問題
吸収分割株式会社が吸収分割承継株式会社に承継されない債務の債権者(以下「残存債権者」という。)を害することを知って吸収分割をした場合には、残存債権者は、吸収分割承継株式会社が吸収分割の効力が生じた時において残存債権者を害することを知らなかったとしても、当該吸収分割承継株式会社に対し、当該債務の履行を請求することができる。
答え ×
吸収分割株式会社が吸収分割承継株式会社に承継されない債務の債権者(残存債権者)を害することを知って吸収分割をした場合には、残存債権者は、吸収分割承継株式会社が吸収分割の効力が生じた時において残存債権者を害することを知らなかったときを除き、当該吸収分割承継株式会社に対し承継した財産の価額を限度として当該債務の履行を請求することができる(会社759条4項)。吸収分割承継株式会社が吸収分割の効力が生じた時において残存債権者を害することを知らなかった場合にはこの請求はできない。「詐害分割」と呼ばれるケースにおいて分割会社の債権者を保護するための制度です。
この過去問、吸収分割承継株式会社が残る債務に対してどのように責任を負うかについて整理する。
基本の概念
吸収分割
- 吸収分割株式会社(A社):事業の一部を他の会社に移す会社。
- 吸収分割承継株式会社(B社):A社から事業を引き継ぐ会社。
残存債務
- 残存債務:A社がB社に事業を移した後も、A社に残る債務。
残存債権者
- 残存債権者:A社にお金を貸している人や企業で、A社が事業をB社に移した後もA社にお金を返してもらう必要がある人。
吸収分割承継株式会社の責任
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吸収分割承継株式会社の責任
- 吸収分割をした結果、A社の一部の債務がB社に引き継がれないことがある。
- このとき、B社がその債務を引き継がなかったことにより、A社に残る債権者(残存債権者)が不利益を被る可能性がある。
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残存債権者の権利
- 残存債権者が不利益を受けることを知っていて吸収分割を行った場合、残存債権者はB社に対してその債務の履行を請求できる。
- ただし、この請求は、B社が吸収分割の効力が生じたときに、その不利益を知らなかった場合にはできません。
例を使った説明
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A社とB社の吸収分割
- A社が事業の一部をB社に移す。このとき、A社に1000万円の債務が残った。
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残存債権者の存在
- A社に1000万円を貸している銀行(残存債権者)がいる。
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吸収分割による影響
- 吸収分割の結果、A社の資産が減り、銀行はA社からお金を返してもらえないリスクが高まる。
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B社の責任
- もし、A社とB社が吸収分割を行う際に、A社の債務が引き継がれず、銀行が不利益を被ることを知っていた場合、銀行はB社に対してもお金を返すように請求できる。
- でも、B社が吸収分割時にその不利益を知らなかった場合、銀行はB社に対して請求することはできないということ。
まとめ
- 残存債権者保護:吸収分割によりA社に残る債務について、残存債権者が不利益を受ける場合がある。
- B社の責任:B社がその不利益を知っていて吸収分割を行った場合、残存債権者はB社に対して債務の履行を請求できる。
- 例外:B社が不利益を知らなかった場合、残存債権者はB社に請求できない。
吸収分割において残存債権者の権利を保護するための仕組みが整えられている。