前回の「同数累加型」とは、3×4というかけ算の式から、
●●● ●●● ●●● ●●● あるいは、
●●●● ●●●● ●●●●
という図をイメージすることだった。
「線分図型」では、被乗数にあたるものを、●といった分離量ではなく、連続量(線分)としてイメージする。
3×4というかけ算の式から、――― の長さを3、―――― の長さを4とすると、
―――|―――|―――|――― あるいは、
――――|――――|――――
という図をイメージすることになる。(各線分が切れて見えるが、つながっているものとする)
このイメージでは、被乗数が小数や分数になっても利用できる。
2.4+2.4+2.4=2.4×3(あるいは3×2.4)
=7.2
私は、同数累加型と線分図型のイメージの使い分けは、被乗数が整数(分離量)の場合と小数や分数(連続量)の場合だと思っていた。(分離量の場合にも線分図を使っていいし、分離量をひとつひとつ図示するのは面倒だから線にすることはよくした。)
ところが、今回、教科書を見直してみたら、教科書は、「ばい(倍)」の導入を線分図型でやっている。掲載図は、大日本図書2年下(2011年発行)33頁
![dainihon](https://stat.ameba.jp/user_images/20140220/23/metameta7/de/9f/j/t02200314_0800114112852903885.jpg?caw=800)
かつて(1970年代以前)かけ算の単元に入る前に「ばい」を取り上げていた時代は、倍は先ず分離量の例でやっていたようだ。(すべての教科書については未調査)。掲載図は、学校図書2年下(1976年発行)20頁
![kyuugakuto](https://stat.ameba.jp/user_images/20140220/23/metameta7/bd/f9/j/t02200345_0800125512852903887.jpg?caw=800)
当時数教協は、倍は「関係概念」であり「操作」だから、「具体物を通して「3個」の3がわかったばかりの子供に「3倍」の3を教えこむのは、どだいむずかしすぎるのです。」(『算数に強くなる』毎日新聞社編、1962年、131頁)と、かけ算を倍から導入することに反対していた。たしかに掲載図(同前、133頁)の右側が3倍を表していることはすぐには分かりにくい。
![sansuunituyoku](https://stat.ameba.jp/user_images/20140220/23/metameta7/20/fe/j/t02200151_0800054912852909879.jpg?caw=800)
とはいえ、数教協が文部省検定の教科書(日本文教出版)をつくったときは、かけ算は「ばい」から導入せざるをえなかった。しかし、数教協の教科書は、戦前戦中の文部官僚で当時啓林館の塩野直道の妨害にあい(小6下の教科書だけを検定不合格にするという陰険なやり口と、遠山は終生蛇蝎のように塩野を嫌悪した)、採択する地区は無かった。
そのときの数教協の「ばい」の扱いは次の通り。(『みんなの算数2年下』日本文教出版、1960年、52頁)
![suukyoukyou](https://stat.ameba.jp/user_images/20140220/23/metameta7/57/84/j/t02200359_0800130412852904857.jpg?caw=800)
個数(分離量)の倍ではなく、連続量の倍から入っている。現在の教科書が、倍の説明を線分図型つまり連続量で先ず始めていることの淵源も数教協にあるのかもしれない(しかし、この点も教科書等を調査しきれていないので、違っているかもしれない)。