シナジーなき多角化が投資家に支持されない理由
例えば、アイスクリーム店とラーメン店の組み合わせた場合、暑いときにはアイスクリームがよく売れるが、寒いときには温かいラーメンがよく売れる。つまり、「お互いに弱点を補い合う」ことから、単独で商売するより一緒になったほうが、外気温の変動による収益のブレ幅を軽減できる。
つまり、A社とB社の収益は、合併することで、それぞれの企業の個別要因(上述の外気温の変動のような要因)はお互いに打ち消しあうことから、収益のブレ幅は小さくなる。
この理論を推し進めていくと、考えられる全ての事業を包含した企業が一番リスクを軽減できることになる。つまり、株式でいえば、株式市場全体を包含するTOPIXのような企業である
さて、合併前後で企業価値は、どのように変わるのだろうか?
前述のアイスクリーム店とラーメン店の場合で言えば、シナジー効果はほとんどないことから、合併によってフリーキャッシュフローは変化しない。しかし一方で、合併によってフリーキャッシュフローのバラつき幅が低減することから、個々の固有のリスクは低下し、割引率も低下する。結果として合併事業の現在価値は上昇するはずである。
では、投資家はこのようなアイスクリームとラーメン事業の両方を営む企業の株式を保有したいと思うだろうか?
《投資家にとって、シナジー効果のない単純合併は無意味》
分散投資ができる投資家の視点から見れば、アイスクリーム事業単独の企業A社とラーメン事業単独の企業Bの株式を別々に保有すれば同じ効果が得られることから、わざわざ2つの事業を傘下にもつ合併企業の株式を購入することはない。
単にリスクを軽減するためだけの合併つまり、シナジー効果がなく、フリーキャッシュフローの増加のない企業合併は無意味ということになる。
さらに、このような企業結合は、コングロマリット・ディスカウントという言葉が示すように、優良事業部門が生み出したキャッシュフローが不採算事業分に投資され、全体としての企業価値を損ねる(つまり、PV(A)+PV(B)>PV(A+B))可能性も孕んでいる。
米国の多くのコングロマリット、そしてカネボウのケースはその典型といえる。米国のシティグループも、1990年代後半から総合金融化路線を推し進めてきたが、今回の金融危機をきっかけに行き詰まりを露呈し、証券関連(投資銀行)業務をノン・コア事業として売却し、コア事業である商業金融事業に回帰しようとしている。同じ金融業とはいえ、商業銀行業務と投資銀行業務はノウハウも文化も異なり、融合が難しいことを示している。
“企業買収は、時間を買うという点では企業価値の増大に即効性のある戦略である。しかしながら、適正買収価額の設定、買収後の企業文化の融合、傘下事業の統合等々、本当にシナジー効果を出せるまでには幾多の難関が待ち受けている。自社の競争優位性をしっかりと見強めた上で、シナジー効果が実現できるよう、慎重かつ大胆なM&A戦略の立案・実行が望まれる。”
(2009/4/3 Business Media 斎藤忠久)
アンゾフの成長マトリックス
“アンゾフの成長マトリクス(事業拡大マトリクス)とは、縦軸に「市場」、横軸に「製品」を取り、それぞれ「既存」、「新規」の2区分を設け、4象限のマトリクスとし、ここから企業の成長戦略オプションを与えるものです。”

■市場浸透
既存の事業と同じ領域でマーケットシェアを拡大していく戦略
✔潜在顧客(既存顧客と同一属性)の掘り起こし
✔既存顧客の使用頻度・購入量の拡大
✔他社からのシェア奪取
(具体例)
・商品ラインの充実
・価格の引き下げ
■新製品開発
新しい製品を、既存の顧客へ投入することで成長を図る戦略
✔改良(性能改善・機能追加)
✔新技術(素材・製法)
✔他の市場で既知製品を既存市場で販売
■新市場開拓
現状の製品を、新しい顧客へと広げることで成長を図る戦略
✔地理的市場拡大(海外展開等)
✔同一市場内での顧客セグメント拡大(赤ちゃん用のスキンケアを女性用に展開)
■多角化
製品・市場ともに、現在の事業とは関連しない、新しい分野へと進出して成長を図る戦略
既存事業の深耕こそが成長への王道(ロート製薬の事例研究)
《企業が最も優先して取り組むべきなのは市場浸透対策》
「経営戦略の父」と呼ばれる米国の経営学者イゴール・アンゾフは、企業の事業拡大の戦略として、(1)市場浸透、(2)市場開拓、(3)製品開発、(4)多角化──の4つを提示。成長マトリックスを使って、どの戦略が望ましいのかを分析した。
企業の経営資源には限りがあり、これら4つの戦略のすべてに配分することは難しい。戦略に優先順位をつけるとしたら、一般的に、(1)既存事業の深耕→(2)新市場の開拓→(3)新商品の開発→(4)多角化(新規事業の開発)という順番になる。
(1)の既存市場の深耕の優先度が高いのは、企業は市場や顧客についてはよく知っているし、能力や技術も既に持ち合わせているため、成功確率が最も高いからである。販売量を増やしてシェアを拡大する。あるいは既存の商品を改良して顧客のニーズを掘り起こす。このように自分たちが得意なフィールドを深く耕すことに、まずは取り組むべきなのである。”
《ロート製薬の化粧品事業は、新規事業開拓だったのか?》
ドラッグストアの安売りなどの影響で業績が悪化している大衆薬メーカーの中で、ロート製薬が業績を伸ばしている。同社の主力は大衆向け目薬などのアイケア関連製品と「メンソレータム」に代表されるスキンケア関連製品だ。ところが、業績を牽引しているのは、「ビューティー関連」と呼ぶ化粧品である。同社の化粧品の売り上げは、2000年度には実質ゼロだった。ところがわずか5年後の2005年度には売上高の1割を超えるところまで成長した。だが、果たしてロートは化粧品という新規事業を作り上げたと言えるのだろうか。
ロートの化粧品を新規事業の開発と位置づけるためには、既存とは異なる新規の市場や顧客を開拓していなければならない。しかし、主に販売されているチャネルは同社の主力製品と同じドラッグストアであり、購入している顧客もメンソレータムなどのスキンケア関連製品と同じ若い女性が中心であり、ロートの化粧品はこれには当てはまらない。
ロートが販売している化粧品は、機能性化粧品であり、従来の化粧品メーカーの製品とは大きく異なる。そうした機能性化粧品をロートが製造できるのは、大衆薬メーカーとして培ってきた医薬品の製剤技術があったからにほかならない。
つまり、ロートの化粧品は、新規事業を開発したものではなく、既存のものを応用して既存事業を深耕したものと見ることができる。いわば得意分野を深く掘ったから、わずか5年で売上高の1割を超えるところまで育てることができたのだ。
《成功の秘訣は、得意領域の深堀り》
実際、ロートの山田邦雄社長は、「ポイントは、自社の得意な領域を深掘りすることだ」と語っている。
多角化は容易でないということをアンゾフも自覚しており、自ら「最後の選択肢」とも言っている。事実、多くの日本企業は1980年代、本業で儲けた金を新規事業につぎ込んだが、ほとんどうまくいかなかった
現代の戦略の王道は既存事業の深耕にある。既存事業にはまだまだ宝の山が眠っているはずだ。自社の既存事業、すなわち本業が何かを明確にして、そこを深く掘り下げることが必要だ。
(日経ビジネス2008/6/28 佐久間陽一郎)
価格競争はよい競争か?
《低価格競争は企業を疲弊させる》
デフレ経済の下、消費者の低価格志向はしばらく続きそうだ。業界を問わず、低価格商品を提供する企業が勝ち組となるなか、価格競争がもたらす弊害を危惧する。
低価格戦略は、いうまでもなく第一に競争している企業を疲弊させる。価格競争に陥ってしまった牛丼チェーンが赤字になってしまったのはその例だ。スーパーの苦戦も低価格戦略がもたらしたものだ。
低価格競争は小売りチェーンだけでなく、メーカーまで疲弊させてしまうことがある。小売りから低価格での供給を迫られるメーカーは、低価格を求めた開発や生産を行ってしまいがちである。その典型は、生産コストの安い海外での生産である。簡素な製品デザインや量産部品の使用は、メーカー間競争を激化させてしまう。その結果、商品の魅力が低下するだけでなく、開発力も低下してしまう。メーカーも低価格に頼らざるをえなくなる。
《低価格競争が引き起こす思考停止と悪循環の罠》
低価格競争は競争の質をも劣化させてしまう。第一に、価格で競争している企業は知恵を使わなくなる。低価格戦略は訴求が簡単である。品揃え、サービスなど小売り固有の価値貢献が忘れられてしまう。低価格競争は競争相手さえ見ていれば実行できる。消費者の気持ちや要求を勉強しなくても実行できてしまう。人々は考えなくなってしまうのだ。”
同じ低価格戦略でも、圧倒的な低価格を実現するには知恵と能力が必要である。アパレル産業で垂直統合型SPAが生まれたのはそのためである。
低価格競争は悪循環に陥ってしまうことが多い。小売業者が低価格で戦おうとすると、メーカーに対する価格交渉力を高めていく必要がある。そのためには量をまとめなくてはならない。量をまとめようとすると、ますます低価格を訴求せざるをえなくなる。こうして価格訴求の悪循環が起こってしまう。しかも、いったん交渉力を獲得してしまうと、それに安住して、メーカーの努力ばかりが要求され、自らのオペレーションの効率化が怠られてしまう。かつてのダイエーは、この罠に陥って苦労した。”
このように考えると、競争には、いい競争と悪い競争とがあると考えたくなってしまう。常にそうだとは言わないが、価格競争は悪い競争になることが多い。
競争戦略を立案するに当たっては、自社にとっての利益だけではなく、それがもたらす競争の質についての配慮も必要である。
(プレジデント5/10 加護野忠男)
企業価値とフリーキャッシュフロー
《企業価値は企業が将来生み出すCF合計の現在価値》
会社とは、様々な投資プロジェクトの集合体とみなすことができます。
従って、会社全体を1つのプロジェクトと見なして、計算したNPVが企業価値となります。
事業(企業)価値=将来FCFを現在価値に割り引いたもの
《企業価値算定で用いるフリーキャッシュフローは借入がない前提》
企業価値で用いるフリーキャッシュフロー(FCF)は、一般的に以下の算式で求められます。
FCF=営業利益(1-税率)+減価償却費-投資-WC(増減)
ここでなぜ営業利益をベースにするのか?という疑問がわいてきます。
FCFでは、利子費用を無視するため、営業利益をベースとします。
これは、借金をゼロの状態を前提としているからです。
無借金を前提としてFCFを計算するのは、運用と調達とを分けて考えた方が計算がシンプルになるからです。
仮に、借入金がある前提でCFを計算する場合、借入金の返済や利息の支払いをCFに反映させる必要が出てきます。しかし、借入金は借換など返済パターンが無数にあり、将来予測が困難になってしまいます。
そのため、資金調達がCFに与える影響は、いったん切り離し、その企業のキャッシュを生み出す能力だけに注目し、調達方法の影響や負債による節税効果は、WACCに反映させるのです。
フリーキャッシュフローの「フリー」とは、資本構成(調達の方法)の影響を受けない、という意味もあるということです。
なお、不動産プロジェクトなどの場合は、借入金の返済スキームが明確であることもあり、このようなケースでは、借金返済後のCF(NCF)を元にプロジェクトの価値を計算する場合もあります。
《企業価値はまず債権者に分配され残余が株主へ》
企業価値は、まず債権者に分配され、残余が株主に分配されます。
債権者は優先的な分配を受けられますが、取り分は通常一定となります。
一方、株主は残り物しか回ってきませんが、企業価値の増加の果実はすべて株主にわたることとなります。
低価格戦略は競合優位・独自経営資源を持つ会社にのみ許される
《低価格化戦略はマーケットリーダーのみがその恩恵を享受できる》
低価格化戦略とは、ハーバード大学のマイケルポーターが提唱した競争戦略のひとつの基本型で、低コストを追求することで価格や収益性で競合他社を圧倒し、シェアと収益性の成長を両面で達成することを目指す戦略のことです。
低コストを実現するためには、スケールメリットがきくか、経験による習熟度が最も高いことが必須となります。つまり、コスト優位性を発揮するためには、その業界のトップ企業でなければ、その恩恵を享受することができません。
言い換えれば業界のトップ企業だけが「コストリーダーシップ戦略」を採用することができるのです。
《長期的な競合優位・独自経営資源に裏付けられたマックの低価格化戦略》
例えば、マクドナルドは、1990年代の後半から、価格競争をしかけ、2000年2月には、平日半額として、ハンバーガーを65円にまで値下げしました。これは、同社には、世界レベルでの圧倒的な規模の経済と、世界中に最適化された牛肉の調達網・ノウハウという独自経営資源があるからです。
同時期に、ロッテリアも低価格路線へ舵をきりましたが、マクドナルドのように低価格を実現する独自経営資源は有しておらず、結局泥沼にはまっていきました。同社は、「低価格」という差別化を図ったのではなく、単に追随したに過ぎません。
差別化は「長期的な競合優位・自社の独自資源に支えられているか?」 というチェックが必ず必要なのです
《低価格化は消費者に慣れを生じさせる》
しかし、マクドナルドの勢いも長くは続きませんでした。
消費者の間に「ハンバーガーは安いもの」という認識が広まれば、さらにとんでもなく安い値段を提示しないと振り向いてくれなくなるのです。これを同社は以下のように分析しています
「同一商品の価格を長い期間下げると、その価格に慣れが生じます。結果、相対的に商品の価値は下がってしまいます。そのため価格を戻しても売り上げが伸びません。マクドナルドも7年間連続で既存店の売り上げ減少しました。低価格戦略に特化するだけでは、中長期的な成長が描けないのです」」(日本マクドナルドHD・コミュニケーション部)
価格を上げれば利益率が上がりますが、販売数は減少します。
そのバランスをどう取るかが非常に難しく、企業にとって商品をいくらで売るかは最重要事項の一つです。マクドナルドは属性別の価格弾力性(価格変動が販売に与える影響の大きさ)に関する詳細なマーケティングデータを持っており、これが同社の最大の強みとなっています。
例えば、東北地方では基本的に価格が統一されていますが、秋田県だけ、ビッグマックが他より20円高く設定されています。同社は、「秋田県のお客さんはビッグマックが20円高くても買ってくれ、利益が最大になる」と判断できる材料があるということです。
無駄削減だけでは財政再建はできない
≪節約だけでは財政再建はできない≫
「増税するなら、まずは無駄の削減を」と誰もが口にするが、実はこの「無駄削減優先論」こそ財政再建を妨げる元凶である。
無駄削減優先論は、「無駄をなくせば財政再建は可能」との幻想を生んでいる。無駄の削減はかなり頑張っても、せいぜい単年度で1兆円程度であり、これだけで財政を健全化することはできない。
また、無駄削減優先論は国民的モラルハザードを生んでいる。財政健全化には、「自分達のツケを将来世代に先送りしてはならない」という動機づけが不可欠であるが、無駄削減を強調すると人々は「無駄を放置している政府が悪いのであって、財政赤字は、自分達の責任ではない」と考えてしまう。
≪本当に必要なのは、限られた財源に優先順位をつけること≫
第三に、「無駄」という概念が、建設的論議を阻害している。世の中に誰が考えても無駄という純然たる無駄はほとんど存在しない。本当に必要なのは、限られた財源の中での優先順位を明らかにすることである。
(2010/7/15日本経済新聞 大機小機)
企業のコスト削減活動に通じるコメントである
社外役員の意義
《社外役員に期待される利益相反解消機能》
社外役員とは、業務執行を行わない役員(非業務執行役員)である。業務執行者だけの意思決定では、社内の各種しがらみなどから会社利益にかなう意思決定が行われない懸念がある。しがらみを負わない非業務執行役員が意思決定に関与することで、利益相反の懸念を解消する機能が期待されている。
利益相反が懸念される事項の典型例は、違法行為、粉飾決算や不採算事業の放置などによる会社への損害拡大である。こうしたマイナスを防ぐ健全性維持だけでなく、企業価値向上につながる適度なリスクテークを促す役割も期待される。
どの主要資本主義国でも上場会社には、業務執行を担う「マネジメントボード」とその監督を担う「スーパーバイザリーボード」が設置されている。日本の監査役設置会社において、マネジメントボード機能は取締役会が担い、スーパーバイザリーボード機能は取締役会と監査役会とが分担している。一方、委員会設置会社では、スーパーバイザリーボード機能を取締役会に一元化させ、マネジメントボード機能は執行役に担わせている。
経営機構のあり方は、何か一つの形態が優れていると法が決めるべき話ではない。日本の現行法制が監査役設置会社と委員会設置会社という二極化した姿しか認めていないことには疑問がある
(2010/7/13日本経済新聞 経済教室 武井一浩編)
出向先で役員となる場合の給与軟差補てんの取扱い
《給与軟差補てん自体は問題はなし~課題は役員給与の適正額》
(質問)
出向元の親会社では、部長等の使用人、出向先の子会社では社長等の役員に就任するケースにおいて、「役員は専ら経営に従事する者であるから、使用人に適用される給与軟差の補てんという概念は生じえず、出向先子会社が当該役員給与のすべてを負担すべき」と主張された場合どのように対応するか?
(回答)
確かに、使用人と役員では位置づけが異なるため、役員の適正給与の判定が難しいという課題はあるものの、子会社役員としての適正給与が支払われる前提で、親会社で、出向者が従前受けていた使用人給与との軟差が生じるのであれば、その軟差について、親会社が負担することに問題はない。
本件の課題は、「子会社の役員としての給与の適正額は幾らか?」ということであり、算定は極めて難しい。実務上は、子会社役員給与のテーブルを作成し、一定の範囲の中で定めていくような方法をとるしかない
(企業懇話会 質疑応答集)
同じ業界でも財務リスクは異なるためβは同じとは限らない
≪β値は主に、「事業リスク」と「財務リスク」から決定される。≫
WACCを計算する際に、もっとも問題となるのは、「株主資本コストを何%とするか」ということです。
株主資本コストは、CAPM理論に基づきrf+β(rm-rf)で算出できるのですが、ここでβは、「事業リスク」と「財務リスク」に大きな影響を受けることを理解しておく必要があります。
「事業リスク」とは、事業特性などによるリスクで、業種が同じならば、ほぼ同じとなります。
同じ業界に属していても、固定費が大きな企業の株式のβは高くなる傾向にある。これは、売上の変動が利益の変動に影響を与えやすいからです。
「財務リスク」とは、財務レバレッジによるリスクで、業種が同じでも資本構成によって異なります。
財務レバレッジが高く、負債を積極的に活用している企業のベータのほうが高くなる傾向があります。これは、B/S左側の資産(CFを生み出すもの)のリスクが同じにもかかわらず、B/S右側の資金調達サイドにおいて、リスクを負担しない債権者の比率が増え、リスクをとっている株主が負担すべきリスクの比重が高まるからです。
≪業界平均のβは、業界企業のβの平均とは一致しない≫
以上のように、同じ業界でも財務リスクは異なるため、業界平均のβを推定する場合、類似業種企業のβ値を平均するだけでは、適切な業界βは得られません。
そこで、事業リスクだけのβ値で業界平均を求め、それに業界の財務リスクを付加すれば、業界のβ値を推定することが可能になります。その事業リスクだけのβ値が、アンレバードβである。財務リスクも含む通常のβをレバードβといいます。
つまり、アンレバードβとは、100%株主資本(負債ゼロ)の会社のβということです。
具体的には、類似業種企業のレバードβ値(情報ベンダー等の数値を利用)をアンレバードβ値に変換して平均値を求め、それに自社の財務リスク(資本構成)を付加して計算します。
■アンレバードβ計算式
βU = βL ÷(1+(1-t)× D/E)
βL = βU×(1+(1-t)× D/E)
βU: アンレバードβ
βL: レバードβ
t: 実効税率
D: 負債
E: 株主資本(時価ベース)