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「植物を大事にできない奴が、仲間たちを大事にできるわけがない!」



そう言うデザイナーの彼の言葉に、私はどうしたか…。



身動きが取れませんでした。頭を上げることも出来ない。

何も言えず、ただ固まっているだけでした。


仲間に申し訳ないのか、彼の言葉が悔しいのか、よく分かりません。でも、その言葉の余韻がなくなるまで、じっと身を固くしていることしかできませんでした。


涙は…。それも出ません。そんな感情が沸き起こるほど私は冷静になれていなかったと思います。ただ、真っ白でした。




自分は植物を大事にしていないのか…。

仲間たちのことを考えていないのか…。




不慣れな畑仕事をどう管理して良いか、分からない。

仕事を習慣づけようと仲間への働きかけもできない。



そういう中で、何より世の中に出せるような、お金になるような商品が作れない。だから、仲間へ働いただけの給料が払えない。


頭では分かっていて、自分なりに頑張ってはいるはずなんだけど、結果が出ない。もがこうにも、もがく方向が分からない…。





それからしばらくして、私は室内の軽作業が忙しくなったことを理由に、そちらへ異動になりました。


私の後任の担当者も事業を軌道に乗せられるほど、うまくはいきませんでした。


そして、私がその職場を退職したあとも、その地域がハーブを使って町おこしをしている、という話も聞きません。





言い訳になってしまいますが、この施設の考え方、準備、適切な人材の配置。開発したプレ商品も思ったより売れ行きが良くなかった、ということなど、別のところでもいろんな問題点があったと思います。


しかし、責任を果たせなかった私の力不足も当然あるわけです。

プロの世界は結果が求められる世界。

高校野球なら善戦すれば、いや、善戦しなくても「よくやった。胸を張って帰ってこい」で済むけど、これがプロ野球だったら”勝ってなんぼ”の世界になります。




いずれにしても未だにデザイナーの彼の言葉が、その後の私の仕事や生き方に大きく影響を与えていることは間違いありません。







正しいケアマネの歩き方  ~ケアマネタマゴに贈るケアマネ道!~

私たちが目指した夢のプロジェクトの象徴は、このラベンダーでした。

暑い夏がやってくると、必ず畑で雑草と格闘していたときのことを思い出します。

トラウマ、ではないですが(苦笑)。いや、トラウマなのかな?




背の丈ほどに伸びていく雑草に負けて伸びる場所を失うラベンダー、畑がやり直しになってトラクターにひかれていくラベンダー。ハウスの中で水切れを起こし、縮れてしまったラベンダー。


そして、体中から滝のように汗を流して草取りをする仲間。思い詰めた顔で苗に向きあっている仲間。職員が「休憩しよう」と言うまで粘り強く手を動かす仲間。給料が少なくても不満ひとつ言わずに笑顔で接してくれた仲間。




私はたくさんのハーブを殺し、障害のある仲間たちに仕事の素晴らしさ、大切さを伝えませんでした。



仕事をやり切って、本当の達成感を仲間たちと一緒に味わうことも出来ませんでした。




私にとってこのラベンダーは、あの時のしんどくて、辛くて、申し訳なかった記憶を風化させない大切なものです。



植物を大切に育てることは、人を大切に想うこと。

それが、今の私にきちんとできているかどうか、確かめるものなのです。





ラベンダーを育てている理由はそういうことです。



わあ~、思ったより語っちゃったゾ~(笑)

これを最後まで読んだあなた、困っちゃいますよね^^




いつの間にか、職場でも知らず知らずのうちにたくさんのラベンダーを植えてしまいました。ラベンダーは大きくなればほったらかしでも良いですが、苗が小さいうちは雑草に負けてしまいます。今植えているところも油断していると、どんどん雑草が勢力を伸ばしてくるので草取りに必死です。そして水切れも。



苗が独り立ちできるまでは、まだしばらく格闘が続きます。



(終わり。)


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さらに私には大切な仕事がありました。

それは、障害がある仲間たちが仕事を生きがいに感じてもらうことです。仕事をしたことがない仲間たちに、仕事をすることがどれだけ素晴らしいことか、ということを経験してもらうことです。

これは、障害者福祉の実践に当たる部分です。「障害がある人は保護されるべき」という古い考えから「障害があっても、障害がない人と同様の人生を保障すべき」という考え方から来るものだと思います。



でも、いろんな人たちがいました。学校を卒業したばかりで仕事をするということがイメージできない人、養護学校を卒業して、しばらく何もせず家に閉じこもっていた人、親元を離れずに親の庇護のもとで苦労することなく暮らせる人、そして「自分たちが子供たちの暮らしを守ってやる」と考えている親たち。



個性的、と言えば聞こえは良いですが、障害の程度はもちろん、集中力や理解度、そのときの体調・気分、趣味・嗜好など、私たち職員が把握しておくべきことは山のようにありました。それを把握した上で、「この人にはこんな仕事をここまでしてもらおう」「この人にはこういう説明の仕方をしたら理解しやすいんじゃないか」など、本当に試行錯誤でした。



それでも、仕事の手順が理解できなかったり、仕事のムラがあったり、仕事自体に興味が持てなかったり。

例えば、数字の概念が分からない人がいたとします。そういう人は苗作りのときに、苗のポットに肥料を1個入れるところを3個入れたりします。言葉で「1個」と言っても分からないから、肥料が入った苗のポットを目で見てやってもらうわけです。それでも集中力が散漫になると3個入っていたりします(苦笑)。

また散水をしても、水のたくさんかかっているところがあれば、かかっていないところがあったり。



作業以外でも、いろいろな仕事がありました。施設に来なくなった仲間に来てもらうために家へ出かけていって、膝をつき合わせて話し合ったり。少しでも自分に馴染んでもらうように一緒に遊んだりもしましたね。また、仲間どおしのトラブルに対して話し合いの場を設けたり。海水浴や秋祭りなどの季節に応じた行事の準備をしたり、バザーの手配を整えたり。



バザーは土日に行われることが多いですから、休日を返上してイベント会場まで出かけていきます。苗作りもさっきのような有様ですから、成長がバラバラなんですね。ここでも素人の仕事ぶりが出てしまう…。そんな苗を仲間たちと一緒に売るわけです。

1回のイベントで1万円を越えるぐらいの売上げだったでしょうか…。それが仲間たちの給料になるのですが、材料費などの経費は売上げからは出せません。そんなことをすると、仲間たちに支払う給料が無くなってしまいますから。



「利益が出るにはどうしたらいい?」。上司に詰め寄られることもたびたびでしたね。

「苗に使う費用は、本当は施設の運営費なんだよ」なんて、ね。施設の運営費から材料費を出してもらっていたんですね。



畑の管理に悩み、苗作りもまともに教えられない。もちろん、仲間にも給料を支払えない。施設にも迷惑をかけている。



これでは仕事の素晴らしさなんか、分かりませんよね。「あれだけ働いて、これだけの給料かよ…」って。仕事の大変さは伝わったかもしれませんが(苦笑)





そんな失敗ばかりしていたある日のことでした。商品のデザインを手がけてくれるデザイナーが私たちの仕事を見にやって来ました。



その日は炎天下の中、運動会で使うようなテントを日陰にして苗を作っていました。

夕方のミーティングのときにデザイナーの彼は、その光景を見た感想をこう言いました。



「植物を大事にできない奴が、仲間たちを大事にできるわけがない!」と。



畑仕事は、暑い季節には涼しい間に仕事を終えてしまい、昼間の時間帯は休みを長く取ったりするのが常です。

しかし、仲間たちは自宅から通ってくるために9:00~16:00までの会社勤めのサラリーマンのような仕事。その前後には自宅まで送迎をしていました。仕事時間が決まっているために、どうしても暑い時間に仕事をせずにはいられませんでした。



でも、デザイナーの彼は、日陰になっているとはいえ炎天下の中で、噴き出す汗をタオルでぬぐいながら、言葉も交わさず職員の言いなりになって、それが正しいことだと思い込み、不平も言わずに黙々と仕事をしている仲間たちと、締め切ったハウスの中で「暑い、水が欲しい」と訴えることも出来ず、土がカラカラになっている苗たちを重ね合わせたのでしょう。



その言葉に対して、私は…。



(続く。)



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「田中くんは、花を育てるのは好きか?」当時の施設長が私に話しかけました。

「好き、ってほどじゃないですけど、観葉植物くらいなら家で育てたこともありますけど…。」



その昔、流行っていた観葉植物。トレンディドラマにはつきもの(?)でしたね。オシャレな部屋におっきな鉢に植えた観葉植物。あれがあると、部屋がワンランクアップしたような気持ちになりました。今考えると、とても安っぽい価値観ですね(苦笑)。それでも、母親に習って挿し木をしたり、株分けしたり、ということはやったことがありました。




「じゃあ、ハーブ班をしてくれるか?」施設長のその一言で、私の担当が決まりました。



私は農園担当になり、ハーブ栽培の畑を管理する仕事に就きました。




ところが、どう考えても“甘かったな”と思います。畑で植物を育てることが、いかに難しいことか、と。

素人がやる家庭菜園ではないんです。いや、そんなことを言うと家庭菜園をしている方に失礼な話です。私には畑を管理する経験も知識も全くありませんでした。

ですから、前もって施設が借りていた4~5反の休耕田を管理することがどれだけ難しいものか、ということを後になって身に染みました。




畝(うね)を作るのにも苦労しましたね。どうやってもまっすぐに出来ません。畑を管理する機械も大きなトラクターだけですから、畑を耕したら、あとは鍬(くわ)で行う手作業です。



苗を植える時期も分かりませんでした。4月からスタートした、まっさらな施設でしたから、日々の仕事をやりくりするのが大変で、畑の管理、ましてや苗を植えることなど、始めは思いもしなかった、というのが正直なところでした。



それでも上司にせかされて、6月頃だったでしょうか、とりあえず1反の4分の1ほど植えてみたものの、「ようやく植えたぞ」という達成感だけが残って、あとの管理をどうするか、など考えもしませんでした。



一週間ほどほったらかすと、どんどん雑草が伸びてきて、たちまちハーブの背丈を越えてしまいました。そうすると草取りをしないといけませんが、苗と雑草の区別がつかなくなって、苗のほうを抜いてしまうということも度々ありました。



ですから、せっかく苗を植えた畑をトラクターで引き直しました。また0(ゼロ)からのスタートです。何やっているんだろう、という感じでしょう。




雑草が生えにくいように、イチゴなどを育てるときに使う黒いビニール(マルチ)を見よう見まねで張ったこともありましたが、それでもダメでした。




もちろん何も植えていない畑にも雑草が生えますから、そこの草取りもしなければなりません。雑草を生やしたままだと他の畑に雑草の種が飛んで迷惑になるので、草取りに追われる毎日でした。畑の持ち主やご近所からの苦情もありました。休みの日も畑の管理です。




そして、農園の仕事は畑の管理だけではありませんでした。




畑の仕事は収穫できるまでは収入がないので、即金を得るためにハーブ苗を作りました。苗を作ってバザーに出すのです。




土の作り方、種の巻き方、肥料のやり方、水のやり方。私の上司から作り方をひととおり習っていましたが、やっぱりとても難しいものでした。ハウスの温度管理なんて分からずに枯らしてしまうこともたびたびでしたね。



ここに書くのも恥ずかしい…、本当に恥ずかしすぎる、ど素人の仕事ぶりです。



(続く。)

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