「宇宙旅行に行く人ってどういう人達なんだろうな」
「あら、何かしら、突然、気持ち悪いわね。そんなの何かしらの理由で宇宙に行きたい人が行くに決まってるじゃないの。それとも誰もが嫌々宇宙に飛ばされていると思っているのかしら?あら、それはそれでどんな理由なのか興味深いわね。きっと世界中で犯罪を犯してしまって、もう地球のどこにも高飛びする場所が無いのよ。だから文字通りもっと高い場所へ飛ぼうとしているに違いないわ。それとも地球の何もかもに失望してしまって、もっと絶望の世界が広がる宇宙へと……」
「ちょ、ちょっと待った!僕が言いたいのはそういう事じゃなくて……宇宙旅行に行くのってスゴイ料金が高いらしいじゃないか。規模によって数十億とか数千万とか言われてるぞ」
「ええ、そうらしいわね。それがどうかしたのかしら。でも地球上にはもういられないから仕方が無いじゃないの。散々地球で悪事を働いて手にしたお金をはたいてでも行かなければならない理由があるのよ。果たして宇宙に行って生活していけるかどうかは分からないけれど、宇宙ステーションかどこかに逃げ込んで、職員に紛れて生活するつもりに違いないわ。もしくはハイジャック、というかスペースジャックするつもりかしらね。この場合はユニバースやコスモではなくてスペースと言うべきでしょうね。宇宙空間全てをジャックすればユニバースジャックと言えるけれど、宇宙の端なんて生きている間に行けるわけがないわ。更に宇宙空間の秩序を乱すような力を持っていればコスモジャックと言えるけれど、人間一人の力では……」
「ちょっと待ってくれって!どうして大犯罪者だけが宇宙に行くって設定になってるんだ!そんな人は事前のチェックで宇宙船への乗船を拒否されると思うぞ!」
「うるさいわね。大犯罪者なんだからチェックくらい上手い事くぐり抜けてしまうかもしれないじゃないの。そもそもまともに働いてお金を稼いで生きている人がそんな旅行代金なんて支払えないわよ。どうせ無くなっても構わないような、何の努力もせずに手にしたあぶく銭の持ち主……」
「ちょっと待ったって言ってるだろ!宇宙旅行への偏見が強過ぎるぞ!」
「うるさいわね。どんな人が宇宙旅行に行くのかを訊いたのはあなたじゃないの。だから私は私の予想を話しただけよ。こういう好奇の目もある事を知りつつ宇宙に行きたい人がいるならもう好きにしたら良いと思うわ」
「な、なるほど……まず宇宙空間に行く前に地球上の人間関係や世間の目を上手に遊泳しなきゃならないわけだな?」
「………………」
「お、おい、どうした」
「あら、突然会話に重力が無くなってしまって何が何だか分からなくなってしまったわ」
「うっ、僕が言葉遊びをしただけで内容が軽くなるって言いたいのか……自分だって比喩とか例えとかが好きなクセに……」
「ちょっと、聞こえているわよ、失礼な。自分の表現力が不足している責任を私に被せたりしないでちょうだい。例えば山でクマに襲われてしまった男が時間稼ぎをしようと蜂蜜のビンを投げつけたところ、見事にクマの顔に当たってビンが割れてクマが蜂蜜だらけになって喜んでいたら、怒り狂ったクマが明確な殺意を持って襲い掛かってきたようなものよ」
「……例えと言いたい事が全く違うような気がするんだけど……」
「うるさいわね。花を持たせた途端に鼻持ちならない事を言わないでちょうだい、失礼な。結局今日は何の話をしたいのかしら?話題が地球の外へ行ってしまって何が何だかさっぱり分からないわ」
「いや、だからいくらくらいなら宇宙旅行に行きたいと思うかな、ってのを訊こうと思ったんだ」
「さぁ、どうかしらね。宇宙から地球が見たいなら既にそういう映像はいくらでも見る事が出来るし、無重力が体験したいなら他にもいくつか方法があるし、酸素が無い状態を体験したいなら海にでも潜れば体験出来るわ。他には何かあるかしら」
「う、うーん、実際に宇宙に行ってみると新たな発見とか予想外の体験が出来る要素はあるんだろうけどな。まぁでも何となく予想がつくから海外旅行くらいの金額じゃないと払いたくないってカンジか?」
「あら、どうしてそうなるのかしら。今みたいに数十億、数千万の旅行代金だからこそ参加する人がいるんだと思うわ。結局その代金が支払える人間である事を自慢したい自己顕示欲の強い人間が行きたがっているだけでしょう?地球上の名声やお金に興味があるだけで、実際に宇宙空間に興味がある人達だとはとても思えないわ」
「だからどうしてそんなに宇宙旅行に対して偏見があるんだ、全く……あまり興味の無い話題だったか?」
「ええ、そうね。詳しくないもの」
「そのわりにはスペースとかユニバースとかコスモとかの意味の違いに詳しかったような気がするんだけど……」
「違うわよ。悔しくなるもの、って言ったの。明らかに私より宇宙に興味の無い人達が暇とお金を持て余して旅行に行ったりするのが腹立たしいじゃないの。そのまま帰ってこなければ良いんじゃないかしら」
「なるほど、珍しくひがんでたわけか……道理で言葉がキツイと思った……」
「クリックは無料よ。じゃぁするしかないわよね」
「ツイッター とかいうものを始めてみたわ」
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