有限責任社員(合同会社の社員を除く。)が出資の価額を減少した場合であっても,当該有限責任社員は,その旨の登記をする前に生じた持分会社の債務については,従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負う(会社583条2項)。この責任は,登記後2年以内に請求又は請求の予告をしない持分会社の債権者に対しては,当該登記後2年を経過した時に消滅する(会社583条4項)。
基本的なルール
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出資の価額の減少:
- 有限責任社員(合同会社の社員を除く)が出資の価額を減少させた場合、例えば10万円の出資を5万円に減らした場合を考えていく。
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責任の範囲:
- 出資の価額を減少する前に持分会社が負った債務については、出資の価額減少前の責任範囲で弁済する責任がある。
- つまり、10万円の出資をしていたときに会社が負った債務に対しては、依然として10万円の出資額に基づいて責任を負うということ。
登記と責任の消滅
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登記前の債務:
- 出資の価額を減少する場合、その変更を法務局に登記する必要がある。
- この登記がされる前に生じた債務については、従前の責任の範囲(減少前の出資額)で弁済責任を負う。
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登記後の責任の消滅:
- 登記が行われた後、その情報は公示される。登記後2年以内に、債権者が請求または請求の予告をしない場合、出資の価額減少前の責任は2年経過後に消滅する。
- 例えば、出資の価額減少の登記が2024年6月27日に行われた場合、2026年6月27日までに債権者が請求や請求の予告をしなければ、その後は減少後の出資額(5万円)に基づく責任のみを負うことになる。
具体例
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出資の価額減少前の債務:
- Aさんが持分会社に対して10万円の出資をしており、持分会社がこの間に50万円の借金をしたとする。
- Aさんが出資の価額を5万円に減少させ、その旨を登記した。
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登記後2年間の債務弁済責任:
- 登記前に生じた50万円の借金については、Aさんは10万円の出資額に基づく責任を2年間負い続ける。
- もし、登記後2年以内に債権者がAさんに対して請求や請求の予告を行わなければ、Aさんの責任は消滅する。5万円のみ責任を負えばよくなる。
まとめ
- 有限責任社員が出資の価額を減少しても、登記前に生じた債務については、減少前の出資額に基づく責任を負う。
- 登記後2年以内に債権者が請求または請求の予告をしない場合、その責任は2年後に消滅する。