最近、大切な3人に「やめてよ。」って言われた。

うれしかった。



一人目は、孫田くん。

練習が終わる、という頃に電話。

「何やってるんすか?」

「え?練習。」

「ええっ!?大丈夫なんすか?」

「大丈夫だよ。」

「今から行きます。」

ほどなく、孫田くんは諏訪小学校の体育館に現れた。



「大丈夫なんすか?」

「大丈夫だよ。風邪みたいなもんだからさ。」

……じっと私の顔を見て、

「うっそだ~。」

「大丈夫だってば!」

「やめてよ~。」


「突然、俺が死んだ、って知らせが来たりしてね。」

「やめてよ~!」

「そしたら、残された妻子にたくさん香典ちょうだいね。」

「あげないよ。…本当に、やめて下さいよ~。」



孫田くんは、本当に私のことを心配してくれていた。

いくら「大丈夫だ。」と言っても、信じようとしなかった。

しつこいくらいに、聞いてきた。

私のことを心の底から心配してくれているのが、よくわかった。

そのしつこさが、うれしかった。




2人目は、はる。

体調が悪かった。

朝からだるかった。

練習を早退することにした。

「ちょっと体調が悪いので、悪いけど、ここで帰らせてもらうね。」

すると、はるが、

「やめてよ~!」

かなり本気だった。

うれしかった。

こんな年寄りでも、居て欲しいのかな。

自分を求めてくれている人がいる、

というのは、うれしいものだ。




3人目は、清志くん。

「大丈夫なんですか?」

「大丈夫さ。なんて言っててポックリ死んだりしてね。」

「やめてよ~。」

「大丈夫だって!」

「本当にやめてよ~!!」

目は笑っていながらも、ときおり見せる真剣な眼差し。

「やめてよ。」の連発。

私の身を案じてくれているのがよくわかった。

正直、うれしかった。




孫田くんも、清志くんも、ムスタングの卒業生だ。

小中学生時代、大活躍した。

それが、大きくなって、就職して、

「なかなかサッカーをする時間が作れない。」、

とぼやきながらも、寸暇を惜しんでムスタングに来る。

私の心配もしてくれる。



「はる」は、現役だ。

一生懸命サッカーをやっている。

サッカーが大好きなんだろうな。

他の子だが、

「おいけんの練習は楽しい。」

と言われたことがある。

こんなおじいさんでも、

一緒にサッカーをやりたいと考えてくれているのか。



一人の少年と二人の元少年に、

こんな嬉しい言葉をかけられて、

つくづく自分は幸せ者だなあ、と思った。


哲也のお母さんからメールをいただいた。


「生沼監督からサッカー教わるのが本当に楽しいようで、

哲也は、将来大地のお父さんのように、

自分の子供をムスタングに入れて、

オイケンとまたサッカーするのが夢なんだ

と言ってます()」


歳のせいか、涙腺が弱くなっている。

1回目。みるみる涙が溢れてくる。

2回目、3回目、……。

何度読んでも、出てくる涙。

こんなこと書かれちゃったら、泣いちゃうよなあ。


ムスタングを始めて、良かった。

子ども達に会えて、良かった!

こんな子ども達に会えて、本当に良かった!!



だが、待てよ。

哲也の子どもが小学生になるのは、何年後だ?

20年後ぐらいか?

生きているかな?

低学年の練習での出来事。


紅白試合。

Aくんが、ボールを蹴った。

近くにいたBくんに当たった。

そのボールが、目の前にいたCくんに当たった。

それを見て、Dくんが笑った。


Cくんは、Dくんを追いかけ回した。

やがて、あきらめたのか、座ってうなだれていた。

Dくんは、Cくんをじっと見ていた。


子どもにスポーツをやらせると良い、というのは、

例えば、こういうことだ。


悪気でやった子は、ひとりもいない。

Dくんは、笑っちゃった。

確かに、吹き出すような光景だった。

笑われたCくんは、怒った。

それも、もっともだ。

痛い思いをしたのだ。

笑われてはたまらない。

追いかけられたDくんも、心の中では、

「なんで怒るんだよ~。つい笑っちゃったんだよ~。」

と叫んでいたのかも知れない。


でも、うなだれているCくんを見て、

Dくんは、やはり感じるものはあったのだろう。

「もう、笑うのはやめよう。」

と思ったかも知れない。



スポーツをやりながら、こうやって、

子ども達は、たくましく育っていくのだなあ、と思った。


この就職難の中、やっと職に就いたというのに、

ゴールデンウィークあたりに、バタバタと辞めていく若者が多いという。

その理由というのが、

失敗をして上司に叱られた、と言うよりは、

仕事をしていく上での常識を教えられた、とか、

社会人として当然するべき事を注意された、とか、

とるに足らないものだという。

失敗をして叱られた、としても、

利潤追求をする会社なのだから、当たり前だ。

当然、乗りこえていかなければならない。


心が弱い。

ちょっとした障害を、乗りこえられない。

成績の良い子に多いという。


こういう経験を積みながら、

がまんする心が育ち、

ストレスを発散する方法を体得していく。

また、他人を思いやることも学んでいく。


そう言えば、高学年では、こういうことは起こらない。

当たっても笑わないし、

もし笑ったとしても、「えへへ…。」で済んでしまう。

その子も、当たったことはあっただろう。

そういう経験を積みながら、

心が強くなっていったのだろうと思う。


「おまえ、へたくそだからなあ。」

「おまえほどじゃないよ。」

そんなことを、からっとした空気の中で言い合う。

「わはは…!」

と笑い合う。


スポーツで手に入れた友達。

もしかしたら、一生の友達になるのかも知れない。

そう言えば、ムスタングの卒業生の中にも、

もう50近くになるというのに、いまだに会って飲んでいる連中がいる。



心も強くなり、本当の友達も作れる。

スポーツクラブは、やはり、大切なんだな、と思った。