レポ3)夢をみて生きる〜ゴッホの作風の移り変わり〜 | 西洋美術の楽しみ方_ルーブルの魔女からの伝言

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生涯の間に、画風が

変化していく画家は多いです。

いや、「多い」というより

画風の変わらない画家は
いないと言ってもよいでしょう。

 

 

 

>>最初の記事(毎年行われるゴッホ展と今回の違い)

 

>>2つ目の記事(コロナ禍で変わる美術展)

 

 

今日も、ゴッホ展レポの続きです





※秋の日の穏やかな上野公園





ただし、その画風の変化の様相は

さまざまです。

 



年齢を重ねるごとに、

果物が熟していくような
 

ゆるやかな変化の画家もいれば、

 



実が熟したのではなく、

まるで別の果物に変わってしまったかのような


劇的な変化を

繰り返す画家もいます。



ゴッホは、どちらかといえば後者で


短いスパンで、大きな変化が

いくつかありました。




一般的に私たちが「ゴッホ」の絵として
認識するゴッホらしい絵は

亡くなる前の
およそ2年ほどの間に描かれたものが

大半です。




今回の美術展でいえば、


2階の展示室の最後の部屋に

展示されている、
 

ゴッホ美術館(アムステルダム)所蔵の

いくつかの作品と

3階の展示室にあるものが
それに当たります。

(つまり、美術展全体のながれで後半部分)




※見に行った方は、「黄色い家」が

あった展示室以降です

 

<図録からチラ見せ>





ゴッホの人生の転換点と

照らし合わせるなら、

南仏アルル、もしくは、
療養生活を送ったサン・レミで
描かれた頃のものが

もっともゴッホらしい強いタッチと
鮮やかな色彩に満ちています。




ですが、では一見ゴッホらしくはない、


初期の頃の作品には

意義がないかといえば

 

もちろん、そんなことはありません。

 




オランダ時代(画業初期)の、

ねっとりとして重く暗い画風や、

おびただしい数の

地道な 農民の所作のデッサンによって

ゴッホが自分自身に、

絵画の種を蒔いたことは
 

本人の言葉として残っている通りです。





パリに出てきてから、
 

明るく華やかな、
当時の前衛芸術だった印象主義に触れ


「自分の暗い画面は時代遅れなのかもしれない」

 

と気づいたゴッホは
急速に画風を変えていきます。




パリ時代のゴッホの絵は、まるで


進路を決めかねている若者のような
フレッシュさに満ちています。



そんな、オランダ時代や、
パリ時代があってはじめて

鮮烈なアルル時代に至り、
 

その後、徐々に不安定さが増して
 

最晩年の

オヴェール・シュル・オワーズの

作風へとつながっていきます。





弟で画商のテオが


「フィンセントの絵が評価されるのは
もう少し後かもしれない」

という趣旨の言葉を残しているように



ゴッホは、画壇に遅れてやってきたのに、


あっという間に時代を
追い越していきました。






ゴッホといえば、

 

不幸な画家の代名詞のように
表現されることがよくありますが、

その手のフレーズを聞くたびに

私は、少しの違和感を覚えます。



本人に聞く以外、

彼が不幸だったかどうか

 

本当のところを

知る術はありませんが
 

少なくとも私は、

画家としてのゴッホが
 

不幸の代表のようには思えません。




生きている間に、今ほどの評価は
されていなかったけれど

評価の兆しはありました。


そして、

100年後のひとたちの心を動かせる
絵を描きたいと願ったとおり、

それは今、

非常に大きな うねり となって

実現しています。




もしも、「魂」が永遠なのだとしたら


どこかでゴッホは、

世界中の人に自分の作品が

受け入れられ、

 

希望を与えていることを

感じているのはないでしょうか。





夢は、できるだけ早く叶ったら

嬉しいし、幸せ......

 

でも、叶っても叶わなくても


夢を持って生きていることこそが幸せ
ということもできます。




夢に向かって、
迷いながらも描き続け

命を燃やし切ったという点に
フォーカスすれば、

(たしかに、トラブルは多かったけれど......)



一刀両断に
「不運」「不幸」「不遇」などと
評するのは、

失礼にあたるようにも思います。





生きている間に
一定の評価を受けながらも

没後に、忘れ去られる画家もいるなかで



故郷でもない国で


毎年のように美術展が開かれるのは
とても特別です。




ゴッホは、他に類をみない方法で

私たちに、
夢を見て生きることの意義を


教えてくれているように思います。




 

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>>最初の記事(毎年行われるゴッホ展)

 

>>2つ目の記事(コロナ禍で変わる美術展)

 

 



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その後、福岡(12月23日〜)
名古屋(2月23日〜)と巡回します。


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https://gogh-2021.jp/outline.html

 

 

 

 

 

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西洋美術史の楽しみ方

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内田ユミ

(西洋美術史講師)

 

 

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