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街区ごとのまとまり感の演出

ロンドンの住宅街は、街区単位のまちづくりがされ、街区単位でまとまった外観デザインが施されています。これは、17世紀後半に始まったイギリス独特の不動産開発業者による住宅開発の方式に起因しています。住宅街は、ほぼ街区ごとに、街区の中に建つ各タウンハウスの建築様式、外装材料、壁面線及び建物高さが統一されています。また、各街区に建つ戸々のタウンハウスには、他の街区とは異なる共通した外観デザインが施され、街区ごとにそれぞれまとまりのある街並み景観が形成されています。



1666年の大火以降、ロンドンのタウンハウスは、ロンドン産の黄煉瓦で建てられ、ほとんど装飾的表現のないプリミティブな煉瓦造様式でつくられていましたが、大英帝国の世界進出で隆盛を極めるに従って、ロンドンに人口が集中し膨張し始め、住宅の大量供給時代がやってきます。その時代を支えたのが勃興期(18世紀初頭~19世紀前半)のジョージアン・スタイルのタウンハウスであり、その後にやってきた最盛期(19世紀後半~20世紀初頭)のヴィクトリアン・スタイルのタウンハウスです。

チェルシー、ケンジントン、ノッティング・ヒル等の住宅街として比較的古くから開発されたロンドンの中心市街地近くの住宅街は、伝統的な建築様式のタウンハウスが非常に多く、そのほとんどが、ジョージアン・スタイルもしくは、ヴィクトリアン・スタイルで建てられています。


このロンドンのタウンハウスの二つの代表的建築様式の大きな相違点は、次の通りです。

ジョージアン・スタイルのタウンハウスは、プリミティブな煉瓦造様式の時代のタウンハウスと同じくロンドン産の黄煉瓦でつくられました。しかし、その頃からロンドン市民が豊かになって見栄を張る余裕ができたのか、煉瓦造であるにもかかわらず石造に見せかけて豪華に見せることが流行りました。

前期(アーリー・ジョージアン期)には、表通りに面したフロント・サイドのファサードの大部分は黄煉瓦積み面を残しますが、一部を石造りであるかのように見せかけるため、1階の外壁、窓の縁取り、パラペット等を部分的に白いスタッコで仕上げることが、流行りました。

そして後期(レイト・ジョージアン期)には、ファサード全体を石造に見せるため全面白いスタッコで仕上げることが流行りました。ジョージアン朝は、住宅を効率的に供給するため、同じ間取り同じ外観デザインのタウンハウスがつくられました。その結果、同じ街区に建つ各タウンハウスは、ほとんど同じ顔をもち、住戸ごとの識別がつかない程同じ外観デザイン住戸が続きます。



エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸-ジョージアン・タウン

■ ジョージアン・タウン





これに対して、ヴィクトリアン・スタイルのタウンハウスは、フロント・サイドのファサードが赤煉瓦で仕上げられています。赤煉瓦は、プリミティブ様式の時代にも使われていましたが、ロンドン以外で生産される赤煉瓦は輸送の困難さから高価な材料であったため窓の縁飾り等部分的にしか使われていませんでした。ところが、ヴィクトリア朝時代になるとロンドンをターミナルとする全国鉄道網が整備され、鉄道を通じて安価な赤煉瓦が利用できるようになったことと、ロンドン市民に黄煉瓦より高価な赤煉瓦を使用できるだけの経済的余裕ができたことも手伝って、ヴィクトリアン・スタイルのタウンハウスが生まれました。

また、その頃から、ロンドン市民がジョージアン・スタイルのあまりに住戸の個性が乏しいデザインに飽きたらなくなり、各住戸の差別化を求めるようになり、各住戸の外観デザインが、他の住戸とは異なるデザインが求められるようになりました。

しかし、ヴィクトリアン・スタイルのタウンハウスは、各住戸の外観デザインを過剰と思えるほど異なるものに変えたものとしていても、建築様式、外装材料、壁面線及び建物高さが街区単位で統一されているため、ジョージアン・スタイルに劣らず、街区ごとにまとまり感のある街並み景観が形成されています。




エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸-ビクトリアン・タウン

■ ビクトリアン・タウン



日本の住宅街の建築様式の不在

「ロンドンの大火」後のロンドンと同様に、日本も、関東大地震や東京大空襲後に発生した大火災による壊滅的な街並みの消失を経験しました。その反省から、日本も戦後、火災に弱い木造による街づくりをあきらめ、地震に強く、火災に強い街づくりを目指しました。その方針は1950年(昭和25年)に制定された建築基準法の中に規定され、街の不燃化、耐火化が図られることになりました。

また、戦後の高度成長に伴う、建築物の高集積化、大規模化の要求についても木造はその要求に応えられないことから、このとき以降、有史以来日本の街づくりの主役であった木造が、脇役に転ずることになりました。


街づくりの手法の大きな転換にあたって、ロンドンがそれまで育んできた伝統様式を継承し、その延長線上で街づくりを続けられたのに反して、日本は延長線上でそれができませんでした。このことが、日本の戦後の街づくりにとって大きなハンディキャップとなりました。日本にとって不幸だったことは、有史以来街づくりに主として用いてきた木造を脇役に追いやり、全く不慣れな構造方式を主役に仕立てて、戦後の新しい街づくりに臨んだことです。


 木造に代って街づくりの主役になったのは、鉄筋コンクリート造と鉄骨造です。しかし、その構造とその構造に合った建築材料は、日本人が慣れ親しみ育んできた木造のそれとは、建築材料の色合い、肌合い、特にディメンションが大きく異なり、住宅の需要者である一般の人々にも深く浸透していた木造建築に対する価値観をほとんど無にすることになりました。そして、本来なら構築しなければならない新しい構造方式よる建築様式が構築できないまま放置されました。住宅の需要者だけでなく、供給者である不動産業者、建築業者も住宅に対する確かな価値観をもつことができなく、混乱の中に放り出されました。

日本の新しい街づくりの門出にあたってもう一つの不幸が重なりました。不慣れな構造方式で新たな建築様式を打ち立てる間もなく、戦後の貧しい経済状況の中に街づくりに突入したことです。つまり、戦後の街づくりが、食うにも困るような経済状態で、とりあえず住宅を確保しなければならないという切迫した貧しい状況から始まったことです。住宅を確保するにあたって、建築材料に高価な本物を使う余裕がなく、薄っぺらな安価なまがいものの材料で間に合わせました。


それがそのまま習慣として定着してしまいました。まがいものでもそれが当たり前になりました。多くの人が、何が本物で何が偽物かを判別できないようになりました。


その結果、日本は戦後確たる建築様式をもつことができなかったため、住宅を建てるにあたり、(一部の伝統様式の木造住宅を除き、)使用する建築材料、その材料の使い方、建築形態等の選択の是非について、規範となるものがほとんどありません。建築基準法や消防法等の法令さえ充足すれば、そしてコストさえ許せば、住宅がどんな形でも、どんな建築材料を使っても許される状況になってしまいました。


それは、ロンドンのタウンハウスが、時代とともに育まれ、住宅の需要者である一般の人々が慣れ親しみ、その価値を認めてきた建築材料や建築様式をいまだに頑固に固持し、現在でもその規範の中で街づくりがされているのと、好対照を示しています。


それに比して私達日本人は、戦後以降、新しい建築材料に基づく建築様式を打ち立てることなく過ごしてきました。建築様式に昇華され、みんながよしとして共有する一定の建築材料やその使い方について規範となる価値基準をほとんどもたないまま、個々人が好き勝手に住宅を建ててきました。日本の雑然とした街並みはこの結果の表れです。この建築材料とそれに基づく建築様式の有無が、それらが織りなす街並みに圧倒的な差となって表れているのだと思います。



エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸-保土ヶ谷駅東口商店街

■ 保土ヶ谷駅東口商店街

   

  今日たまたま用事があって、横浜の保土ヶ谷に行きました。上の写真は、

  JR横須賀線保土ヶ谷駅東口駅前ロータリー前の建物の裏へ入った商店街

  の写真です。電信柱と電線と街灯のポールだけが見えて、建物の顔がよく

  わかりません。建物の高さ、外装材、外観デザインがバラバラで統一感が

  ありません。



エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸-ハイ・ストリート・ケンジントン駅周辺の商店街

■ ロンドン、ハイ・ストリート・ケンジントン駅周辺の商店街

  

  上の写真は、ロンドンの地下鉄サークル・ラインのハイ・ストリート・ケンジン

  トン駅周辺の商店街の写真です。商店街ですので、住宅街のように街区

  ごとの開発がされていないので、建物高さまでは統一されていませんが、 

  すべての建物が赤煉瓦づくりでビクトリアン・スタイルで統一されています。





エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸-保土ヶ谷駅東口駅前広場

■ 保土ヶ谷駅東口駅前ロータリー

  

  保土ヶ谷駅東口ロータリー正面の写真です。建物の高さも、外装材料も、  

  外観の色も、外観デザインもバラバラです。



エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸-保土ヶ谷駅西口商店街

■ 保土ヶ谷駅西口商店街

  

  建物の外装がどんな材料でつくられているか判らないほど老朽化した西口

  商店街の景観写真です。どの店舗もデザインらしいデザインがされていま

  せん。看板と暖簾だけでしか識別ができないほどどの店舗も無個性で、

  店舗の顔がはっきりしません。昭和30年代の日本が貧乏な頃に建てられ

  た思しき安普請の木造店舗が、軒を並べる商店街です。


エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸-保土ヶ谷西口住宅街1

■ 保土ヶ谷駅西口周辺住宅街ー1

  

 ◇ 建築基準法で定める防火構造にするため、外壁にトタン板(波板の

    亜鉛引き鉄板)張りにした木造住宅。建築基準法が制定・施行された

    昭和25年以降行われ始めた外壁の仕上げ方法です。

    この住宅は、トタン板の亜鉛メッキが腐食しペンキでカバーしたが、

    ペンキの塗り直しを長期間していないため、赤錆が全面出ている。

    屋根は長尺鉄板の瓦棒葺き。

  

  ◇ 写真右手前の住宅は、建築基準法が制定・施行された昭和25年

    以降、外壁仕上にこの地域では認められなくなった可燃材の木板が

    使用されています。建築基準法の施行以前には、この住宅に見られる

    木板を使った下見板張りの外壁仕上は、日本の木造住宅の外壁仕上

    として最も一般的な仕様でした。この家も長尺鉄板の瓦棒葺きです。

  

  ◇ 私は昭和21年生まれですが、私が生まれた我が家も、この住宅と全く

    同じ外壁仕上でした。但し、社宅の木造長屋であったにもかかわらず、

    この住宅の屋根よりずっと仕様のいい、三州瓦葺きでした。


エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸-保土ヶ谷西口住宅街2

■ 保土ヶ谷駅西口駅周辺住宅街ー2

  

  木造住宅ですが、防火構造にするため、建具以外の軒裏、外壁すべてが

  モルタルペンキで塗り固められています。


エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸-保土ヶ谷西口住宅街3

■ 保土ヶ谷駅西口駅周辺住宅街ー2


  

  ◇ 外壁が本物の木板の竪張りのように見えますが、木板に似せた偽物

    の建材張りです。この偽物の木板は、本物の木板のように味わいの

    ある灰色に変色することはありません。新築時の色と艶を残すところも

    ありますが、表面の木状に似せた薄い膜状の仕上げが禿げてしまって

    いるところもあり、自然の木板は老朽化してもそれなりに美しく見えます

    が、この新建材は、新築時が最も綺麗に見え古くなればなるほど醜く

    なっていきます。


  ◇ こんな小さな家で、屋根は長尺鉄板の瓦棒葺きのところもあれば、

    塩ビの波板のところもあります。外壁は、偽木板張りのところがあれば、

    塩ビの板のところもあります。窓も、木製建具もあれば、アルミサッシ

    もあります。新建材の偽物だらけの外装材と、チグハグな仕様が同居

    していても平気の平左です。日本の住宅街は、こんな組み合わせが

    いっぱいです。



エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸-保土ヶ谷西口住宅街4

■ 保土ヶ谷駅西口駅周辺住宅街ー3

  

  電信柱と電線ばかりがよく目立ち、建物の形も色も材料もばらばらの

  いったいどういった街づくりを目指しているのかよくわからない雑然とした

  街並みです。


エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸-保土ヶ谷西口住宅街5

■ 保土ヶ谷駅西口駅周辺住宅街ー4

  

  ロンドンのタウンハウスの特徴と、日本のタウンハウスの特徴を一言で

  表すと、ロンドンのそれは「重厚」、日本のそれは「軽薄」になると思います。

  ロンドンは地震がなく、日本が地震があるため、それぞれそういう特徴が

  出てくるのは、自然の成り行きだと思います。

  しかし、上の写真の光景を見ると、日本の街づくりは文字通りの「軽くて薄

  いこと」の意味ではなく、もう一つの意味合いでしか考えられなくなります。

  このバラバラな、安普請の偽物だらけの、「軽薄な街づくり」をしている

  私がその日本人の一人であることが恥ずかしくて仕方ありません。


エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸-保土ヶ谷西口住宅街6

■ 保土ヶ谷駅西口駅周辺住宅街ー5

  

  同じ「軽薄」でも、なぜ日本の戦前までの伝統的な街づくり、建物づくりが

  できなかったのでしょうか。日本人のセンスのなさに悲しくなってきます。

  上の光景は、あまりにもひどすぎます。












ロンドンのタウンハウスの建築様式

ロンドンのタウンハウスの優れている点の二つ目は、その多くが、古くから培われた組積造の伝統的な建築様式に則り、仕立てられていることです。


建築様式は、使用する建築材料や材料の使い方について、一定の決まりを定めています。この決まりが、タウンハウス戸々のデザインに共通の一定の縛りを与えてくれます。この縛りの効果で、たとえタウンハウスが個性を表現するためにそれぞれ異なる外観デザインを施しても、一つの建築様式で統一された街並みは、ある一定のまとまり感が形成されます。ロンドンには100年を超えるタウンハウスがたくさん残っています。それらの古い建築様式のタウンハウスが、今なお現役で市民の住まいとして役に立っています。それらは当然のことですが、そのタウンハウスが建設された当時に流行った建築様式で建てられています。



ロンドンのタウンハウスの建築様式には、時代ごとに代表的な建築様式がありますが、大きく分けて次の5つの建築様式に分類できます。



■ ロンドンのタウンハウスの主な建築様式


1) チューダー・スタイル(Tudor Style


 外壁部分が、塗り壁と木組みの対比が美しい木造デザイン様式。


  チューダー朝(1485年~1603年)時代の建築様式。





エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸-チューダースタイルのタウンハウス


2) プリミティヴ・スタイル(Primitive Style


  中世から現在まで続くロンドンの煉瓦造の原型的な建築様式。

  外壁にロンドン産の黄色の煉瓦を使い、装飾的表現が少ないシンプルな

  デザイン様式。


エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸-プリミティブスタイル


3) ジョージアン・スタイル(Georgian Style


    ジョージ王朝(1714年~1837年)時代の建築様式。

    外壁にロンドン産の黄色の煉瓦の上にスタッコを多用し石造に模した表現が

    施してあるデザイン様式。



エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸-アーリージョージアン


■ 上のタウンハウスは、1階基壇部分のみホワイト・スタッコで塗りあげ、石造に模

   し、2階、3階の外壁はロンドン産の煉瓦の素地が見えています。このスタイル

   が、大英帝国が隆盛を極め始め、ロンドン市民が豊かになりはじめ頃に、流行

   った建築様式です。プリミティブ・スタイルの煉瓦造のタウンハウスに飽き足らな

   くなり、少しお化粧をし気取った顔にしたくなった頃のスタイル、アーリー・ジョー

   ジアンです。



エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸-レイトジョージアン


■ 上のタウンハウスは、さらにロンドン市民が豊かになり、高級感を出すため、

   煉瓦造の外壁の上に全面ホワイト・スタッコを塗りたくり、石造に似せた

   スタイル、レイト・ジョージアンです。



4) ヴィクトリアン・スタイル(Victorian style


   ヴィクトリア朝(1837年~1901年)時代の建築様式。

  外壁に赤煉瓦を使い、過剰とも思える装飾的表現を施すデザイン様式。

  赤煉瓦は、イギリスのナショナル・レイルウエイが整備され、鉄道網を通じて

  ロンドン以外の産地の赤煉瓦が安い価格で調達できるようになった。








エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸-ビクトリアン





5)モダン・スタイル(Modern Style)


  現代様式



エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸-モダン






ロンドンのタウンハウスの優れている点

   今回も、ロンドンのタウンハウスと住宅街の街並みのすばらしさに圧倒されて

  帰ってきました。そして、ヨーロッパ旅行から帰るといつもそうなるのですが、

  日本の住宅と街並みの薄っぺらさ、貧弱さに今更ながらに落胆しています。

  特に住宅街の街並みのロンドンと日本の歴然たる格差については、その差を

  埋める手立てのなさに暗澹たる気持ちになります。

 この格差を少しでも縮める手だてを考える糧になればと思い、何回かの旅行で

 見て廻ったロンドンのタウンハウスの開発と設計の手法を分析し、その格差が

 なぜ生じたのか考えてみました。


 ロンドンのタウンハウスが日本のそれと比較して、れている点については、

 次の4点に要約できると思います。

 

 (1) その土地で産出し、古くから人々に親しまれてきた建築材料が使われて

     いること

   (2) 建築様式をもった建て方がされていること

   (3) 街区ごとに外装材、建築様式、壁面線、建物高さ、外観デザインを統一

       した建て方がされていること

(4) 長持ちする建て方がされていること


(1) 歴史のふるいに掛けられた材料の使用



第一に挙げなければならないことは、ロンドンのタウンハウスが、日本のそれと比較して圧倒的に色合い、肌合いとも優れた外装材料を使用していることです。また、その材料の種類が非常に少なく、限定されていることです。



ロンドンのタウンハウスの外装に使用されている材料は石、スレート、煉瓦、スタッコ、木、ガラス、鉄の天然材料、又は手作り的風合いをもつほぼ7種類の材料に限定されています。現在の日本のタウンハウスのように大量生産の工業製品的風合いをもつ材料はほとんど使われていません。外装材料は、ロンドン又はロンドン近郊で産出し、古くから人々が住まいの建築材料として慣れ親しみ、使われ続け、生き残った材料、つまり、歴史の篩に掛けられた伝統的な材料に限定されています。その種類も現在の日本の住宅と比較して圧倒的に少なく、タウンハウスの外装を構成する部材一つ一つが厳選された材料で仕立てられていることです。ローコストで仕立てられたと思しきタウンハウスでも、この原則は厳格に守られています。



一方、日本のタウンハウスの外装材料は、日本古来の天然材料や伝統的な材料が使用されることが少なく、表面だけそれらに似せた擬似材料が多用されています。その種類が多種多様で、近年はますます、まがいものの氾濫と言っていいほどの景観を呈しています。その疑似材料も、表面だけ天然材料の風合いを似せるだけで、本来の材料のもつ厚みやサイズを無視し、ほとんどが一見してまがいものであることがわかる材料です。こういった見せかけだけ真似た材料でできあがったタウンハウスは、天然材料や伝統的な材料の本物に比べて、色合い、材質感が劣り、新築時は一見綺麗に仕立てられているように見えても、年月が立つにつれて材料本来の薄っぺらさが露見し、醜くなってきます。

ロンドンの住宅街が100年を超えるタウンハウスが立ち並んでいても、今なお美しい状態を維持し、年を経るごとに美しさが増すのに比べて、東京のそれと恐ろしいほどの対照を見せています。



エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸-レイトジョージアン

■ ナイツブリッジのタウンハウス

  煉瓦造で石造に見せるため全面ホワイト・スタッコで塗り固められた

  レイト・ジョージアン・スタイルのタウンハウス








マンション建替えの成功事例

■ マンション建替えを成功させる事業手法

 

   このマンション建替えにおける「建替え事業資金の調達」という最大の障壁を取り払い 

   もしくは障壁の高さを低くできる事業手法がある。それは、建替え前のマンションに容積

   の未消化部分があったり、総合設計制度を適用でき、基準容積率以上の割増容積

獲得できる建替えマンション計画の事業手法である。

  

   こういった事業手法が適用でき、立地がよいマンションの場合には、管理組合員以外

  の第三者の不動産事業者が建替事業に参加することが望める。その不動産事業者

  が建替組合員の一員になり、各区分所有者に代わって、未利用容積または割増

を活用し、各区分所有者が建替え後のマンションで取得する床(権利床)以外に

  権利者以外の一般に売る床(保留床)をつくり、その床の売却収入を建替えマンション

  の建設コスト等の事業費に当てることができる。

   

   こういった手法が適用できる事例では、各区分所有者は、建替え後のマンション

  おいて、建替え前のマンションで保有していた床面積以上の住戸を、自己負担なしに

  取得できる場合が多い。また、懐に余裕がある区分所有者は、その懐具合に応じて

  自己負担でさらに保留床を買い増しし、建替え前のマンションより広い床面積の住戸

  を取得している。こういった事業手法をとることにより、「マンション建替えの要点ー1」に

  挙げたマンション建替えを難しくしている「建替え資金の調達」と「各区分所有者の

  経済状況に個人差がある」という二つの障壁を同時にクリアしてくれる。

   

このマンション建替えを阻む最大の障壁をクリアさえすれば、「組合員間の要求事項

食い違いや考えが異なる」という障壁はさして大きな障壁ではない。建替えに伴う

自己負担の問題さえ解決できれば、組合員の間で協議を重ねれば自ずと解決できる

問題ある。しかし、多大な自己負担を強いる建替え事業の場合には、さして大きく

ない問題でも小さな意見の食い違いが大きく取り扱われるようになり、調整がつかない

建替え決議に至れない事態を招来する恐れが非常に高い。




■ マンション建替えの成功事例




   下の表は、マンション建替えが成功した事例リストである。下表の緑色、黄色、水色

  の列の各数値は、マンション建替前の容積充足比、マンション建替後の容積充足比、

  建替後/建替前の容積倍率を示す。

   下表の最後の行(黄色)は全物件の平均値を示すが、建替前の容積充足比が

  0.37、建替後の容積充足比が1.08、建替後/建替前容積倍率が3.15と

  なっている。

   つまり、マンション建替えに成功している事例は、建替え前の基準容積に対する

  容積の充足比が平均で37%しかなく、未利用容積比が63%もあったことを示す。

  住宅系用途地域の場合基準容積率が200%のところが多いが、63%×200%

  =126%も未利用容積率があったことを示す。

  また、建替後/建替前容積の平均倍率が3.15という数値を示すことは、建替えが

  成功したマンションにおいて、建替え前より建替え後のマンションの容積対象床面積が

  3倍以上増えたことを示している。

   

   黄色の列の建替え後の容積充足比は、総合設計制度を適用しない場合には、

  1.0に限りなく近い数値になるが、この列の数値の中で、1.0を超える数値を示す

  建替えマンション計画は、「未利用容積」があっただけでなく、総合設計制度適用し、

  基準容積以上の「割増容積」を獲得している事例である。この数値が大きければ

  大きいほど、建替え前のマンションの区分所有者は、建替え後のマンションにおいて、

  自己負担なしに、建替えマンションで所有していた専有面積以上、かつより多くの

  専有面積の住戸を獲得できる。



エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸-建替え事例1


エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸-建替え事例2


エンドウ・アソシエイツ加藤峯男の無陸-建替え事例3