「うん。不動産の担当者から場所聞いたから。」 | THMIS mama “お洒落の小部屋”

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好きになれない。  vol.272.

ドキドキ 吉竹、部屋の外でスマホに、
「あ。そっか~~。」
斜め向かいの部屋から一組のカップルが出て来て、電話をしている男性を見て、歩き過ぎる。
吉竹、そんな男女をチラリと見て、スマホに、
「…で…???…今は…???」

タクシーの中で佐津香、スマホに、
「今、タクシーの中、もぅ、走っちゃってる。」

「…と、言う事は…。」
「うん。不動産の担当者から場所聞いたから。」

スマホから吉竹の声。
「なるほど…。」

数秒、沈黙…。


吉竹、壁に背中を付けて話していたが、
いきなり離れて今度は通路の真ん中で仁王立ちになって、左脇腹に左手を、
「…ってか、ちょっ…、佐津香さん…???…まさか、佐津香さんひとりで…???」

その声に菜帆子と順平、クスクスと。
「な~~に言ってるかな~~。佐津香さんひとりで出来る訳ないじゃん。」

スマホから菜帆子の声。吉竹、耳からスマホを話して、
「はっ…???…菜帆子…???」
そしてまた耳にスマホを。
「菜帆子…???」

菜帆子、スマホに、
「当たり前でしょ。」

順平、
「俺もいま~~す。」

スマホから、
「順平…。…おま…。俺より先に店から…。」

佐津香、
「あんたが電話に出てくれないから、順平に電話したのよ~~。」
そう言いながら佐津香、順平を見てニンマリと。

順平両眉を上下に。

「10分で飛んできてくれた~~。彼女、ほったらかしにして~~。」

菜帆子、その声に思わず、右人差し指を鼻に、
「くくくく。」

順平は、思わず、
「ぷ。」

吉竹、下唇をビロン。そして、
「ふ~~ん。…な~~るほどね~~。…それにしても…。…小埜瀬…さん…がな~~。」

菜帆子、
「店の中のトイレの前で腰を下ろしてたの~~。」

「店のトイレの前。」

佐津香、
「相当、飲んでたんじゃないの~~。…って言うか、吉竹、門倉で一緒に食事してた時はどうだったのよ。小埜瀬さん。」

スマホから、
「いや。全然、そんな…、酒に弱いなんて…。…って、そもそも小埜瀬さん、大学時代にはラグビー。それに…、卒業後もスポーツ関係のトレーニングセンター勤務。営業職だぞ~~。そんな…、酒に弱いはずが…。」

瞬間、佐津香に菜帆子、順平も、
「うっそ。」
「へぇ~~~。」
「そうなんだ。」

佐津香、
「初めて聞いた~~。」

吉竹の声、
「…ってか、話してねぇし。」

佐津香も、顎だけチョコンと前に、
「確かに。…と言うものの、私も小埜瀬さんとは仕事でも、全く、話すこと、なかったしね~~。まぁ、ミーティングでなら、話は聞いているけど…。その程度。」

そして佐津香、
「そっか~~。大学でラグビー。がたい、いいはずよ。」

佐津香の右で順平と佐津香に密着するように眠っている小埜瀬。

「…で…???」
吉竹、
「今、小埜瀬さん、どんな感じ…???」

小埜瀬を見て佐津香、
「私の隣で私と順平に挟まれて寝ちゃってる~~。」

いきなり、
「部長~~~。何してるんですか~~???…こんなところで~~。」
耀である。

佐津香と菜帆子、
「おっと。耀の声。」

吉竹、慌てて、
「いいから。おま…、トイレ…???はいはい。どうぞ、どうぞ。行ってらっしゃ~~い。」
耀の右肩に左手を、そしてトイレの方に押しながら…。

耀、吉竹を見ながら、
「かかかかか。奥様だぁ~~。」
そして思わず体を僅かに前に傾げて、口に右手を、
「シシシシシ。」

菜帆子、その声に、両手を叩いて、
「かっかかかか。おっかし。」

順平も、
「くくくくく。」

佐津香、変顔で、
「まっ。確かに。耀には、そんな風に見えるか~~。…でぇ~~。」

吉竹、体を戻して、
「はい。」

「そんな訳で、今、タクシーで小埜瀬さんの家、向かってる~~。運転手さん、あとどのくらい…???」

運転手、
「あ~。はい。そんなに掛からないかと…。ここまで来ましたから。」

佐津香、スマホに、
「だって~~。聞こえた…???」

吉竹の声、
「あぁ~~。はい。うん。分かりました。」
 

「…で…。…着いたら菜帆子と私、順平とで家の中まで。…そこって、一軒家…???…だよね~~。何号室なんて、不動産の人、言ってなかったから~~。」

吉竹、また壁に背中を付けて、
「あぁ。うん。一軒家。仙台の上司の知り合いの人じゃないかな~~。東京の人なんだそうだけど…。会社に近い物件、探してくれたそうだ。運よく、アパートより、こっちの方がいいかもって…。まっ、ちっちゃな家らしいけど…。何と破格の…。家賃、5万。」

瞬間、菜帆子も順平も、
「凄~~~。」

菜帆子、
「私なんて、10万よ。」

順平、
「俺は8万。」

佐津香、口を尖らせて、
「ふんふん。確かに…。安いわ。はははは。まっ。とにかく、アパートだったら、階段、大変だと思って。」

菜帆子、頷きながら、
「確かに。」

順平も頷いて、
「なるほど。」

佐津香、
「私と菜帆子だけでも無理だったから。」

順平、また頷いて、
「ま。確かに。」










好きになれない。   vol,089.  「うん。不動産の担当者から場所聞いたから。」

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