(前回は>>>こちら。)


「お母さんは体が大切なんだから、

大事にしてよ」の言葉の裏には

「おばあさんの介護はほどほどに」という

意味が含まれているようだ。



お母さんには無理をしてほしくない。

倒れられたら困る。だって、

子守りをしてもらわないといけない。

だからおばあさんのことは…

ということらしい。



「私、自分では“おばあさんのことは

看てあげないといけない”と、思って

いるんですよ」と、娘さんは言った。



そう言って、涙を浮かべた。







子供を育てるのは親の責任。

親の面倒をみるのは子供の責任。

だから、私はおばあさんの介護を

しないといけない、ということだ。



でも、これからのことを考えると

共稼ぎをしている長男夫婦に

協力をしてやらないといけないし、

近所の人たちからもそう言われているし、

なんといっても、自分も子守りをしている

ほうが楽しい、ということなのだ。



それはそうだろう。目の中に入れても

痛くない、自分の孫の世話をするほうが、

日を追うごとに弱っていく自分の親を

看るよりも、よっぽど楽しいに

決まっている。



頭では親の世話を優先にすべきと理解してても、

心の中では、孫を可愛がってあげたい、という

相反する2つの立場に娘さんは混乱している

のであった。

混乱して、疲弊しているように見えた。

このままでいたら、娘さんは

本当に倒れてしまうように思った。



「おばあさんのことは、もう少しサービスを使って

在宅で看られますから、ちょっと休みませんか」

と、言って、気持ちが平穏になるまで

ショートステイを計画的に入れていくことを

提案した。



「いいんですか、そうしてもらっても…」と

娘さんは言った。







「でも、もう少し考えてみます」。

帰り際、娘さんはそう言った。



「そうですか。そうですね、

いろいろ相談されて決められても

いいと思います」と私は言った。



「悩みがあったら、ケアマネジャーに

相談すればいい」、それが分かって

もらえれば、今回はいいと思った。







「こういうのを“介護うつ”って

言うのかしら」と言って、娘さんは笑った。







「う~ん、そうですねえ。

…どうでしょうねえ」と言って

2人で笑った。



(おわり)



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(前回は>>>こちら。)



しばらく話をしていると、

娘さんからこんな話を聞いた。







「最近、朝、おばあさんの部屋に

行くのが恐くって」と娘さん。



ときどきトイレを失敗して

ポータブルトイレのまわりが

汚れているそうだ。



要介護2だが、自分のことは

自分でできていたおばさんが

少しずつできないことが増えている

ようだ。



いつも、身なりはきちんとしていた

おばあさんだったから、その変化は

娘さんに多大なストレスを

与えているのかもしれない。







娘さんがもうひとつの

悩みを口にした。



それは、同居している長男夫婦にいる

3歳の子供のこと。共働きの2人に代わって

子守りをするのも娘さんの仕事だ。



そのことで、昨日、おとついと続けて

長男、次男にそれぞれダメ出し

されたそうだ。



ダメ出しというと、聞こえが

悪いかもしれない。



長男、次男の本心は

娘さん、つまりお母さんのことを

気遣って…の言葉だからだ。



2人して口裏を合わせたかどうか、

分からないが、2日間にわたって

「お母さんは体が大切なんだから

大事にしてよ」と言われたそうだ。



「すごい!優しい息子さんたち

じゃないですか」という私に

「違うのよ」と娘さんは言った。



(次回へ続く。)

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「急で、悪いですが…」

娘さんの急なお願いだった。



ちょ、ちょっと難しいかもしれない。



1週間前の、急なショートステイは

なかなか空いていないことが多い。



予想どおり、いつもお願いしている

ショートステイ先は先約でいっぱいだった。



いつも、きちんきちんと前もって

連絡をくださる娘さんだったのだが

今回、1週間前の依頼というのは、

どんな急用だろうか、と思いながら

いくつかのショートステイ先に

あたってみたら、ようやくひとつ

見つかった。



まずは一安心。



電話でその旨返事をして、

その日の夕方に訪問した。







変更した月の計画書を見てもらうと、

娘さんは慌てた顔をして

「あれ?あれ?」と言った。



「どうしました?」と尋ねると

「27日。27日まで泊まるように…」



計画書では27日に帰る予定にしていた。



しかし、娘さんは27日まで泊まって

28日に帰るように、と考えていたようだ。



(たしかに27日まで、だったよな)と

思いながら、その場で連絡をとり、

もう1日延ばしてもらうことを

ショートステイ先にお願いして、

「じゃあ、もう一度直してきますね」

という私に、娘さんは

「ごめんなさい、ごめんなさい。

何度もやり直させて」と言った。



「最近、混乱してしまって

何から手をつけていいか、

分からなくなってしまって…」と、

まくしたてるように娘さんは言った。



いつもは笑顔を絶やさない娘さんの

様子が、今日はおかしかった。







しばらく話をしていると、

娘さんからこんな話を聞いた。



(つづく。)


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