「縦×横=横×縦」と明記しても「底辺×高さ=高さ×底辺」と明記しない理由 | メタメタの日

 平行四辺形の面積を求める式を,「高さ×底辺」の順で書いて,バツになったという実話がありました。長方形の面積については,「縦×横」でも「横×縦」でもよいことは,指導要領にも教科書(小4)にも明記されていますが,平行四辺形の面積については,「底辺×高さ」でも「高さ×底辺」でもよいことは,小5の教科書には明記されていません。
 これは,長方形について書いてあるから,平行四辺形については書くまでもなく当然なことだから省略されているだけと思っていたのですが,どうも文科省・教科書の観点は違うのではないか。(※補注あり.9月9日)

 つまり,長方形で縦横を逆にしても良いのは,縦横の数値を入れ替えることが可能だからだが,平行四辺形では,底辺と高さの数値を入れ替えることができないから,ということではないのか。
 つまり,縦5㎝・横3㎝の長方形の面積を,5×3で求めても,3×5で求めても良いということは,普通は,「縦5㎝×横3㎝=横3㎝×縦5㎝」と理解されていると思うし,指導要領・教科書の記述もそうとしか読めないのですが,それとは別に,縦5㎝・横3㎝は,縦3㎝・横5㎝と見ることもできるから,
 縦5㎝×横3㎝=縦3㎝×横5㎝
と,数値を逆にしても良いと考えているのではないかという疑念があります。
 だから,「底辺5㎝・高さ3㎝」は,「底辺3㎝・高さ5㎝」とはならないから,平行四辺形では,「底辺×高さ=高さ×底辺」と明記していないのではないか,ということです。
 これは,かけられる数×かける数についても同じです。
 5×3 では,5がかけられる数で,3がかける数です。そして,「かけられる数とかける数を入れかえて計算しても,答えは同じになります」と,小2の教科書にあります。5×3=3×5 です。
 右辺の式で,かけられる数は何で,かける数は何なのか。私は,ずっと,交換法則とは,
        5  ×  3  =  3  ×  5
 かけられる数×かける数 = かける数×かけられる数
だと思っていました。しかし,指導要領・教科書は,
        5  ×  3  =    3  ×  5
 かけられる数×かける数 = かけられる数×かける数
という理解のようです。(どこにも明記していないのですが。)
 数の交換法則とは,数値を入れ替えても積が変わらないということで,×の左が被乗数,右が乗数という順序は数値を入れ替えても変わらない,という理解のようです。
 被乗数×乗数の順序は変わらないし,1つ分の数×いくつ分の順序も変わらないから,8×3の数値を入れ替えて,3×8とすると,たこの足が3本になる,という教え方が出てくるようです。

 縦×横=横×縦 という式は,教科書に出てくるが,
 被乗数×乗数=乗数×被乗数 という式は教科書には出てこない。
 出てくるのは,「かけられる数とかける数を入れかえて計算しても,答えは同じになります」という文言です。
 そして,1つ分の数といくつ分については,こういう文言すら出てこない。
 しかし,「かけられる数とかける数を入れかえてもよい」という理解は,「1つ分の数といくつ分を入れかえてもよい」という理解につながり,「縦×横=横×縦」という式が出てくるときには,まったく当然のことと受け入れる,という流れはまったく当然なことだと思うのです。


※補注.

 りーさーさんのmixiの次の発言で知ったのだが,

http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=43770027&comment_count=262&comm_id=4341118



平成13年の教育課程審議会の議事録によると,京都大学(当時)の上野健爾先生の発言中に(下から4段落目から)長方形の面積を「横×縦」でバツにされた話が出てくる.
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/gijiroku/030302.htm


そうすると,平成11年の小学校学習指導要領解説算数編118頁に

 (長方形の面積)=(縦)×(横)

という公式が書いてあるだけだったのが,
現行の平成20年の小学校学習指導要領解説算数編147頁で

 (長方形の面積)=(縦)×(横)(もしくは(横)×(縦))

という公式に変わったのは,平成13年の審議会での上野健爾氏の発言がきっかけだったのかもしれない.