「今年の夏はどうだった?」
「ちょっと、私に近寄らないでちょうだい」
「え?何で?話せないじゃないか」
「うるさいわね。毎日毎日、大袈裟ではなくて本当に毎日、一日も欠かす事無く一緒に過ごしていたじゃないの。そんなあなたがどうして今年の夏の様子を私に訊くのかしら。あなたの中では私と過ごした記憶なんて一切消え失せてしまっているのね、失礼な。二度と私にとか寄らないでちょうだい」
「ちょっと待った!そういう意味じゃなくて、ただ感想を訊いてるだけじゃないか!」
「あらそう。過去を振り返るのは嫌いだからあまり考えたくないわね。一切消え失せてしまっているわよ」
「おい、お前の方が酷いじゃないか。僕はまだちゃんと覚えてるぞ」
「あらそう。いずれにしても過去を振り返るくらいなら来年の夏休みの話をした方が良いんじゃないかしら。今年の夏はどれだけ考えてももうやってこないもの。来年の夏ならばあなたも5割近い確率で過ごす事が出来るはずよ」
「僕は来年の夏を過ごせない確率が5割もあるのか?ちゃんと来年を迎えられると思うぞ!」
「あら、ずいぶんと前向きなのね。明日どころか今日だって無事に終えられるか分からないような世の中じゃないの。特に不運が服を着て歩いているようなあなたには難しいんじゃないかしら。って、私と付き合っているのにどうして不運なキャラクターのままなのかしら、失礼な。何か言いたい事があるならはっきり言えば良いじゃないの」
「いや、僕はお前と出会えて幸せだし、何も言いたい事は無いぞ」
「……あらそう。それならもう何も話す事は無いんじゃないかしら。私に近寄らないでちょうだい」
「こら!そういう意味で言ったんじゃないぞ!お前に対して文句なんて何も無い、って意味じゃないか」
「うるさいわね。何も文句や注意が無いのが最良の状態だと思ったら大間違いよ。珍しく謙虚に意見を聞き入れようとしている状態の時にそういう事をされると、全く何もかもヤル気が無くなって……って、どうして私があなたの言いなりにならなければならないのかしら、失礼な。私に悪いところがあるとすれば、それはあなたの好みがあまりにも特殊なのが原因だと思うわ」
「何だかどうして欲しいのかよく分からないけど、とにかく僕の好みはそっくりそのままお前そのものだから何も心配いらないぞ。お前の何もかもが大好きだからな」
「……うるさいわね。何なのかしら、さっきから。私に素敵な過去の記憶でも持たせようとしているんじゃないでしょうね、いかがわしい。そう簡単に過去に気を許すと思ったら大間違いよ」
「うっ、そんなに頑なにならなくても……何歳の時の夏が一番楽しかったのかを訊こうとしただけだぞ」
「うるさいわね。そんなの最高の夏に決まってるじゃないの」
「いや、それがいつなのかを訊いてるんだぞ。そう思える夏が過去にあったのか?」
「違うわよ。最後の夏、って言ったの。私達の最後の夏ね」
「えーと、言ってる意味が……一番最近過ごした夏って意味か?英語でもLast Summerみたいな表現をするし」
「違うわよ。私達二人がいつまでこの世に存在するのか分からないけれど、二人ともが揃っている形で過ごす最後の夏、と言っているのよ。時が経てば経つほど楽しくなっていくんでしょう?私はそう信じているわよ」
「な、なるほど。二人でいればもっともっと幸せで楽しくなるって言ってくれてるのか……そうだな、僕もそう思うぞ」
「あらそう。という事は今年が最高になる確率が5割くらいじゃないかしら」
「だから僕は来年の夏までの間に一体どうなるんだ!?」
「クリックする確率は10割でお願いね」
「ツイッター とかいうものを始めてみたわ」
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