商法596条2項および598条1項に基づき、場屋の主人(例えばホテルや旅館のオーナー)が客から預かった物品が滅失(失われたり、壊れたりすること)した場合、その責任は時効により消滅する。ただし、時効が成立するのは「客が場屋を去った時から1年」。
場屋営業とは?
「場屋営業」とは、商法における用語で、ホテルや旅館などの宿泊業や、倉庫業、貸しロッカーなど、特定の場所を提供し、顧客から預かった物品を保管する業務を指す。場屋営業者は、顧客から預かった物品に対して一定の責任を負う。
具体的な例
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ホテルや旅館
- 宿泊客がホテルの部屋に滞在する間、その部屋や預けた荷物(フロントに預けたスーツケースや貴重品)を保管する責任がある。
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ボーリング場や映画館
- ボーリング場で顧客の物品を一時的に保管する業者。
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貸しロッカー
- 駅やショッピングモールに設置されているロッカーを顧客が使用する場合、そのロッカーに預けた物品の保管を行う。
法的責任
場屋営業者は、顧客から預かった物品が滅失(紛失、破損)した場合、その責任を負う。
ただし、以下の点に注意
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責任の期間:商法第598条第1項によれば、顧客がその場屋を去った時から1年が経過すると、場屋営業者の責任は時効により消滅する。
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悪意の場合: もし場屋営業者が悪意(故意)で物品を滅失させた場合、時効による責任の消滅は適用されない。顧客はいつでも責任を追及することができる。
具体例で説明
一般的な場合
状況:
- 田中さんがホテルに宿泊し、貴重品をホテルの金庫に預けた。
- 宿泊最終日にホテルの金庫から貴重品がなくなっていることが判明。
- 田中さんはその日にホテルをチェックアウトした。
時効のカウント:
- 田中さんがホテルをチェックアウトした日から1年が時効期間です。この間に田中さんがホテルのオーナーに対して責任を追及しない場合、その責任は時効によって消滅する。
例:
- 田中さんが2023年6月1日にホテルをチェックアウトした場合、2024年6月1日までにホテルのオーナーに対して責任を追及しなければ、その責任は消滅する。
悪意の場合
状況:
- 同じく田中さんがホテルに宿泊し、貴重品をホテルの金庫に預けた。
- ホテルのオーナーが故意に貴重品を盗んだ、または紛失させた場合(悪意)。
時効のカウント:
- 悪意の場合、時効による消滅は適用されない。つまり、田中さんはいつでもホテルのオーナーに対して責任を追及できる。
要点まとめ
- 時効期間: 客が場屋を去った日から1年(滅失した日ではない)。
- 悪意の場合: 時効による消滅は適用されない。
このように、物品の滅失による責任については、時効期間の開始点と悪意の場合の例外に注意する必要がある。