花まんま/朱川 湊人
¥1,650
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勝手に採点 ☆☆☆


大阪の下町を舞台にしたノスタルジックライト
ホラー中編集。


主人公が異なるものの、時代設定は70年頃で貧しくも
たくましく生きる庶民の子供たちが出会うせつなく
もの悲しげなオバケや不思議な出来事。


特に印象深かったのは、長屋に現れる子供幽霊。


在日朝鮮人の家庭で生まれ育って、幼くして死んでし
まった子供が、主人公である友達の家に遊びに来る。


生きているころは、貸してもらえなかったおもちゃで
楽しげに遊ぶ姿は哀れ。


それでも、屋根の上を跳ね回りながら飛んでいく姿は
ユーモラスで心を和ませる。


また、耳元でささやくだけで人を死に至らしめる「送りん婆」。
怖いながらも、その独特な精神、生き方は興味をそそられる。


弟子としてアシスタントを努めた少女はなぜ後を継がなかったのか。
彼女ならずもそんな不思議で強力な力は身を滅ぼす諸刃の刃になる
からだろう。


これらの独特の作風、アイデアに触れることができ、他の作品を
手に取ることが楽しみな作家に出会えた気分。

スパイ大作戦/室積 光
¥1,680
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スパイ大作戦

勝手に採点 ☆☆


時代は高度成長期。陸軍中野学校でスパイ教育を受けた主人公が
アメリカとソ連の間で活躍するドタバタ小説。


筆者は『都立水商!』『ドスコイ警備保障』以来、すっかり精彩を
欠いている。


登場人物のキャラも薄っぺらで全く中身がないし、ストーリーも
ハチャメチャ。まるでギャグ漫画の世界。


もう彼の小説を読むのは時間の無駄!?

うたう警官/佐々木 譲
¥1,890
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勝手に採点  ☆☆☆


北海道警の婦人警察官が何者かに殺害された。
犯行現場は道警が秘密アジトとして使っていた
マンションの一室。


すぐに交際相手の津久井巡査部長が指名手配され、
なんと射殺命令まで許可される。


そんな不自然な道警上層部の動きに疑問を持った
警部補・佐伯は密かに仲間を集め真犯人の捜査を始める。


題名は秀逸。


酔った警察官が演歌を歌うわけではない。

要は内部告発する警官という意味。


道警上層部が、警察の裏金の実態を内部告発する警察官を
殺人犯と断定し、議会で発言できないよう追い詰めていく。


ただし、どうしても納得できない無理な設定が三つ。


1.内部告発者を犯人に仕立て闇に葬り去ろうとすること
→その程度の状況証拠では公判を維持するのが無理


2.真犯人がキャリア警察官僚であること
→軽犯罪ならまだしも殺人を犯すキャリアがいるか!?


3.あまりに早く現場に侵入した窃盗犯が突き止められること
→いくらベテラン捜査官がいても半日は無理。


これら点はスピード感や臨場感を考慮しても、とても腹に落ちる
ものではない。


それでも、真犯人逮捕のために結成したチーム佐伯が、内部
通報者を抱えながら、上層部からの捜査妨害にもめげず、
悪戦苦闘の上解決していくあたりは水戸黄門の如くスカッとする。


せっかくあそこまで頑張りながら、あっさり真犯人を返してし
まうあたりも残念なところ。


よりリアルでスリリングな警察小説を期待したい。

駿河城御前試合/南條 範夫
¥920
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勝手に採点 ☆☆☆


江戸幕府第二代将軍・徳川秀忠の三男で駿府城主・忠長の命
を受けて開催された御前試合。


何とそれは剣士が命をかけた真剣勝負だった。十数番に及ぶ
血で血を洗う凄惨な状況に観客も耐えられず試合の終わりを
願うほど。


晩年、辻斬りや家臣の手打など御乱交が元で自害せしめられた
忠長だけは薄笑いを浮かべ見入っていたという。


何といっても一番気になるのは剣士たちが真剣試合を行う動機。

そのすべてが、美貌の女性に対する執着心が原因。


それもこじ付け気味の理由が多く、終盤に至るに従ってもうい
いやという気分に。


武士道に生きた彼らがそんな理由から命を欠けるとは説得力が
薄い。忠臣蔵のような忠義のための戦いはなかったのだろうか。


戦いの惨状は酸鼻を極める地獄絵。

十数番に及ぶ対局で、結局生き残ったのはほんの数名。


それでも手傷を負ったり、その後殺されたり、なかには観客の
関係者が自害したりと散々な結果。


命の無駄遣いは何も生まないということ。

ハリー・ポッターと謎のプリンス ハリー・ポッターシリーズ第六巻 上下巻2冊セット (6)/J. K. ローリング
¥3,990
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勝手に採点 ☆☆☆☆


ご存じ人気シリーズ第五弾。


ダンブルドアはヴォルデモートの謎を解くべく最上級生となった
ハリーに対して直接授業を行うことに。


記憶術によって除々に明かされるヴォルデモートの誕生秘話。
そして彼を倒すための重要な秘密を彼等は握る。


親友ロンとハーマイオニー、ハリーとジニーとの恋愛模様や
マルフォイ、スネイプの裏切りなど盛り沢山な内容で最終章へ向け
つき進む。


終始いらだっていた前作と異なり、ハリーもだいぶ大人に。
ダンブルドアとの個人授業によって、ヴォルデモートを倒す
「選ばれし者」として急速に自立していく。


魔法学校の授業風景やクディッチの試合、ハグリットとのかけ合い
など楽しげな描写は極端に少なくなり、最終章での対決に向け、
ヴォルデモートの魔の手が魔法学校の至るところに現れる。


何といっても最大のクライマックスは、スネイプの裏切りによる
ヴォルデモートの死。


どうもこうあっさりと片付いてしまうと何か裏がありそう。


最終章ではハリーの死も予想されるだけに、一段の期待と一抹の
不安を覚えながら最終章を待ちたい。

名もなき毒/宮部 みゆき
¥1,890
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勝手に採点 ☆☆☆


「誰か」に続く杉村三郎シリーズ第二弾。


元編集者で今はある財閥グループの広報室に勤務する杉村。


問題児の彼のアシスタントが社内でイザコザを起こしクビ
にしたことから始まる嫌がらせ。


会長から直々に処理を任された彼は、紹介されたある探偵を
尋ねたところ・・・。


読みはじめた途端、前にも読んだ設定と思いきや、「誰か」
続編。


しかし、前作のそこはかとない暖かい雰囲気とは一変し、
連続殺人とそれに絡む主人公の生臭い話。


何の関係もない主人公に、事件関係者の母と娘がいやに
まとわりついてくる非現実性、不自然さががとても気にかかる。


さらに、警察の捜査の網をらくらくと掻い潜る神出鬼没の元
アルバイト女性もありえない設定。


そして極めつけは連続殺人事件の犯人を主人公自ら割り出し、
自供させ、自分で警察へ連行中になんとその女性が自宅で娘を
人質に取って立てこもるなんて!


あまりにもドラマティックな展開に空いた口が塞がらず。


また、土壌汚染やシックハウスに関するうんちくが多く、こじ
つけ気味に「毒」に結びつけるあたりの展開は強引。


殺人事件やRPGゲームを扱う題材はもう飽きてるし、展開が強引
過ぎてついていけないので、ヒューマニティに焦点を絞った
暖かい題材を選んで欲しいもの。

RUN!RUN!RUN!/桂 望実
¥1,500
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勝手に採点 ☆☆☆☆


「県庁の星」でスマッシュヒットを放った著者が描く

箱根駅伝を舞台にした青春スポーツストーリー。


主人公岡崎優は、高校駅伝のスーパーヒーローで将来

の夢はオリンピックでマラソンの金メダルを取ること。


そんな彼は、箱根駅伝の新興有力校S大学陸上部

に入部する。


並外れた身体能力の高さと輝かしい実績から、部内に

チーム岡崎が結成され、彼を全面的にバックアップしていく。


しかし、医学部に通う兄・翼が自殺したことから彼の運命は
急速に変化を迎える。彼が知った驚愕の事実とは!?


「県庁の星」同様、最初はエリート意識むき出しで、周囲と

の摩擦も意に介さない嫌な奴だった主人公が、段々と周囲

に影響され人間性を取り戻して成長していく様を描く物語。


箱根駅伝というドラマティックな題材同様、ストーリ自体も

ラストにかけてかなり引き込まれ感動的。


しかしながら、一点だけ気になる点が・・・。


それが「遺伝子操作」。いとも簡単に優れたアスリートが生ま

れるという設定に唯一リアリティにかける。


しかも、遺伝子検査が実施されることを懸念して駅伝への出

場を辞退するあたりは、これだけ聡明な主人公からは想像が

つかない慌てた対応。


そこが本書のミソになっているので致命的。

月下の恋人/浅田 次郎
¥1,575
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勝手に採点 ☆☆


泣かせるストーリーを書かせたら第一人者の著者が

放つ短編集。


「メトロに乗って」のタイムスリップネタや「活動写真の女」

のオバケネタが多用されて新鮮味に欠ける。


また、短編だけにストーリーや人物描写に厚みがなく、

いきなり終わってしまう感じで消化不良感が残る。


さらに、「これって何が書きたかったの?」と疑問を感じる

ものも多い。


タイムスリップをせず、オバケや神様も登場しない、もっと

リアルで真に迫る物語を書かないと読者に飽きられますよ~。

警察裏物語/北芝 健
¥1,260
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勝手に採点 ☆☆☆


元警視庁刑事の著者が現役時代の経験と人脈を生

かした内部情報を元に警察内部の実態を明かす!


大の警察擁護派を自認するだけあって、警察組織へ

の愛着、エールがにじみ出る。


内容は至って平易。


どちらかというと、夕刊紙ネタのような裏事情を書き

綴っている印象。


本人も現場経験者であるため、ヤクザとの付き合いや、

取調べのコツ、おまわりさんの勤務実態などごく日常に

スポットライトを当て、特に目からウロコのような新鮮味

のあるネタは乏しい。


横山秀夫の著書を読んだり、「踊る大走査線」を見ている

人なら驚くに値しない。


驚くといえば、踊る~の原案は彼から出ているらしい。


その他にも自慢ネタが結構披露されているので、微笑ま

しいと感じる反面、卑しさもにじみ出ている。


結構メディアに露出しているらしいが、未だ見ていないの

でご尊顔を拝見したい。

アラビアの夜の種族/古川 日出男
¥2,835
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勝手に採点 ☆☆☆


中東が舞台の一大抒情詩。


ちょうどナポレオンがエジプトに攻め入ろうとするとき、

エジプト政権の有力者の奴隷であり筆頭執事を勤める

アイユーブは、ある秘策によってこれに対応しようと試みる。


果たしてその秘策とは。結末はいかに。


それにしても長い・・・・。

読み終えるのにこれほどの労力を要した本はないかも。


内容的には、ストーリに直接関連しない長大・難解な比喩が

いたるところに散りばめられ、迷子になりそう。


しかも、登場人物や時代設定がくるくる変わるので、何の話

をしているの分からなくなる。


読解力を試される一冊。


オリジナルは、中東に伝わる古い話とのことで、アラビアンナ

イトや魔人ジニーが活躍するアラジンにも何となく共通点が。


それでも、蛇の魔女や銀髪の魔術師、国王の隠し子で美男

の若者が活躍するあたりは、痛快アクション活劇で楽しめる。


ハリウッドあたりで映画化したら「ハムナプトラ」になりそう。