(前回はこちら 。)
「田中くんは、花を育てるのは好きか?」当時の施設長が私に話しかけました。
「好き、ってほどじゃないですけど、観葉植物くらいなら家で育てたこともありますけど…。」
その昔、流行っていた観葉植物。トレンディドラマにはつきもの(?)でしたね。オシャレな部屋におっきな鉢に植えた観葉植物。あれがあると、部屋がワンランクアップしたような気持ちになりました。今考えると、とても安っぽい価値観ですね(苦笑)。それでも、母親に習って挿し木をしたり、株分けしたり、ということはやったことがありました。
「じゃあ、ハーブ班をしてくれるか?」施設長のその一言で、私の担当が決まりました。
私は農園担当になり、ハーブ栽培の畑を管理する仕事に就きました。
ところが、どう考えても“甘かったな”と思います。畑で植物を育てることが、いかに難しいことか、と。
素人がやる家庭菜園ではないんです。いや、そんなことを言うと家庭菜園をしている方に失礼な話です。私には畑を管理する経験も知識も全くありませんでした。
ですから、前もって施設が借りていた4~5反の休耕田を管理することがどれだけ難しいものか、ということを後になって身に染みました。
畝(うね)を作るのにも苦労しましたね。どうやってもまっすぐに出来ません。畑を管理する機械も大きなトラクターだけですから、畑を耕したら、あとは鍬(くわ)で行う手作業です。
苗を植える時期も分かりませんでした。4月からスタートした、まっさらな施設でしたから、日々の仕事をやりくりするのが大変で、畑の管理、ましてや苗を植えることなど、始めは思いもしなかった、というのが正直なところでした。
それでも上司にせかされて、6月頃だったでしょうか、とりあえず1反の4分の1ほど植えてみたものの、「ようやく植えたぞ」という達成感だけが残って、あとの管理をどうするか、など考えもしませんでした。
一週間ほどほったらかすと、どんどん雑草が伸びてきて、たちまちハーブの背丈を越えてしまいました。そうすると草取りをしないといけませんが、苗と雑草の区別がつかなくなって、苗のほうを抜いてしまうということも度々ありました。
ですから、せっかく苗を植えた畑をトラクターで引き直しました。また0(ゼロ)からのスタートです。何やっているんだろう、という感じでしょう。
雑草が生えにくいように、イチゴなどを育てるときに使う黒いビニール(マルチ)を見よう見まねで張ったこともありましたが、それでもダメでした。
もちろん何も植えていない畑にも雑草が生えますから、そこの草取りもしなければなりません。雑草を生やしたままだと他の畑に雑草の種が飛んで迷惑になるので、草取りに追われる毎日でした。畑の持ち主やご近所からの苦情もありました。休みの日も畑の管理です。
そして、農園の仕事は畑の管理だけではありませんでした。
畑の仕事は収穫できるまでは収入がないので、即金を得るためにハーブ苗を作りました。苗を作ってバザーに出すのです。
土の作り方、種の巻き方、肥料のやり方、水のやり方。私の上司から作り方をひととおり習っていましたが、やっぱりとても難しいものでした。ハウスの温度管理なんて分からずに枯らしてしまうこともたびたびでしたね。
ここに書くのも恥ずかしい…、本当に恥ずかしすぎる、ど素人の仕事ぶりです。
(続く。)