ずっと活躍してきて、存命のミュージシャンは、どんどん年を取ってきます。病気したり、仲間や家族を亡くしたりしながら、それでも、音楽を続けているちょっと先輩の、自分のティーンエイジャーの頃からのアイドルのような人たちが今も活躍しているのは嬉しいことです。
その「先輩」たちは、やはり音楽家だからか、感性が鋭いなあ、と思います。もちろん、思想的に正確だったり、感覚的だったりするけど、少なくともレベル・ミュージック(反抗音楽)としてのロックという世代のロックのカテゴリーで過ごしてきたミュージシャンの感性に基づく言葉は、私の心にチクっときます。
なんとなく『NO MUSIC,NO LIFE YEARBOOK2016』という雑誌をパラパラめくっていたら、そんな言葉に出会いました。
「ただ、メッセージ・ソングばかりが必要とされる世の中というのは、戦争のプロパガンダ音楽があふれた戦前戦中のような世の中と表裏一体の合わせ鏡みたいな社会、なので、そういうメッセージ・ソングが必要とされない、ラヴ・ソングや不道徳な歌も許される社会であって欲しいと思っています。僕の理想はクレージーキャッツ。自由でお調子者の音楽があふれる平和な時代がまた来るといい。いまはかなり危険な世の中になりつつありますから。」(坂本龍一)
この感覚は、私にもあります。世の中に余裕があって欲しいですよね。常に緊急事態=戦時体制みたいなのもいやだし、また、どんなに立派でもふざけたことが許されない窮屈な世界は嫌ですよね。
「つまり儲けだけを優先する表面的な文化しか根付かないということを言いたかったんだといまになってわかります。親たちが事なかれ主義だから、子供たちも親と同じ損得でもの計る習慣がついて育つ、そこからは、スケールのあるぶっとんだオリジナルなカルチャーは生まれにくいですよね。御都合主義のプロパガンダにさらされて育ってきているわけですから。」(桑原茂一)
桑原さんは「スネークマンショー」で有名な「選曲家」ですけど、新自由主義的価値観に異議を述べているのだと思います。ほんと、金にならない素敵なこと、が示しにくい世の中だと思います。
それぞれ、今の時代のおかしさ、危機感を感じながら、音楽の力を信じている、そんな人たちの言葉に励まされます。けれども、もっとも励まされたのは、昨年、奥さんのシーナさんを亡くした鮎川さんのこの言葉。
「思い通りにはなかなかならんかもしらんし、頑張って真実を追い求めても利用されるだけで終わってきた例もたくさんある。むしろ、その繰り返しですよね。そういう部分は世界にいつもあるけど、僕らは諦めてない。平和も愛も、言葉の上だけじゃなくて、本当にみんなが求めているもんやし、音楽はそれをすごく前向きに手伝ってくれる。キミが思ってることは間違ってないちゅう自信をロックはつけてくれる。捨てたもんじゃない、この世は。そう思わせてくれるんです。だからやっぱり、とにかく元気で、目ん玉真っ黒でおらんとね」(鮎川誠)
ストレートなロックンロールですね。嬉しくなり、元気が出てきます。KEEP ON ROCK’N’ROLL! 写真は、ブルース・オズボーン氏撮影。