91年に弁護士になりましたが、当時は、いかにもバブルが弾けた後の下り坂の時代という事件=「バブルの後始末」というような事件が多かったと思います。
放っておくと、つまり、時間が経つと不動産の価格がドンドン下がって行くという戦後の日本が経験したことのない事態、むしろ91年までは、不動産はドンドン値上がりしていくものである、という「常識」に真っ向から反するような現実が訪れた訳です。
相続事案などでも、それまでは(91年までは)、相続財産である不動産の価値が、解決が長引くほど価値が上がる、という状況から、一転して早く解決しないと相続税の支払いが大変になる(評価は相続時、その後売却時点では値崩れしている可能性が大)ということでバタバタしていました。
また、自宅マンション等をバブル崩壊前の価格で購入=相当額借入、ところが、その後、価格が下がり、借入ローンの残債務が方が、不動産の時価より高くなる「オーバーローン」という現象も始まり、個人破産が急激に増加しました。
特に印象に残ったのは、東京の表参道の一等地を巡っての二大企業の争奪戦、当時の言葉でいえば「地上げ」についての刑事事件。
一方の企業の取締役らが、特別背任罪で起訴された事件です。簡単に言うと、土地を買い取る為に、当該土地の地主・借地人らと交渉して買い取る、「立退料」を支払うなどの作業が必要なわけですが、それを請け負う「地上げ屋」に金を突っ込みすぎた、それ故に会社に被害を与えた、犯罪だ、ということです。
たぶん、なのですが、バブルが弾けなければ、その取締役らは「英雄」だったと思います。むしろ、頑張って土地を取得して、その土地がさらに値上がりすれば会社に損害はなかったので。
なので、争点としては、「バブルが弾けることが予想出来たか。」という点になりました。
う~ん。大きな意味で予想出来た「当事者」はいなかったのではないかな、というのが私の実感です。観客的な位置に居た人は別として。弾けてから「バブル」と呼ばれた、そんな時代でした。
