過去の投稿で繰り返し腕振りの仕方について考察しました。肘を引くのではなく、振り出す意識で腕を振るのが正しいと結論付けています。

 

 

 

この内容についてあらためて考えてみたいと思います。すでに説明をしていますが、アフリカ人ランナーの場合は肘を引いたときと前方への振り出しの際に角度が小さくなります。日本人ランナーの場合は角度が大きくは変わりません。詳しくは説明しませんが、力の入れる(抜く)タイミングが違っていると推測しています。また、角度自体も日本人の方が全般的に大きくなっています。

 

忘れてはいけないのは左右の腕振りは連動しているということです。腕振りについて、様々な方が自身の考えを述べられています。下半身の連動や左右差については様々な意見を確認することができますが、この視点は完全に抜け落ちているように思います。

 

※冒頭から1分30秒過ぎ

 

この動画はキプチョゲ選手が非公式ながらマラソンで2時間を切った時のものです。ウォーミングアップの走りを確認することができますが、腕振りの動きがよくわかると思います。

 

スピードが速くないせいかどの選手もコンパクトに腕が振られています。動きをよく観察してみると、拳が一番引かれた時に一瞬止まり、切り返すように前に振り出され、拳で太鼓をたたくように振り落とされているように見えます。

 

アフリカ人ランナーに共通する動きだと思いますが、肘を引いているようには見えません。重力に逆らわずに腕を落としているだけのような気がします。ただ、左右の腕は連動するはずなので、腕を振り出せば反対の腕は振り落とす動きは少なからず入る可能性はあります。

 

力を入れるタイミングが拳の一番引かれた時と仮定すると、反対の腕は拳が一番上がった時になります。力が入るのはほんの一瞬で、他のタイミングではほぼ力は入っていないと思われます。特に、先の動画キプチョゲ選手を含めたランナーの肘は引かれたときには完全に脱力しているように見えます。

 

ランニング指導者の中にも肘を引くことが、正しいフォームのポイントといわれている方が相当数います。肘を引くということは力を入れることになりますので、アフリカ人ランナーとは正反対の動きといえます。確かに日本人の実業団ランナーにもそのような走りをしているケースがあるのは事実です。

 

ただ、アフリカ人ランナーでは肘を引くような腕の振り方をしているのは皆無といっていいと思います。最終的にはどちらが効率よく走れるかになりますが、結論ははっきりしているのではないでしょうか・・・

たまたまになりますが、2023年の世界クロスカントリー選手権の動画を見ることになりました。この動画を見て、アフリカ人ランナーと日本人ランナーの走力の差を実感せざるを得ませんでした。

 

 

 

今年の大会では、東京オリンピックマラソン代表の服部勇馬選手の弟である弾馬選手がスタート直後に先頭を引っ張りましたが、その後は徐々に遅れだし後半は画像に映ることはありませんでした。

 

日本人トップは吉田圭太選手の77位になりますが、トップの選手とは4分40秒と絶望的な差です。過去の大会でもここまで差が広がったことはありません。

 

 

 

2006年まではショートとロングの2種目に分かれていましたが、2007年より一本化されています。過去の2007年以降の大会結果を調べてみましたが、優勝者のアフリカ人選手との走力の差は歴然としています。一番順位の良かったのは2011年の田村優宝(日本大)の44位、トップとのタイム差が一番少なかったのは2009年の石川末廣選手(ホンダ)の2分9秒差です。

 

2017年よりコース距離が12キロから10キロと変更になっていますが、記録差は縮まるどころかむしろ開いているといえます。なぜこのような差が出てしまうのでしょうか?この理由についてはいろいろな要素がありますが、自分なりに考えてみました。

 

まずはコース状況の状況です。日本のクロスカントリーの大会では走路は芝生の場合が多いと思います。今回の走路はかなり荒れており、芝生が生えているように見えるもののいわゆるダートといっていいと思います。足を取られるぬかるみも見られました。

 

さらに垣根の細い通路やタイヤの障害物でジグザグにし、あえて1人しか通れないようにした箇所も設けられていました。起伏も日本の大会よりは激しいといえます。

 

普段から路面の荒れたコースで走っているアフリカ人選手にとって影響はないといえますが、アスファルトロードやトラックでの練習が中心で、悪路での走行に慣れていない日本人選手にとっては難コースといえます。

  

このようなコースでは必然的に走るペースが変わることになりますが、ペース走主体の練習では対応できないといえます。参加した日本選手がどのような練習をしていたかは不明ですが、ペース変化を意識した練習を取り入れているケースは少ないのではないでしょうか。

 

また、アフリカ人選手のほとんどがいわゆるトレーニングキャンプでの練習を行っており、常に他の選手と競争する環境に置かれています。日本の場合は選手数自体が少なく、個別メニューをこなしているケースもあります。競り合いに慣れていないということもあるよう思います。

 

これらのことを総合していえることは、走りに柔軟性がないということだといえます。どうしたらアフリカ人ランナーとの差が縮まるのか?簡単な話ではありませんが、発想の転換が必要だと思います。

 

 

 

その意味では田中希実の取組みが参考になります。今回田中選手は女子シニアの10キロに出場していますが、トップと1分20秒差の14位に入っています。

 

 

 

田中選手はプロランナーになったばかりですが、ケニアでの合宿の経験が大きく影響したようです。従来の陸上長距離界のセオリーから外れた取り組みをおこなっています。常識にとらわれない発想を実践しているといえます。

 

日本人がアフリカ人の走力の差を埋めるために必要なものは何か?非常に大きな課題です!

ランニングでストライド走法といえば、歩幅の広い走り方ということになると思いますが、定義は曖昧な気がします。

 

ストライド走法の定義は身長より歩幅が広いというのが、ある意味わかりやすく妥当と考えていいのかもしれません。男子の競技選手の場合、トラックレースではほぼ身長より歩幅は広いと考えてよいと思います。女子の場合はピッチ走法が多く、該当しないケースが多いかもしれません。

 

 

 

市民ランナーを考えた場合は、自身の身長より大きな歩幅で走ることのできる方は少数ではないかと思います。走るスピードによりストライドは既定されてしまうので、ある程度早いペースで走ることができないと実現できないことです。

 

 

 

 

 

非常に興味ある動画がありました。板橋シティマラソンでのペースの違いによるランニングフォームについて解説されています。それぞれのペースのランナーのピッチはそれほど変わりません。スピードの差はストライドということになります。

 

 

 

見た目でわかりますが、タイムの速いランナーと遅いランナーのランニングフォームのはっきりした違いは後方に運ばれた踵の高さになります。キロ3分台で走っているほとんどランナーは脛の位置が地面と水平以上に上がっています。キロ4分以上のランナーの大半は脛の位置が地面と平行になる前に振り出されています。

 

この動きと連動するといえますが、踵の位置が低いランナーほど上体が起きています。原因としては脚を前に運ぶ意識が働いて、重心が後ろに残っているためだと思われます。蹴り出された踵がスピードの速いランナーより、速く前方に運ばれています。バランスをとるために腕振りの位置も低く、手を後ろに引く傾向が強いように思います。

 

単純に走行速度の差によるランニングフォームの違いともいえなくもありませんが、走るときの意識の問題もあるように思います。本来は踵を後方へあげる高さはコントロールすることなく、自然に上がる必要があります。踵が一瞬止まり、その後前方に運ばれるイメージです。ただ、脚を前に運ぶ意識をすると、踵が完全に上がる前に振り出すことになります。ストライドが伸びない、チョコチョコ走りになってしまいます。

 

踵がある一定の高さまで上がらなければ絶対にストライドは伸びません。ストライド走法を実現するためには、脚を前に出す意識を捨てる必要があると思っています。

陸上通の方であればポール・チェリモ選手とバーナード・ラガト選手とのことをご存じかと思います。

 

 

 

3月30日にもチェリモ選手についての投稿していますが現役ランナーです。バーナード・ラガト選手はすでに引退しています。この2人にはいくつかの共通点があります。

 

まずは2人とも元々はケニア人であるということです。チェリモ選手は2014年に、ラガト選手は2004年にアメリカに帰化しています。

 

身長はチェリモ選手が174センチ、ラガト選手は175センチとほぼ同じです。5000mを中心に競技に取り組んでいたことも共通しています。

 

両選手の年齢差は16歳あるので、この両選手が競り合うことは通常では考えにくいと思います。ところがこの両選手は2016年の全米選手権の5000mで対決しています。

 

 

 

 

 

この時ラガト選手は41歳です。スローペースで進んだレースですがラスト1周を52秒台で走り、早めにラストスパートを仕掛けたチェリモ選手を抜き去り優勝しています。チェリモ選手とともにリオオリンピック代表権を獲得し、5度目のオリンピック出場を決めています。

 

 

 

リオオリンピック本番では両選手とも順調に予選を通過し、決勝では終盤まで先頭集団に残り、チェリモ選手は銀メダルを獲得し、ラガト選手は5位に入賞しています。この大会はチェリモ選手にとっては初めてのオリンピックであり、ラガト選手にとっては最後のオリンピックとなりました。

 

チェリモ選手は2016年の東京大会にも出場していますが、両選手のオリンピックでの順位をまとめてみました。

 

 

ラガト選手はケニア代表として1500mで銀メダルと銅メダルを獲得しています。種目は異なるものの、奇しくもチェリモ選手と同じです。これも共通点ということになりますが、残念ながら両選手とも金メダルには手が届かなかったということになります。

 

チェリモ選手は競技を続けていますので、金メダルを獲得できる可能性は残っていますが果たして・・・

一昨日の投稿で触れましたが、ランニング関係のメルマガの配信に小指側から強く入って親指側に倒れる接地は無駄な時間を使い、スピードを上げることはできないと書かれていました。

 

接地はフラットが正しいということが前提だと思われます。ただ、冒頭の投稿でも触れたように、アフリカのトップランナーでもこの記事で問題とされる接地をしているのを少なからず見られます。

 

 

 

 

マラソンの世界最高記録保持者のキプチョゲ選手も小指側から強く入って、そこから親指側に倒れる接地をしています。さらに左右ともつま先が大きく開いて着地しています。すでに指摘がされている方がいますが、他の選手にはあまり見られない特徴です。

この原因について考えてみたいと思います。

 

まずは足のつま先が開いた状態でフラットに設置できるかです。自身でやってみるとわかりますが、膝が完全に開いてしまいます。いわゆるガニ股です。無理に正面に向けると膝が内側に入りに大きなストレスを感じることになります。

 

私の推測になりますが、キプチョゲ選手は股関節の可動域が狭いのではないかと思います。あくまでも推測なりますが、股関節の外旋内旋の動きがよくないために、足のつま先を広げて着地することで動きを補っているのではないかと思います。

 

 

※2分30秒、16分40秒、19分55秒過ぎ

 

この動画は非公認ながらキプチョゲ選手がフルマラソンで2時間を切った時のスタート前の様子を取ったものです。この中でキプチョゲ選手が脚や腰の曲げ伸ばしをしているところが映っていますが、見た感じでは身体の柔軟性は高くないようです。他の動画も確認しましたが、周りの選手と比べてもぎこちない動きに見えます。

 

ランニングフォームについては人それぞれだと思います。その人の身体的な特徴で決まってくる要素は多々あると思います。各関節の柔軟性が低ければ、当然可動域が限定され通常の動きとは異なる可能性があります。

 

自身の思うことですが、各パーツの細かい動きを改善することはあまり意味がないのではないでしょうか。足の接地についても同様です。ランニングの基本的な動きのポイントを抑えれば、細かな動きは気にしなくてよいという結論に持っていければよいのですが簡単な話ではありません。

 

動物本来の自然な動きということになるかもしれませんが、文明化した現代人とは程遠い話になりそうです。

 

そう考えると、幼少期にはだしでの生活を送った経験のあるアフリカ人ランナーのランニングフォームをお手本とすることは理にかなっているのではないでしょうか?