①サンタ🎅君がイヌ🐶君に土地を売った。
サンタ🎅君の所有権をイヌ🐶君に移転しないと
いけないのに、悪いサンタ🎅君は所有権移転に
協力しない。
②その後、悪いサンタ🎅君は土地をネコ🐈ちゃんに
売り(二重売買)、ネコ🐈ちゃんは所有権移転の
登記をした。
サンタ🎅君→売買→イヌ🐶君
サンタ🎅君→売買→ネコ🐈ちゃん
この二重売買となった状態で、
イヌ🐶君がやれることは以下のこと。
①処分禁止の仮処分の登記
サンタ🎅君が所有権移転登記に協力してくれないなら、と
処分禁止の仮処分命令を出してもらうのだ。
その間に、所有権移転に関する訴訟を起こし、争っている
間に二重売買されてネコ🐈ちゃんに売られても
民事保全法に基づいて、イヌ🐶君の所有権移転登記が
守られるのだ。
イヌ🐶君が勝訴すると、以下、②③を単独で
申請できる。
②仮処分に後れる登記の抹消
この事例の場合、ネコ🐈ちゃんへの所有権移転登記
は処分禁止の仮登記に後れた登記であることから、
イヌ🐶君は単独で抹消することができる。
抹消することで、所有権はサンタ🎅君に戻る。
③判決による登記
サンタ🎅君に所有権が戻ったならば、
判決によって勝訴したイヌ🐶君は晴れて、
所有権移転登記ができるのだ。
上記の事例の登記記録は以下のとおり。
甲区
2番 所有権移転
原因 令和6年1月1日売買
所有者 サンタ🎅
3番 処分禁止の仮登記
原因 令和6年2月1日東京地調裁判所仮処分命令
債権者イヌ🐶
4番 所有権移転
原因 令和6年3月1日売買
所有者 ネコ🐈
裁判に訴えて、勝訴したイヌ🐶君は、
まずやらなきゃいけないことは、
所有権をネコ🐈ちゃんからサンタ🎅君に
もどさないといけない。
そう、勝訴したイヌ🐶君は4番所有権移転を
単独で抹消し、その後、サンタ🎅君から
イヌ🐶君への所有権移転登記をするのだ。
この①抹消、②所有権移転この申請は
セットでする。
単独申請だ。
そもそもネコ🐈ちゃんは、処分禁止の仮処分が
登記されていることを知っている。
なぜなら、登記されているってことは、
処分禁止の仮処分が公示されていることだから。
ネコ🐈ちゃん、あなた、処分禁止の仮処分
の土地って知ってるでしょ?
てなわけで、ネコ🐈ちゃんが義務者になり、
仮処分ネコ🐈ちゃんに移転した所有権は抹消されるに
相応しいのだ。
じゃあ、まずは抹消の申請から
仮処分による失効(抹消)
1/2
登記の目的 4番所有権抹消
原因 仮処分による失効
義務者 ネコ🐈・・・共同申請っぽいけどネコ🐈は申請しない
申請人 イヌ🐶・・・単独申請
添付情報 通知証明情報(※1)
代理権限証明情報
課税価格 なし
登録免許税 金1,000円・・・抹消は不動産1個につきこの金額
※1:登記原因証明情報が必要ではないレアなケース
その代わりに通知証明情報が必要。
誰に通知するのか?それは、抹消されるネコ🐈ちゃんに
抹消するよという通知した証明情報。
所有権移転
2/2
登記の目的 所有権移転
原因 年月日売買
権利者 (申請人)イヌ🐶・・・仮処分債権者の単独申請になる
義務者 サンタ🎅
添付情報 登記原因証明情報・・・判決書正本、確定証明書
住所証明情報・・・イヌ🐶君のもの
代理権限証明情報
課税価格 金1,000万円
登録免許税 金20万円
晴れて、イヌ🐶君は所有権移転登記が完了し土地をゲットできる。
ニコイチで申請する。
甲区
2番 所有権移転
原因 令和6年1月1日売買
所有者 サンタ🎅
3番 処分禁止の仮登記
原因 令和6年2月1日東京地調裁判所仮処分命令
債権者 イヌ🐶
4番 所有権移転
原因 令和6年3月1日売買
所有者 ネコ🐈
5番 4番所有権抹消・・・上記1/2の申請
原因 仮処分による失効
6番 所有権移転・・・上記2/2の申請
年月日売買
所有者 イヌ🐶
7番 3番仮処分の登記抹消・・・最後にイヌ🐶君が訴えた仮処分を抹消
余白
仮処分の目的達成により年月日登記
通知証明情報
仮処分の登記に後れる登記、上記でいうネコ🐈ちゃんへの
所有権移転登記は、仮処分債権者(イヌ🐶君)に対抗
することはできない。
イヌ🐶君が勝訴し、単独申請でネコ🐈ちゃんへの所有権
移転登記を抹消しようとするときは、抹消される権利の
名義に(ネコ🐈ちゃん)に抹消するよって通知しないと
いけない。
通知は通知を発した日から1週間を経過したときに
到達したものとみなされる(犠牲される)。
1週間を経過する前に登記申請しようとする場合、
配達証明書が必要になる。
仮処分の登記の抹消
まずは、不動産登記法から。
不動産登記法
(仮処分の登記に後れる登記の抹消)
第百十一条 所有権について民事保全法(平成元年法律第九十一号)第五十三条第一項の規定による処分禁止の登記(同条第二項に規定する保全仮登記(以下「保全仮登記」という。)とともにしたものを除く。以下この条において同じ。)がされた後、当該処分禁止の登記に係る仮処分の債権者が当該仮処分の債務者を登記義務者とする所有権の登記(仮登記を除く。)を申請する場合においては、当該債権者は、当該処分禁止の登記に後れる登記の抹消を単独で申請することができる。
2 前項の規定は、所有権以外の権利について民事保全法第五十三条第一項の規定による処分禁止の登記がされた後、当該処分禁止の登記に係る仮処分の債権者が当該仮処分の債務者を登記義務者とする当該権利の移転又は消滅に関し登記(仮登記を除く。)を申請する場合について準用する。
3 登記官は、第一項(前項において準用する場合を含む。)の申請に基づいて当該処分禁止の登記に後れる登記を抹消するときは、職権で、当該処分禁止の登記も抹消しなければならない。
上記、第3項のとおり、登記官により仮処分の登記の職権抹消の
根拠が書かれている。
「当該処分禁止の登記に後れる登記を抹消するときは」
職権で登記官が職権抹消するのだ。
では、後れる登記を抹消しない場合は?
この場合は、仮処分債権者の申し立てによって
裁判所書記官が仮処分の登記の抹消を嘱託するのだ。
「後れる登記の抹消」申請がないため、仮処分の登記の
目的が達成されたかどうか、登記官に分からないため、
裁判所書記官が嘱託により抹消するのだ。