効果が感じられないものを続けることはできないですよね
ダンサーがなぜ「ピラティスは良い」と言うのか、またなぜダンスという身体操作を知らない方はピラティスの即効性を得づらいのか、その要因の一つを【Mermaid on the Reformer マーメイド オン ザ リフォーマー】に乗せてお話しいたします。
↓(一般的によくあるイメージ)
「筋トレは単純な反復動作だから、別に事前に何かを記憶していく必要はない」
「腹筋なら仰向けで上半身を上げ下げ、背筋ならうつ伏せで上半身を上げ下げ、スクワットなら立ったりしゃがんだり、でしょ?」
「ピラティスはトレーニングの一種だから指導者から指示された動きをその場でやって、それを継続していけば何らか身についていく…」
と、考えがちですが
ピラティスが同じ動きを繰り返す筋トレと異なる点は、複数の動作がどんどん繋がっていくことです。
バレエも踊る前に基礎動作を組み合わせた練習を行いますが、いくつか繋がった一連の動きを「アンシェヌマン」といいます。
ピラティスはダンスほど複雑ではありませんが、振付を覚えないとトレーニング自体が始まらない側面があり、そこはダンスと共通です。
ピラティス初心者の方にまず知っておいてほしいのは「アンシェヌマンは覚えた方が楽。その先にいって初めてトレーニングの効果が発生する
」ということです。
継続受講しているのにピラティスの効果がなかなか感じられない場合「これまでのセッションで繰り返し提示されたエクササイズのアンシェヌマンを覚えているかどうか
」疑ってみてください。
動作を覚えていくと、次は「それをいかに正しくしていくか」という段階に進めます。
そこまで到達してやっとピラティスを行う効果が現れてきますので、まずはぜひ動きを覚えてください
「覚えてください」と「言うは易く行うは難し」で、簡単ではないと重々承知しています
私がインストラクター養成に関わっていた時、仮にもプロ志望の受講者達がエクササイズの名前と動作を覚えてこない
覚えられない
という事態を何度も目にして、覚えることは簡単ではない、と知っています。
これが現実。
プロ志望ではない方に「完璧にエクササイズの名前と動作を覚えなさい」というのは無理難題です
でもせっかく通ってくださるのに何も覚えない、そのせいでなかなか身につかないのはもったいないので。
まずは前提として「『覚える』ことが大切な要素なんだ」と知っていただき、セッション後の記憶が新鮮なうちに脳内イメトレしてみたり、セッション前の移動中に動画で確認してみたり。
通うだけでなく、前後にちょっとした予習復習を足すだけで費用対効果が大きくなります
教師の切実な思いとしては、元を取ってほしいのです。
お金を大事に
お金を捨てないっ
何かを教えていらっしゃる方はみな同じ思いでありましょう…
届け〜伝われ〜気づいてほしい〜
繰り返します。
ピラティスにおいては、効果を出すために動作を覚えた方が良いと知っておいてください(ざっくりでOK
)。
動きを記憶する作業が発生しないトレーニングもあるかと思いますが、ピラティスはそうではないと言えるでしょう。
初めてピラティスをやってみようという時に「よし、何かを覚えるぞー」と考えてお越しになる方はまずいらっしゃいません。
それゆえ、そこがいつまでも盲点になってしまうのです。
「身体を鍛えにトレーニングに来てるのに、まさか頭で何かを覚えなきゃいけないなんて
」と思われる方が多いかもしれません。
ピラティスは脳トレの要素がたくさん入ってくるダンス寄りのトレーニングで、その点が実践者に活用されてこそ効果が上がります。
ピラティスを始めて半年以上経って、複数回経験したエクササイズを頭の中でなぞることができなかったら、「覚える」という作業が足りていない目安にしてみてください
そのままなんとなく1年…2年…数年経過していませんか?
継続されるだけでも素晴らしいですが、エクササイズを一人でできるようになることで成長が加速し、ピラティス本来の効果を得られます。
脳と身体を連動して使うことで身体能力も認知機能も強化されます。
使わないとどっちも機能低下しますので…
どんなことでもただ続けているだけで成果が出るわけではなく、その特性を活かさなければなりません
セッションは本当に時間が限られているので、このような「行っていることの特性」についての説明がなかなかできないのですよねー。
大人の生徒に対して「おうちでエクササイズのイメトレやってみましたかー?覚えてきましたかー?」と教師が尋ねることはほぼないと思います。
成人他者の生活に介入するのはご法度でもありますから、教師も生徒も、効果を得るのに必須要因でもアンタッチャブルなそこに触れず時間だけが経過してしまうというパターンに陥りがちです。
おしゃべり好きだったり長話でも聞こうという態度を見せてくださったり、よっぽどコミュニケーションが取れている生徒さんには話すことができますが、互いの距離を縮められない人もいます。コミュニケーションの深度は人それぞれ。
それゆえに、あまり教師と話さないタイプの方はこれを知らせることができず回数を重ねてしまうことが多いので、文章に書き動画にしました。
ある程度複雑な動作であるということは、より生活に即したものでもあり、ダンスやスポーツに応用が効くのです。
ダンサーでピラティス実践者の方が「ピラティス良い」と言っているのをSNSでたくさん見かけます
なぜダンサーはピラティスの効果を実感できるのか。
まずアンシェヌマン通りに動くことができるという第一条件をクリアしているからでしょう。
その上で先生のお直しを受けるので動作を改善させられ、すぐに「これは良いものだ」と分かるのです。
動作の組み合わせがあるということは、複数の動作を続けながら「この方向へはこの筋トレ」→「この方向へはこの筋トレ」→…と連続的に様々な面・方向で身体を鍛えているのです。
(「筋トレ」という言葉、正確には筋トレだけではないですが様々な鍛錬を含めてイメージしやすいよう「筋トレ」という言葉に置き換え便宜的に使っています)
第一条件をクリアしておらず「あれ?次なんだっけ?あっそうだった、あっこっちか、あれ?あれ?」
という動き方では、筋出力が低いままうろうろしているだけで目的とするトレーニングまで到達できていないのです。
それでピラティスの効果が得られない、「ダンサーの人がピラティス良いって言ってたけど私にはよく分からない」…となるのはとてもとても残念です
そうじゃない、そうじゃないんだっ
まだちゃんと動けてないから効果が出ないんですよ〜🔰
ダンサーがピラティスで即時効果を得られるのはこれまでに積み上げてきた土台があるから。
「あんなに良いって聞いたのに訳分かんないだけなんだけど、なんで?」と思いますが、ものごとには順序があります。
土台がない人はまずは土台作りから始めましょう
効果が得られないのは理由があり、その閾値まで到達するのに足りていないことがたくさんあるからです。
「アンシェヌマンを覚える」ことを知らずにピラティスをするのは成果が出づらく時間もお金ももったいないので、最短で美しくなっていただきたく
まずは動きを覚えて、そこから素敵な所作に変えていきましょう
動画ナレーション引用後に話がつづきます。
(動画ナレの書き起こし)
冒頭に少し厳しいお話をしますが、初心者の方やピラティス難しいと思われている方にとって意外な盲点かもしれない点について取り上げています。やる気がないわけではなく、必要な前提が抜けているために効率的なトレーニングになっていない場合があるので、そこに気づけると取り組み方が変わります!参考にしてみてください!
今回はリフォーマーでのマーメイドに合わせて、私が動画作成する理由の一つをお話しします。
ピラティスはバレエと同様に「アンシェヌマン」があります。
「アンシェヌマン」とは「複数の動作が繋がった一連の動き」を指す用語で、エクササイズ中の動作は単なる反復運動ではなく、様々な動きの方向(面・Plane)が組み合わされます。
ピラティスはダンスやスポーツよりは敷居が低い運動として広がっていますが そうはいっても簡単ではなく、運動初心者の方が難儀するのはこの「アンシェヌマン」、一連の動作を覚えなければならないという点もあるかと思います。
バレエは毎回変化し かつ複雑なアンシェヌマンを瞬時に覚えなければなりませんが、ピラティスはそこまでハードルが高くありません。
基本的にアンシェヌマンの変更はないので、一つ一つのエクササイズをゆっくり覚えていけば大丈夫です。
ダンサーの方にピラティス愛好者が多いのは、身体の使い方が同じ目標に向かっていることと、振付に抵抗がなく普段から慣れているからでしょう。
私が大人の初心者の方にピラティスを教えていて、多くの方がダンスはしていなくても、小さな頃にお遊戯やラジオ体操の経験があるので それと同じように徐々に覚えていくだろうと考えていたのですが、なかなか難しいものだと分かってきました。
思えば、過去にラジオ体操やお遊戯の経験があったとしても、熱意を持って真剣に取り組んでこられた方は少ないです笑
ダンサーが難しい振付を記憶できるのは、ダンスへの熱意があり、必死だからです。
シンプルとはいえ、ピラティスのアンシェヌマンも「なんとなく」では身につかないと思います。
みなさんにピラティスを始めた理由がありますよね。美しい姿勢、筋力をつけること。
それらを獲得していくために、まずはエクササイズ中の一連の動作・アンシェヌマンを覚えていきましょう。
その場で見て覚えるのは積み上げてきた経験値が必要なので、過去にダンス経験がない方のために、動画があると後で見返し復習できます。
単純動作の反復より、複雑な方向が組み合わされた運動の方が、神経回路が発達し、運動能力や空間認知能力、ひいては認知機能全体の向上に繋がります。
脳に汗をかかなければ筋力はつきません。
頭を含む身体を使って頑張ることは大変ですがストレス発散にもなり未来が明るくなります。
何も頑張らない状態では行く末が不安でストレスが溜まる悪循環です。
今から少しずつでも経験を積み上げて将来に備えましょう。
「頑張ることが楽しい」という好循環に、みなさんと一緒にハマっていきたいです!
マーメイド基本の動きや注意点についてはマットエクササイズの動画を踏まえて進めるので、以前作成した動画を後半に再掲します。
では、リフォーマーでのマーメイドのアンシェヌマンを見ていきましょう!
軽くバーを押してキャリッジ(動く台)を押し出し、指先で遠くの空気を触りながら側屈します。
※側屈がほどけて背骨がまっすぐになるほどキャリッジを遠ざけないように。
これは前額面での動作で、前額面とは身体の前側と後ろ側を分割する任意の平面です。

出典:Wikipedia
前額面での動作は薄いガラスの板が身体の前と後ろにあると想定し、前にも後ろにも倒れず、前後のガラスを突き破らないように動きます。
純粋な側屈は難しく、猫背など身体の癖が出やすいですが、前額面という言葉を知ることで厳格に動くイメージを作りましょう。
腕につられて座骨が浮きやすいので、背骨の長さを出すため座骨は床に突き刺す意識をエクササイズを通して持っておいてください。
頭上の手をバーの上に下ろし、両手の位置を肩幅より少し広くします。
右手はフレックスでバーを押し、左手は指をバーに引っ掛けてバーを引く、Push & Pullのポジションです。
脊柱は回旋+屈曲位で、呼吸に合わせて肘を曲げ伸ばしします。
肘を曲げる時に脊柱屈曲がほどけて頭が上がりやすいですが、脊柱屈曲キープによって腹筋を強化することが目的です。
低い天井が頭上にあると思って、肘の曲げ伸ばしをしても頭を上げないように腹筋を使いましょう。
次は脊柱回旋+伸展の動作で、肘は屈伸せず伸ばしたままです。
さきほどの動きにつられて肘を曲げたくなるかもしれませんが、これは肘を伸ばしたまま背骨を反らすことで脊柱伸展方向への動きを深めています。
背骨を反らす時に肘を曲げるとAxial Elongation(軸の伸長)が失われることを体感してみてください。
両手はバーの上に置き去りにされがちですが、ここでもPush & Pull 押す・引くを維持できると、全身が連動し、より動作が誇張されて身体に入ってきます。つまりエクササイズの効果が上がります。
エクササイズを通して座骨を床から離さず、両手でのPush & Pullを忘れずやってみましょう。
バーの上のPush、Pullしている両手共、小指側・The Fifth Lineを意識して背中までエネルギーを伝えてください。
(めるもでセッションを受講されている方には直接ご説明差し上げているのですが、フィフスラインについてはいつか動画を作れたらと思っています)
キャリッジ(動く台)を遠ざけている状態を保ったまま脊柱屈曲位から側屈位に戻します。
(バーを押すことを忘れてしまい、キャリッジが戻ってきてしまうケースをよく見ます)
前額面の動きで最初のポジションに戻ります。
今行った動作のカウンターとして、反対側へも軽く側屈しておきましょう。
(動画ナレーション引用おわり)
【Mermaid on the Reformer マーメイド オン ザ リフォーマー】
00:00 アンシェヌマンについて
(脊柱側屈、回旋+屈曲、回旋+伸展)
03:30 脊柱側屈、前額面について
04:30 脊柱回旋+屈曲
05:33 脊柱回旋+伸展
【Mermaid on the Mat マーメイド オン ザ マット】
07:36 左方向へ脊柱側屈(正面)
08:05 脊柱屈曲+回旋(正面)
08:24 脚部Switch→右方向へ脊柱側屈(正面)
08:55 脊柱屈曲+回旋(正面)
09:16 左方向へ脊柱側屈(背面)
09:46 脊柱屈曲+回旋(背面)
10:04 脚部Switch→右方向へ脊柱側屈(背面)Watch For
10:37 脊柱屈曲+回旋(背面)
軸の伸長への意識 Axial Elongation↑
脊柱側屈・回旋+屈曲、回旋+伸展可動域の拡大
体幹部を動かすことによる臓器の活性化
脚部非対称位にすることでバランス力↑
肩甲骨可動性↑
The Fifth Lineへの意識↑、ストレッチ、強化
ね、結構複雑でしょ。アンシェヌマン。
これだけのことをその場でパッと見てパッと覚えてパッとやる、難しいですよね
まずは分割しながらで大丈夫。
ぜひ動画を利用して予習復習してください。
「これ見てきたので、このエクササイズやりたいです」というリクエストも大歓迎です。
完璧に覚えてなくてももちろん大丈夫。
引っ込み思案の方は、教師に自分のやったこと・考えたことを伝えるハードルが高い(というかめんどくさい)と思いますが、パーソナルセッションで効果を出すにはコミュニケーション能力も必要です。
全部おまかせ〜は完全受け身、何も覚えない、何も考えない、効果がない、ピラティス良いって聞いたのになんで?という事態に直結していきますので…
考えて話す。形にする。言葉にする。インプットしたらアウトプットする。ということにも少しずつトライしてみてください。
全ての第一歩は、自分の頭の中に何があるか、です。
↓以下につづく
【楽曲】
Ballet Class Music Vol. V
15.Stretch
30.Pirouette
02.Plie
by Iraida Minkus
いつも素敵な曲をありがとうございます
