キックオフ。

初めから、SSSは、猛攻。

ムスタングは、なんとか耐えしのいでいたが、

持ちこたえられず、先制された。

前半終了。


リードされて終わったのが良かった。

後半、SSSは、ふつうの動き。

ムスタングは、エンジン全開。

元々実力のあるチームなので、

徐々にムスタングペースになっていく。

そんな中、同点ゴール!


SSSの動きが、急に速くなる。

そんな時、ムスタングのコーナーキックになった。

珍しく、ショートコーナー。

受け取ったのは、

チームでは一番と言ってもいいくらいに心の優しいAくん。

キック力もあまりなく、

シュート練習をしていても、へなへなと飛んでいくことが多い。

そんなAくんが、足を振り抜いた。

ボールは、見事にゴールの中へ吸い込まれていく。

ゴーーーール!!

そのあとの激しいSSSの猛攻にも耐え、

YBS大会での初優勝となった。


それにしても、Aくん。

あんなすごいシュートは、

それまでにも、そして、そのあとにも、

一度も見ることは出来なかった。



この頃のムスタングは、

まさに「飛ぶ鳥を落とす勢い」だった。

入部希望者も多く、一時は、募集をしなかったくらいだ。

隣の団地からの入部希望者もいた。

今は多摩市全域だが、この頃は、入部は、

南諏訪か中諏訪小学校の子どもだけだったのだ。


しかし、この頃をピークに、

ムスタングは衰退の道を歩むことになる。


YBSという大会がある。

TBS系列の山梨放送が後援している大会で、

決勝は、TV放送される。

今は亡き町田の重田先生が、

「とってもいい大会だよ。」

とおっしゃっていた。

ぜひとも出たいが、

招待されなければ出られるものではない。

そんなとき、SSSの佐藤先生から、

「キャンセルが出たから、ムスタング、出ないか?」

とお誘いを受けた。

一も二もなく、即受諾、現在に至る。


参加するようになって、何年目かの大会。

その学年も、強かった。

うまかった。

相手がどんなにボカスカ蹴ってきても、

きちんとトラップして、正確につないで攻めていった。

苦しい試合もあったが、順調に勝ち進み、準決勝。

相手チームは、明らかに力に差がある。

あぶない、あぶない。

何年か前の失敗をしないように、子ども達には強く話した。

この頃になると、もう失敗はしなくなっていた。

順調に勝ち上がり、いよいよ決勝。


決勝に出た、ということは、TV放送される、ということだ。

ただ、残念なことに、YBS(山梨放送)だ。

東京には放送されない。

甲府のチームの方にビデオで録画してもらい、

送っていただくことになった。


決勝の相手は、町田の強豪SSS.

決勝まで勝ち上がった、ということで、

佐藤先生が、わざわざ東京から見に来た。

SSSというチームは、佐藤先生の前だと、強さが2倍になる。

この学年は、SSSに今まで勝ったことがない。

悪条件の重なる中、キックオフ。


試合が終わってみると、3-0。

快勝だった。


この頃のムスタングは、

ブロック大会を勝ち抜き、中央大会に行くことは、

当たり前になっていた。

中央大会でどこまで進めるか、が焦点になっていた。

さわやか杯で、準決勝まで進んだ。

東京都でベスト4だ。


準決勝の相手は、明らかに力に差があった。

楽勝の相手だった。

子ども達の心は、そして、私の心も、決勝に行っていた。

東京都で優勝!少なくとも、準優勝!

しかし、まさかの敗戦。

試合終了後、子ども達はもちろん、私のショックも大きかったが、

子ども達の気持ちを整えることだけを考えた。

子ども達は、私以上にタフだった。

たくさんの遠征の経験が、こういうところで生きてくる。

3位決定戦では勝ち、東京都3位になれた。


その数年後、また同じ状況になった。

私は、以前の経験から、口をすっぱくして言った。

「決勝のことは考えるな。準決勝で勝つことだけを考えろ。」

しかし、ここでまた同じ過ちを犯すことになる。

敗戦、そして3位決定戦で勝利、東京都3位。

東京都で3位ということは、

全国レベルのチームだ、ということを意味する。

しかし、あまり喜べなかった。


実力的には2位にはなれる。

事実、優勝したチームには、練習試合で勝っていた。

同じミスをして、優勝、または準優勝の道を閉ざしてしまった。

後悔だけが大きく残った。


子ども達の集合写真と、首にメダルを掛けた個人の写真を、

小さなアルバムに貼り、全員に配った。

あるお父さんから、電話をいただいた。

「この写真を見ながら、飲みました。

先生の気持ちが嬉しくて、泣けてきましたよ。

本当に、ありがとうございます。」


ムスタングは、ローカルテレビにも出た。

それは、・・・・・・。