![耳掃除は耳かき派?綿棒派?](https://stat100.ameba.jp/common_style/img/home_common/home/ameba/allskin/ico_kuchikomi2.gif)
「なぁ、綿棒か何か持ってないか?」
「あら、何かしら、突然、気持ち悪いわね。綿棒は持っていないけれど、暴力を振るう事は出来るわよ。頬を出してちょうだい」
「何でそうなるんだ!わけが分からないぞ!」
「うるさいわね。綿棒か何か、と言ったじゃないの。綿棒を持っていない私はその【何か】が何なのかを予想して対処する必要があるのよ。そもそも私に声を掛けてきたという事は、その何かを私が持っていそうな確率が高いと思っているんでしょう?だったら私がいつでも持ち合わせている【理不尽】と【暴力】を渡すしかないじゃないの。早く頬を出してちょうだい」
「暴力なんていつも持ってないじゃないか!持ってるって表現も変だし!」
「あらそう。【暴力的】というのは持っている性質と言えるでしょうけれど、【暴力】となると持っているとは表現しないものなのかしら。言葉の捉え方や表現方法は人それぞれ違って、こんな日本人同士でも言葉の意味が異なってしまうものなのね。それともあなたはもう埋めようが無いくらい価値観の掛け離れた人なのかしら。私に近寄らないでちょうだい」
「ちょ、ちょっと待った!じゃぁ【何か】って言ったのを取り消せば良いんだな。綿棒は持ってないか?」
「うるさいわね。今の私達にとって最も必要ないのが綿棒じゃないの。唯一確定的な単語として出てきた綿棒以外の【何か】について話をしているのよ。綿棒だけが【何か】に該当する確率が0%で、他の全てのものが少なからず可能性を残しているというとんでもない状況が出来上がっていて、むしろ何故綿棒が除外されてしまったのかという事からも割り出していかなければならないかもしれないわね。という事は綿棒……」
「ちょっと待ってくれって!僕はそんな難しい話はしてないぞ!耳が痒いから綿棒を持ってないかな、って思ったんだ!」
「あら、どういう事かしら?」
「え?どうもこうも、耳が痒いから綿棒を使おうかな、と思っただけだぞ」
「あら、どういう事かしら?」
「お、おい、どうして突然聞こえなくなるんだ?耳が痒いから……」
「しつこいわね。痒い場所が脳のすぐ近くにあるから痒いのよ。今みたいに耳を遠くしてみたらどうかしら」
「そんな事で解消されるわけ無いだろ!」
「うるさいわね。そもそも日本人はすぐに耳掃除や耳かきをしたがるけれど、本来耳の汚れというのは時間が経つと勝手に表面に出てくるものだから、入り口を拭いたりして綺麗にしておけばわざわざ中をほじる必要なんて無いのよ。余程量が多いとか、水分が多いとか、そう医者に診断された人だけが気をつければ大丈夫らしいわ」
「そ、そうなのか。でも別に今は耳掃除をしたいわけじゃなくて、痒いからかきたいってのが理由で……」
「そんな【本来は耳かきは必要ない】という事実を知ってしまった私が、あなたを膝枕して耳掃除をしてあげる機会もあるんじゃないかと耳かき用の道具を持ち歩いていた事についてあなたはどのように責任を取るつもりなのかしら?って、何を言わせるのかしら、みっともないわね」
「ううっ、そ、そんな準備をいつもしてくれてたのか?じゃ、じゃぁもっとお前に甘えておけば良かったのか……えーと、もし良ければお願いしたいんだけど……」
「あらそう。それなら勝手に寝転がったり耳の奥を私に見せ付けたりすれば良いじゃないの。運が良ければ痒みが無くなる事もあるかもしれないわ」
「また素直じゃない言い方だな……で、でもじゃぁお願いします……」
「………………」
「えーと、どうした?いつでも良いぞ」
「あら、まだ痒かったのね。今は私の小言を聞いて耳が痛い状態なんじゃないかしら」
「いや、そんな言葉遊びでどうこうなる問題じゃ……っていうか、痒くても痒くなくても僕は大好きなお前が膝枕をしてくれたら嬉しいな、という気持ちで……」
「ちょっと、あまり耳がくすぐったくなるような事を言わないでちょうだい」
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「私の耳がどこか分かるかしら?」
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