有名人に関する報道、裁判所の判断、「取り違え」がテーマの映画、などでも話題ですが、近年、DNA鑑定の制度が飛躍的に向上し、「生物学上の親子」関係の有無が科学的に判明します。
では、「生物学上の親子」と「法律上の親子」はイコールかといえばそうではありません。
先般の最高裁判決(本年12月10日)では、「元女性の夫」と血縁関係がないことが明らかな子でも、夫の子と推定できる旨の判断を示しています。
どうしてこういうことになるのか?
民法の772条という規定があります。嫡出推定制度と言って、嫡出、つまり婚姻関係にある男女の妻から生まれた子は、その夫の子であると推定する、つまり「原則、親子だと扱う」という制度です。
その趣旨は「子の福祉のため,父子関係を早期に確定し,子の身分関係を安定させること等(家庭の平和を尊重する)」とされています。(法務省のホームページ)
この「趣旨」の解釈ですが、うがった読み方をすれば、「生物学上の親子だとか云々はまあさておき、結婚しているんだったら、そのウチの子ってことでいきましょう、それが子の為だし、夫婦も平和でしょ」ということだと思います。
従って、DNA鑑定の結果、生物学上の親子でないことが判明しても直ちには法的な関係に反映されません。生まれたことを知った日から1年以上経過した場合には、「嫡出否認の訴え(民法777条)」ではなく、「親子関係不存在確認の調停・審判申立、そして訴訟」で法的な親子関係を確定させる、ということになります。
さて、その上で、夫は自分の生物学的な子ではないと知っていた妻に対して損害賠償は出来るか?もしくは、それまで子どもを育てるために支払った養育費相当額を損害(不当利得)として請求出来るか。
そもそも不貞(つまり、婚姻中に他の男性と関係を持った)で子どもが生まれた場合は当然に不法行為です。なので慰謝料は請求出来るでしょう。
養育費相当額の請求は、事案の個別特殊性もあると思いますが、私が担当した事案では否定されました(平成21年12月21日東京高裁)。
奥さんが、「確信犯」で夫に子と信じて、育てさせた場合は詐欺罪じゃないの?「無銭飲食」だって詐欺なのに・・・
残念ながら、この問いについての具体的事案は知りません。
法の立場は、形上の家・家族・親子を重視しているように見えます。これを「安定」というのでしょうか。う~ん、納得出来ない夫はたくさんいると思います。少なくとも(裁判所を含めて)第三者から納得しろって言われてもねえ・・・。
「生みの親より育ての親」という言葉もあります。皆さんにとって親子とは?
