我妻榮著「民放総則(民法講義Ⅰ)」(岩波書店刊行)が私の書棚にある。
箱付きで昭和26年発行で、9刷の本で昭和36年発行とある。
この本は法律学習の本として最初に購入した。
神田の古本だった。
その理由は「時効制度」のことを知りたかった。
なぜ、時効なのか。
その元の理由は母方の祖父の所有権問題を学ぶためだった。
佐世保市内の清水町に私の祖父は住んでいた。
そこには木場田町から戦後移転し、クリーニング屋を営んでいた。
ところがその土地の購入代金がもともとの所有者に入っていない。
第三者を介して土地を購入したのだが、その代金を持ち逃げされたという。
それは犯罪だが、祖父は購入した土地を自己の土地として平穏、公然と占有を10年続けた場合とあった。
ただ、その物件は登記がされていなかった。
当時は戦後20年が経っており、祖父に悪意による占有の証明がされたとしても時効が成立している。
私が大学で法学部に入ったのだから、何か役にたちたい。
そんな思いがあったことを覚えている。
たしか東京の元の所有者宅を母が訪ねた際に、私も同席した。
結果して、その問題は解決。
私は何の力にもなれなかった。
その土地は現在10台程度の駐車場になって、叔母が管理している。
私にとっては法が使われる社会の入口に立ったことだ。
法の世界は深く難しいことだと感じていた。
50数年前にそんなこと思い出させた貴重な図書である。
今のNHKの朝ドラ~虎に翼~は、昭和初期の法曹に関わる学生を描いている。、私なりに、かつての学生気分を思い出している。
今日は母が残した広田町の224平方メートルの土地登記が完了した。
そんな情報を佐世保に住む妹からもらった。
4月中旬に法務局に関係資料を持ち込んだ。
若干の資料が不足していたが、私に関する土地の相続移転登記が終わった。
そんな知らせを受けて、戦後の混乱の中で祖父が登記をしていなかったことで、その子どもたち(私にとっての母や伯父、叔母等)が苦労したことを思い出している。