「二人がいるからそれで私の世界は満ち足りてるっていうか‥
ううん 二人さえいれば別になんにもいらないかな?」
沢渡さんを攻略する方法
森田ゆき・ちゃおコミックス
(ちゃお掲載)
★あらすじ★
沢渡瀬奈さんは小さな世界に住んでいる女の子です。幼なじみの須賀航太くん、田所一花さんさえいれば幸せ、その他の人はいらないなあ、と思っていました。
ところがそんな沢渡さんに、中谷くんという男の子が突然告白してきました。沢渡さんは自分の世界に余計な人が入ってきて「困ったな」と思うのですが‥?
ちゃおで正統派を貫き通す新鋭、森田ゆきの最新作。
☆☆☆
森田先生は全体的には地味な作風の持ち主ですが、読みやすい割に主人公が抱えるささいな悩みをうまく引き出す才能がある方です。ちゃおは読者年齢の低い雑誌ですが、最近本格的に恋愛や人生について描く漫画が増えてきており、毎月とても楽しみにしています。
で、この漫画なのですが‥本誌で読んだとき、「花ゆめ読むよりタメになるんじゃないの」と感じました。
いや、自分としては「花ゆめに対する問題提起」かもしれないと。
主人公の沢渡さんはとにかく、非常~にヘンな女の子です。高校生にもなって航太と一花しか友達がいない。しかし「それで満足」なのです。人見知りで人間関係が苦手というのが根本にあるのですが、「満足」という二文字でそれを見ないようにしている向きはあります。
満足してしまえば、ソレ以上を求める必要はないですからね。
ところが、中谷望が沢渡さんに一目惚れしていきなり彼女のテリトリーに入ってきてしまう(告白を断ったのに近づいて来る)。
航太と一花以外の人間は基本怖いし、テリトリーを壊されたら嫌。沢渡さんはイライラしてしまいます。しかも中谷くんはちょっと空気が読めないというか、三人とはリズムの違う子です。
テリトリーを気にしているのは沢渡さんだけで航太と一花は中谷くんを歓迎しているのですが、一話目の昼食シーンはゾッとします。
エビフライにはしょうゆだと決まっている。一花はトマトが嫌いなので端に寄せるが、沢渡さんは好きなものを端に寄せる癖がある。そのルールを全く知らない中谷くんは沢渡さんに怒られてしまいます。
表向きは「暗黙の了解」を行う三人の仲良さを表すイベントに見えるのですが‥三人を外から見たら気持ちが悪いのです。
この後、航太に好きな人がいると分かった沢渡さんがショックを受けます。沢渡さんは航太が好きだし、航太に彼女ができたら世界が壊れると思ったから。
沢渡さんは小さな世界を守るため、中谷くんに相談するしかなくなってしまいます。
そしてだんだんと、沢渡さんの世界観が変わっていくのですが‥
モノローグが平易で読みやすいわりに、沢渡さんが中谷くんを好きになっていく過程が素直でなく面白いです。恋愛を通し不器用なりに成長する姿が三回連載96ページでコンパクトに収まっています。
ちゃおのレーベルに惑わされずどんな年齢の方にも買ってほしい名作です。
~さて、ここから先は花とゆめ読者ブラウザバック推奨です~
☆☆☆
まあ前々から言ってますが、自分は花とゆめの漫画が(一部を除き)好きじゃないのです。
理由
☆主人公が友達(幼なじみ率高し)等のテリトリーに固執している。みんながみんなを好き過ぎて同性同士であろうとスキンシップが激しい
☆テリトリー以外の人間関係は描写されない、もしくは敵対関係
☆テリトリー内の友情が絶対であり、壊したらみんなで鬱になる
☆物心がつかない時から一緒にいる、というもろい絆にすがりつく(兄弟、家族のケースも多い)
☆外の世界に目を向けようとすると中の誰かが縛り付けようとする、もしくはだだをこねる。仕方がないので戻ってそいつを慰める
花とゆめを好んで読む人がそういう「固い絆」に憧れるからなのか、とにかくこのテの漫画が多いです。同じラインに並ぶ少コミ、マーガレットに「エ ロ描写」があろうとも、自分としては花ゆめの漫画の方が有害ではないかと心配になります(花より男子はよく「恋愛インフレ漫画」と呼ばれますが、花ゆめの漫画は長続きすると「友情インフレ漫画」になります。恋愛インフレを嫌う漫画好きがそちらに動きやすい。他にも「さんすくみ」あたりはそういう内容。他社の上位雑誌でもこの流れが引き継がれている)。
その点で、「沢渡さん~」はこのテリトリーを自分で壊していこう、壊しても変わらない絆があるんだよという主題が入っています。
幼年雑誌、しかもちゃおなんですけどね。
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