季生さんが学んだ京都市立芸術大学の日本画の川嶋渉教授の作品が展示されていましたので、紹介しておきます。

「some said」 川嶋渉

 

次は、石井清子さんの作品です。

「月の光」 石井清子

石井清子さんは、日展で、いつも猫の作品を発表されています。

動物、その中でも猫が好きな私は、石井さんの作品に惹かれ、私が日展をブログに書き始めた当初から作品を紹介させていただいています。

もともと、ご自分の2匹の飼い猫をモデルにして制作されていたのですが、3年前にそのうちの1匹のジルが、そして、今年8月にもう1匹のクレアが虹の向こうに旅立ってしまいました。

今回の作品は、そのクレアの姿はない作品ですが、石井清子さんによると「クレアはこの絵の中を照らす光です。」とのことです。

猫を描く方は数多くいますが、石井さんの描く猫は、飼い主との繋がりが強いからこそみせるリラックスした姿が魅力である…と私は考えています。

今回は、大変辛かったのではないかと思いますが、出来上がった作品は、石井さんの作品らしく安心しきった猫の姿が描かれています。

余談ですが、この作品は17室に展示されていますが、この場所は、長い通路越しから見える場所にあり、遠くから見えることに気が付きましたので、その写真を撮っておきました。

 

以下、一気に他の方々の作品を紹介します。

「満ちゆく」 稲葉未来

稲葉未来さんは、以前、猫の作品を出展されていたと記憶したところ、つい最近、銀座のグループ展でその作品を拝見することができました。

この作品、ヤギの優しさ、思慮深さを感じさせる作品です。

8人の個性が光る、AMAKARA展(於 銀座中央ギャラリー)に行ってきました!(2022年10月)

 

「いろぐ」 北斗一守

赤い薔薇が魅力的な作品です。

 

「冬の台所」 小熊香奈子

冬の台所で見られる食べ物一つ一つが、いとおしい作品となりました。

 

「木霊ー銀のしづく雫」 猪熊佳子

 

「錦秋に歩む」 藤島博文

 

「月」 西田幸一郎

 

「赫、赫」 福本百恵 特選

 

「万象」 佐藤和歌子

 

「Three Grances(三美神)」 岡本文子

 

「雨告ぐ花」 岩崎文絵

 

「耳をすませば」 森田美子

 

「おさんぽ」 中村妃菜

 

さて、次は、洋画部門に移りたいと思います。

会場は2階になります。

 

まず、文部科学大臣賞を受賞した大友義博氏の作品です。

「瀬音」 大友義博 文部科学大臣賞

大友義博氏の作品は、いつも明るい画面のなか、瑞々しい女性が描かれており、いつも拝見することを楽しみにしています。

注目している方の受賞にとても嬉しく思っています。

 

もう一人、受賞の方の作品を紹介します。

「時を超えて」 渡邊裕公 東京都知事賞

 

日展と言えば、重鎮、中山忠彦氏の作品が拝見できることに大きな価値があると私は思っています。

「絵扇を持つ」 中村忠彦

 

そして、美人画と言えば、木原和敏氏の作品も日展には欠かせられないのではないでしょうか。

「心ほどいて」 木原和敏

 

今回は、あまり目立たない場所での展示でしたが、この方の作品も魅力的です。

「バラを描く」 池田清明

 

いつも注目して、作品を紹介させていただいている松本貴子さんの作品が、今回は第1室の入り口に展示されていました。

「REBIRTH、月の仔」 松本貴子

 

さて、最近、グループ展でよく拝見する水彩画の徳田明子さんの作品が、今回も入選されていたのですが、上段の展示でした。

多くの方の作品を見ていただくためには、上段の展示はやむを得ないとは思いますが、作品を拝見するのを楽しみにしていたものにとっては、やや残念です。

「蛍火」 徳田明子

 

以前から気になるこの方の展示も、今年は上段の展示でした。

「想」 中島あけみ

 

ベテランから若い方まで、素晴らしい作品が目白押しです。

「暑い夏の日の午後」 齋藤秀夫

 

「祈り」 曽剣雄

 

「月を見て」 児島新太郎

 

「陽だまり」 中島健太

 

「命脈」 永谷光隆 特選

 

「Estaing」 西房浩二

 

「赤い櫛」 ナカジマカツ

 

「白」 阿部良広

 

「つかの間の愉しみ」 高畠二三人

 

「2022年ルドベキアの咲く頃」 清水和司

 

「Magic hour」 小野月世

 

「冬のおくりもの」 田所雅子

 

「優しい時の中で」 前川ひろこ

 

最後は、彫刻部門です。

彫刻部門は、以前は、私は拝見していなかったのですが、最近は、必ず拝見するようにしています。

お目当ては、寒河江淳二さんの作品です。

寒河江淳二さんは、画家の寒河江智果さんのお父様であり、寒河江淳二さんにお目にかかったのは、昨年の奥様の個展でした。

芳賀美土子さんの個展~美土子の世界展~(於 サロンドジー)に行ってきました!(2021年11月)

 

「燦燦と」 寒河江淳二

寒河江淳二さんの作品を拝見した時から、そのしなやかで女性らしい表現に魅了されてしまいました。

 

彫刻は普段拝見することがほとんどない私ですが、

様々な作品が並ぶなか、素敵だなと思った作品を紹介します。

「道標ー2022-」 山田朝彦

 

「天平の月を想う Ⅲ」 伊庭靖二 日展会員賞

 

「秋に想う」 岩谷誠久 特選

 

「lily」 野原昌代

 

「行雲流水ー一つまみの期間」 小野啓亘

 

そして、最後は亀の作品です。

「拝啓 エイブ」 岡本和弘

 

以上、僭越ですが、私の好みで作品を紹介させていただきました。

駆け足になってしまいましたが、あらためて日展の魅力を再認識させていただきました。