第2次大戦後毛沢東により建国されたのは共産主義を目指す国家であったのだが、

これは“大躍進”そして“文化大革命”という2度の失敗を経て、

狭義の共産主義の試みは終わりを告げた。

 

1980年代に鄧小平の指導する“社会主義市場経済”国家が現れて、欧米の資本主義に近い政治経済体制へ変更されて改革開放の思想のもと高度経済成長へと繋がっていった。

欧米日先進国はその穏健な政治体制に安心して中国を仲間として受け入れて、世界の工場として活用する傍らで技術移転も同時に進めることによって現在の中国の繁栄をもたらした。もちろん中国自身の努力の賜物ではあるが、その基礎は欧米日の善意或いは油断そして目先の利益優先によるものだった。中国は積極的な技術移転を進めて、1を聞いて10を知る成長ぶりと時折見せる凶暴さに欧米日は疑念を抱き始めた。

 

2012年に就任した習近平総書記は露骨に“中国の夢”を語り始めた。中国の夢とは言い換えれば世界覇権の確立であり、アヘン戦争を仕掛けて中国(清)を没落させた欧米日への復讐と言える。当面は2大大国としてアメリカとの世界分割統治、その先に決戦に勝利し世界制覇を狙うものだろう。中国がまずその版図としてとらえているのが、アジアそしてアフリカだと思われ、それは一帯一路構想の対象地域であり、非民主主義諸国の盟主となることだろうか。中国はあからさまに遅れてきた帝国主義を実践し、習近平は皇帝のように振る舞っている。

 

新型コロナウィルスはその感染特性からみて、白人を狙った生物兵器として開発された可能性が高いと思っているが、市中に漏れ出たのはミスだったのだろう。それでも強権を使って感染拡大を抑え込んだ中国流に対し、欧米は制御に四苦八苦して、政治体制としての中国流の有利さが認識され、「自分たちこそが最強である」との思いを強くしたのではないか。

 

中国がここまで発展できたのは(移植された)科学技術のおかげであるのだが、この科学技術は自由や資本主義との相性が良い。自由な発想や交流がなければ科学技術は進化しないし、お金儲けの慾がそれを後押しする。鄧小平以来30年以上中国がやってきたことは、できるだけ自由でお金儲けができる環境を整備して、外国人や華僑を呼び込み、中国本土の若者にも夢を与えることであり、その結果として今日の発展に至ったのではないか。

アメリカで学んだ留学生たちはその習得した知識を中国に移植することによって、アメリカンドリームを中国で実践していった。模倣だが、なにせ14億人の国だからその成果は莫大だ。

しかし国内で独裁的地位を確立した習近平主席は毛沢東思想への回帰を鮮明にしている。これは何故なのだろうか?

 

彼が今やろうとしていることは、鄧小平路線を転換して毛沢東路線へ回帰させることのように見えるが、何のメリットがあるのか?毛沢東の思想とは自身の神格化とイデオロギーの強制そして自由を奪うことだ。ここから見えるのは、習近平自身が第2の毛沢東として絶対的な皇帝として君臨することではないのか。そうなると彼は第2の文化革命をやるかも知れない。現在の香港やウィグル問題もそうだし、アリババや適適への攻撃も自由を奪って自身を神格化させるためにやっている可能性がある。毛沢東は何千万人もの人を死に追いやったが、習近平も同じことをするかも知れない。

まったくとんでもない男をリーダーにしてしまったようだ。

 

しかし自由を奪う行為は習近平にとってもろ刃の剣でもあるだろう。

中国人も改革開放の時代に自由の心地よさを知ってしまっているし、高官子弟の多くがアメリカに留学して自由を感じてしまっている。

彼らは口に出しては言えないにしても、心の中では自由な社会を求めている。

彼らの多くは習近平一派による粛清を恐れてものが言えないけれど、本音では欧米のような生活にあこがれていて、いつでも逃げ出せる用意をしている輩も多い。また習近平一派によって粛清された人は数百万人に及び、その家族たちはさぞかし恨んでいることだろう。実際には少しでも手を緩めれば、反撃を狙っている集団や個人は数多くいるはずだ。チベットやウィグルや香港だけでなく、法輪功やキリスト教の信者たちもそうだろうし、軍隊の中にも快く思ってない人もいるだろう。だから彼はずっと押さえ続けるしか地位を守る方法がないと知って、皇帝になってしまったのではないか。あのトラもハエも叩いた王岐山は表舞台からすっかり消えてしまったが、彼は今一体何を思っているだろうか?

経済についても自由を制約した中ではこれ以上の発展は望めないのではないか。

 

習近平はちょっとでも隙を見せるとすぐにでも足元をすくわれかねない危険と隣り合わせにあるといってよい。

また対外的にはグレーゾーン戦術はとれても、正面からアメリカを敵に回す戦争を仕掛ける戦略はとれないと思う。実戦経験がなく模倣した信頼性の低い武器しか持たない人民解放軍はアメリカを恐れている。

 

アメリカはまっすぐに中国と対峙して圧力をかけ続ければ、そのうち内部崩壊を招くと考えているのではないか。持久戦を覚悟しながら当然反体制派を静かに支援していることだろう。

習近平の中華は案外もろいのかも知れない。