![初めてやったバイトは?](https://stat.ameba.jp/common_style/img/home_common/home/ameba/allskin/ico_kuchikomi2.gif)
「今度親戚の家の引っ越しを手伝ってくれって言われてるんだ」
「あらそう。良かったわね」
「いや、結構重労働だと思うけど……まぁバイト代は出るみたいだけどさ」
「あらそう。良かったわね」
「でも引っ越し業者に頼む費用を節約するために呼ばれてるわけだから、金額は期待出来ないだろうけど」
「あらそう。良かったわね」
「いや、僕にとってはあんまり良くないと思うけど……でも良く考えたら働いてお金を貰うのは初めてかもしれないな。子供の頃にお使いをした事くらいはあるけど、その時はお金じゃなくてお菓子を一つ買ったりする程度だったしな」
「あらそう。良かったわね」
「……日本で一番馴染みの無いアメリカの州ってメイン州かモンタナ州だと思うんだけど、どう思う?」
「あらそう。良かったわね」
「おい!話を全然聞いてないじゃないか!」
「あらそう。良かったわね」
「うっ、一体どうなってるんだこれは……どういうわけか言葉には反応しないんだろうか?よし、それなら……」
「……ちょっと、会話中にいきなり手を握ったりしないでちょうだい。私とあなたの関係性でなければ警察に逃げ込まれても文句は言えない事態じゃないかしら」
「お、ようやく反応してくれたか。会話中っていうか会話になってなかったぞ。それにお前の手だから握ってるわけで、僕は他の人の手なんて握らないし」
「まぁ、まともにあなたの言葉に耳を傾けてみたらウソをつかれただけじゃないの、失礼な。拍子抜けで身体や心まで傾いてしまったらどう責任を取ってくれるのかしら」
「え?ウソなんて言ってないぞ?どうしてそう思うんだ?」
「うるさいわね。どうせテレビやダンボールの取っ手を握って運んだり、服やお皿や本などの小物に指を絡めて運んだりするんでしょう?それどころかタンスや本棚を抱き締めて運んだりするに違いないわ、汚らわしい。二度と私に近寄らないでちょうだい」
「おい!テレビやタンスと手が触れてドキドキしてたらただの変態だぞ!そんな事言ってたら何にも触れなくなっちゃうじゃないか」
「うるさいわね。冗談に決まってるじゃないの。見過ごせば通り過ぎるような冗談にいちいち反応して必死に手を伸ばして引き寄せたりしないでちょうだい。そんな事より今日は何を話したいのかしら?一言も口を利かないから何をしたいのかさっぱり分からないわ」
「……やっぱり僕の言ってた事は全く聞いてなかったってわけか……?テレビとかダンボールとか言ってたような気がするんだけどな……えーと、とにかく今度の週末辺りに引っ越しの手伝いをするから、その日はひょっとすると会えないかもしれない、ってのを伝えようと思って……」
「あらそう。良かったわね」
「そ、そうか?僕としては会えないのは寂しいんだけどな……でもひょっとしたら夜には会えるかもしれないし、もしお前さえ良ければその時はフライドポテトでも食べに行こうか」
「あらそう。良かったわね」
「うっ、またこの状態に……どうしてちゃんと聞いてくれないんだ!?」
「うるさいわね。突然大声を出さないでちょうだい。突然手を握って突然叫んだだけじゃ何が言いたいのかさっぱり分からないわ。とにかく週末は私も一緒に引っ越しの手伝いをすれば良いんでしょう?ちゃんとそう言えば良いのよ。怒号や悪い言葉は耳には届かないわよ」
「いや、別に悪い言葉は言ってないような気がするけど……っていうかお前に手伝ってもらうなんて面倒な事はとてもさせられないぞ!」
「違うわよ。都合の悪い言葉はミニーには届かないわよ、って言ったの。どうして何の予定も無く一人で休日を過ごさなければならないのかしら、腹立たしい。私も一緒に行くわよ」
「そ、そうか?まぁ人手が多い方が助かるのは間違いないけどさ……ホントに手伝ってもらっちゃって良いのか?」
「ええ、あなたに色々運ばせていれば私は二人分のバイト代がもらえるんでしょう?何度でも行くわよ」
「それじゃ僕には何もメリットが無いじゃないか!」
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「ちゃんとクリック出来たらバイト代が出る事もあるかもしれないわよ」
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