「警察には見えないものも見えるんだね」 | 御苑のベンゴシ 森川文人のブログ

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 先日、刑事事件の法廷で警察官の尋問を行いました。被告人を恫喝して任意同行し、全く車種も異なる車両にキズがあるという指摘をして証拠に提出してきた責任者の警官。なので、弁護人側から証人請求です。

 開示された証拠の中で発見した写真には被告人の車両と異なる車両が映った写真が含まれており、かつ、その写真にだけ「キズが見える」というキャプションが付いているのです。
 
 だとすれば、被告人ではなく、その車の持ち主が犯人では?これで一件落着♪と思いきや、なんと公判担当検事からは、「車は違っている、かつ、キズも映っていない」などと主張を変更してきたのです。

 被告人は、この警察官から当初より犯人と決めつけられ、怒鳴られたうえ、こんなとんでもない証拠に基づいて(もちろん、これだけではないですが、重要な証拠です。)逮捕され、勾留され、起訴されてしまったのです。

 法廷では、この警察官は殊勝な態度で、何故、間違えたかの言い訳に終始するという赤っ恥をさらけ出しました。

 その上で、驚いたのがタイトルの証言です。逮捕に当って取調べ担当検事に資料を持って相談しに言ったところ、くだんの証拠につき、担当検事から「警察は見えないものも見えるんだね」と皮肉を言われたというのです。

 つまり、この時点で、警察も検察も、この証拠があやふやなもの、証拠価値が危ぶまれることがわかっていた、ということです。

 それにも関わらず、その後、被告人は逮捕され、黙秘を貫いたにも関わらず、起訴されたのです。

 まったく信じがたく、許せない話ではないでしょうか。酷いのは、その「警察は見えないものが見えるんだね」と皮肉った検察官も結局は、その証拠を用い、起訴してしまっているという点です。いったい、検察の誇りとか、ないのかね、何がヒーローだと怒り心頭です。

 公判検事は、この警察官だけ責めてトカゲのしっぽ切り作戦で、何とか凌ごうとしています。もちろん、無罪を取るのは甘くありませんが、上記は現実。公開の法廷での証言です。
 
 権力が「見込み捜査」を始めた以上引き返せない、後戻り出来ないという、この恐ろしさは、今の戦前的情勢において、よくよく肝に念じておこうと思うのです。
 
権力は、わかっていても始めたら誤りを認めることはありません。自ら引き返す機能は持ち合わせていないのです。