量のかけ算でも交換法則は成り立つのか(3の3) | メタメタの日

 遠山と数教協が記述した上記の式、

4個/人×6人=6個/回×4回

  4人/列×6列=6人/行×4行

のうち、下の式の両辺の式は、同じ事態(状況)を異なる分節(解釈)をした場合を示しています。(このように、同じ事態に対する異なる解釈をした式については、「式の意味は違う」と言うべきでしょう。「式の意味が同じ」とは、同じ事態を同じ解釈をした場合でしょう。)

上の式も、配っているときの配り方の事態は異なっていますが、配り終えたときの事態としては同じです。つまり、上下2つの式の両辺は、同じ事態を示していますから、当然、両辺を計算した結果は同じになり、等号で結ぶことに違和感はありません。

しかし、ウサギの「2個/匹×3匹」と「3個/匹×2匹」については、等号で結べるのかという問題があります。しかし、計算した結果が等しい以上、等式は成立するとせざるをえないでしょう。

   2個/匹×3匹=3個/匹×2匹

しかし、左右両辺は、異なる事態(状況)を示しています。両辺の「式の意味」は違います。式の意味まで考えると等号で結ぶのは躊躇します。このような場合を指して、量については交換法則が成り立たない、と言う人が出て来たようです。

 2×3=3×2

は、数の交換法則としては成り立つが、量としては(単位を付けて考えると)両辺の式の意味が違うから、交換法則は成り立たない、と。

しかし、交換法則 ○×△=△×○  と 

A   2個/匹×3匹=3個/匹×2匹   

B   2個/匹×3匹=3個/側×2側

を比較すると、AやBでは、○や△にあたるものが両辺で同一ではありません。同一の項が交換されたのではないのですから、AやBは交換法則の例とは呼べない、というのが私の考えです。菊池さんも先と同じ98番のコメントでBのような場合は、交換則ではなく「解釈」とされています。しかし、先のmixiの「同一律」の人は、Bのような場合が交換法則だと言うのです。

 何を交換法則と呼ぶかという「定義」の問題はともかく、ここまでの例で出て来た量は分離量(離散量)でした。分離量では、対象の個物を碁盤目に長方形に並べれば、1あたり量といくら分の解釈を交換して、1あたり量×いくら分の順序を守ることができます。

 しかし、連続量の場合は、それはできそうもありません。

速さ×時間で、時間の方を1あたり量、速さの方をいくら分と解釈することは不可能に思えます。ところが、これが、できることを示されたのが積分定数さんで、文科省国立教育政策研究所の担当者と電話で、かけ算ではどちらの数値も1あたり量とすることができる、というやりとりをしたときに、担当者が、時速4kmで3時間歩くときは1あたり量の数値は時速4kmの4になる、と言ったことに対し、3㎞/(/)×km/時 と考えれば、3も1あたり量の数値となる、としたのでした。

3㎞/(/)×km/

は、「時速1㎞で3㎞歩く道のりの時速4㎞分の道のり」と解釈できるわけで、秀逸な発想、秀逸な単位の表記法だと思います。

この単位の表記法は、連続量だけでなく、前述の分離量の場合にも適用できます。

4個/人×6人=6個/(/)×4個/

4人/列×6列=6人/(/)×4人/

2個/匹×3匹=3個/(/)×2個/

連続量では、たとえば、

 3㎏/個×5個=5㎏/(/)×3㎏/

こうすれば、不可能に思えた連続量の場合も含めて、すべてのかけ算の式で、どちらの数値を「1あたり量」とすることが可能となります。すると、どうなるか。「1あたり量×いくら分」の順序で書くべきだというきまりが無意味になります。

なぜなら、時速4kmで3時間歩いた道のりを求める式が、3×4 と書かれていても、3㎞/(/)×km/時と解釈すれば、「1あたり量×いくら分」の「正しい順序」で書かれていることになります。

どんな式でも「正しい順序」で書かれていると解釈可能になると、次の3段論法が成り立ちます。

①かけ算の式は、「1あたり量×いくら分」の順序で書くべきだ。

②すべてのかけ算の式は、「1あたり量×いくら分」の順序で書くことができる。

③すべてのかけ算の式は、「1あたり量×いくら分」の順序で書かれている。

無意味なルール①が無意味になってしまいます。


そうではなく、「時速4kmで3時間歩いた道のりを求めよ」という問題で、式が、3×4=12 と書かれていても、その意味が、

 3時間×km/時=12km 

であれば、答えだけでなく、式も正しい、とすればいいのです。

「時間×速さ」の順序で書かれた式を間違いとする理由は何もありません。

km/時×3時間=3時間×km/

という交換法則が成り立つ理由は、両辺を計算した答えが12㎞という同じ数値になるからだけではなく、両辺の「式の意味」が同じだからです。両辺とも、時速4㎞で3時間歩いたという同一の事態を同一に解釈しています。(同一の事態を異なって解釈したのが、3㎞/(/)×km/時という式です。)ただ、記述の順序が違うだけです。

 もし、この式が、3㎞/×4時間=12km の意味であったら、式は問題文の事態と違っていますから、式に×を付けて、答えに〇を(付けたければ)付ければいいでしょう。

かけ算の式が「1あたり量×いくら分」の順序で書かれていようが、「いくら分×1あたり量」の順序で書かれていようが、同じ事態を同じに解釈していて(つまり、「式の意味」が同じで)、ただ記述の順序が違うだけですから、どちらかを是として、他方を非とする理由は、量の観点からも何もありません。量のかけ算についても、当然、交換法則が成り立つのです。