タルドンネ 月の町/岩井 志麻子
¥1,680
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勝手に採点 ☆☆☆☆


韓国で実際に起った凶悪猟奇連続殺人をモチーフに

犯人の心情、犯行状況、行動を克明に綴った衝撃作。


圧倒的暴力と殺戮。


導入部分の被害者の人間性を全く無視したあまりの残酷さ、

衝撃にしばし呆然。


この事件が気になって調べてみると、マスクを被った本人が

容易に検索される。


彼の真っ黒い瞳にふただび衝撃を受ける。


これほどの深い闇を持つ眼が存在するとは・・・。


十人以上の被害者を出してようやく解決を見た事件。

日本に限らず韓国でも、都会での人間関係の希薄化、

無関心さはかなり進行しているらしい。


これまでの怪奇物語の範疇から完全に脱した岩井氏の筆力

に関心するとともに次回作が待たれる。

憑神/浅田 次郎
¥1,575
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勝手に採点 ☆☆


時は幕末。


学問は昌平坂に学び神童と呼ばれ、剣を取れば

免許皆伝の腕前を持つ出来物・別所彦四郎。


しかし、やっと掴んだ名家の婿入り先からは離縁

され、愛する妻と子とは離れ離れ。


さらに戻った実家では居候扱いで肩身の狭い毎日。


そんな折、うち捨てられた祠に手を合わせたところ、

なんと貧乏神、疫病神、死神と三段階で祟られる始末。


一体彼はどうなってしまうのか!?


喜劇なのか悲劇なのか、時代物なのか、すべてを取り

こんだせいで焦点がボヤケタ印象に。


コメディータッチを基本に共感しやすいペーソスを織

交ぜてくれれば良かったものの。


ラストにかかる武士道だと、男の死に場所だのの

薀蓄、理屈は全く理解できず。


時代の流れも異様に速く、あっという間に大政奉還、

鳥羽伏見の戦いへ。


客観的事実を町民の方が知っているあたりも、現実

的にはあり得ず、違和感ばかり。


稀代のストーリーテラーもたまには失敗してしまうと

いうことか。

男たちの長い旅/北方 謙三 他
¥880
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勝手に採点 ☆☆


北方謙三や石田衣良、奥田英朗など人気作家が綴るハード

ボイルド系作品集。


短編集だけあって、物足りない感が強い。


それでも、ブラックユーモアたっぷりで楽しめたのは、奥田英朗。


古いアメリカのコメディ映画にあるような設定で、狭い自動車に

次々と乗り込む乗客たち。


それも、普通は乗せないような様々な人たち。


彼らが車内で繰り広げるドタバタ喜劇はほほえましい。


その他の作品は好みがかなり分かれるところ。

基本的には探偵が主人公であることが多い。


日本でハードボイルドを普及させるのはかなり至難の技といえる。

鳥肌口碑/平山 夢明
¥1,260
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勝手に採点 ☆☆☆☆


読むと鳥肌が立つような世にもおぞましい話70編を

集めたショートショート。


前半は怪奇現象、後半は人間の狂気がテーマ。


すべて「・・・こんな譚を聞いた。」が枕詞で始まる。

終盤はこれを見ただけで鳥肌が・・・。


実話なのかフィクションなのか良く分からないところが

不安感を増幅させる。


前半は怪談話が多いので新鮮味は欠けるし、なにせ

一編が長くても2ページ程度と短いので、描写不足は

否めない。


しかしながら、それが作者の意図でもあるように、恐怖

体験の突然感と殺伐とした余韻を生むことに成功。


後半の話は、泥棒やストーカーが主体だが、かなりリアル。

しかも、そんな体験絶対したくないものばかり。


瞬間接着剤で目を塞がれ、高所へ連れて行かれたり、棺

おけに入れられて産廃処理場へ放置されたり・・・。


う~、思い出しただけでも寒気が。

くれぐれも心臓やショックに弱い方はお控えください。

ガイアの復讐/秋元 勇巳
¥1,680
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勝手に採点 ☆☆☆


地球を自己調節機能を持った一種のシステムと考える地球観

「ガイア」理論。


その提唱者であるジェームズ・ラブロックはガイアの危機的

状況を伝え、一刻も早く温暖化を食い止めなければならない

と説く。


20年~30年前、このガイア理論が提唱されたころは、地球が

調節機能を持っているなんてと大変な反発にあった模様。


しかし、今では環境省がチーム6%に取り組むなど、二酸化炭

素の排出は悪とみなされ、それを減らす取り組みが企業や家

庭で世界的に行われている。


この書での主張のポイントは、原子力発電の強力な推進。

普通、この手の環境保護系の運動家は、原子力=悪とみなす

のが当たり前。


なんでも二酸化炭素を撒き散らす化石燃料よりも環境に優

しく人体への影響もほとんどないらしい。


広瀬隆が聞いたら卒倒しそうなご意見。


チェルノブイリ原発事故で亡くなった人が100名以下なんて・・・。


それでも、エネルギーのベストリミックスを目指そうとする姿

勢は共感できるし、何でも原発反対と言うのも疑問。


今の生活の質を落とさずに温暖化を食い止めるのは至難の

技ということが痛感できる一冊。

まずは身近なところからはじめてみようっと。

うたかた (下)/渡辺 淳一
¥550
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勝手に採点 ☆☆


中年作家と着物デザイナーの人妻の不倫劇。

果たしてその結末は。

どうもこの人の文章はお爺ちゃん臭さが抜けない。


いまどき着物を着るのが好きな50代っているかいな。


どんな文章を書く作家か知らないが、暇も金もあって

不倫相手と旅行&食事三昧とは羨ましい限り。


その上、家族はそんな父親には関心なさげ。


一方、人妻の方は小さな子供がいながら、母親に

預けて仕事&不倫三昧。


旦那からは暴力や嫌がらせを受けているようだが、

どうも生活感に乏しい。


二人で熱海、京都、北海道と旅行して夜はハッスル。

なんと我がままジジイの気まぐれで剃毛プレイまでも。


お爺ちゃんの「こんな不倫してみたいな~」的妄想小説

をなんでマスコミはこぞって取りあげるのだろう。


どこに文学的価値があるの?と首を傾げざるを得ない。


よっぽどフランス書院の作品群の方がいろいろなシチュ

エーションがあるはず。

燃えよ!刑務所/戸梶 圭太
¥980
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勝手に採点 NG


刑務所の収容率超過、懲役刑の短縮により凶悪事件の

増加が深刻な状況に。


警察OBで刑務所のあり方を考える政府機関の委員を努める花菱

城一郎は、なんと刑務所の民営化を実現しようと奔走する。


それも、刑務所をエンターテイメント化して受刑者のプロレス興行や

果ては映画制作を挙行するといった暴挙に出る。


果たしてその結末はいかに。


ひどい、ひどすぎる。

中身はマンガ以下のお下劣ハチャメチャストーリー。


まともな方々は決して手に取らないだろう。


都立水商(おみずしょう)!/室積 光

ドスコイ警備保障/室積 光

のようなハチャメチャギャグストーリながら、ところどころにホロリとさ

せるようなアクセントがあるかと思いきや、全くなし!


理屈とか現実性からは全く乖離した、著者のわがまま放題の駄作。

ここまで釘を打っておけばうっかり手に取ってしまう方もいないだろう。

フライトプラン/ピーター・A・ダウリング
¥600
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勝手に採点 ☆☆☆


ベルリンで航空機メーカーの主任設計士を務めるカイル。

彼女は、突然に不慮の死を遂げた夫のため、娘のジュリア

と共にアメリカへ帰国することに。


自身が設計した飛行機で帰国の途上、ジュリアが忽然と姿

を消し、必死に機内を捜索するが見つけられない。


機長や乗務員、連邦保安官へ必死に説明するが、乗客名

簿にジュリアの名前はなく、なんと夫と共に死亡しているとの

連絡が現地の葬儀所から入る。


娘は本当に乗っていなかったのか!? 一体どこに!?


さすが映画ノベライズだけあって手に汗握る緊迫した展開。

航空機という密室内での事件だけに否が応でも引き付けられる。


そのうえ、夫を失った悲しみから、精神錯乱をきたした女性との

烙印を押されたカイルの活躍劇は読み手の共感を呼ぶ。


少々腑に落ちないのは犯行動機。

ここまで手配して準備するほどリターンは得られるだろうか。


過去のハイジャック犯の動機を見ても、単なる金欲しさで犯行

に及ぶ例は少ない。


お約束だが、マッチョで凶暴な犯人が、肉弾戦で可憐なヒロイン

にあっさりやられてしまう展開もお粗末。


これはやっぱり大型スクリーンで映像を楽しんでこそ良さが分

かる作品である。

用心棒日月抄/藤沢 周平
¥1,680
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勝手に採点 ☆☆☆☆


シリーズ第1作。


若干26歳の藩士・青江又八郎は藩主毒殺の陰謀を偶然知り、

すぐさま許婚・由亀の父に相談を持ちかけたところ、逆に襲わ

れ、反射的に切り捨てる。


脱藩して江戸に逃れた又八郎は、用心棒や力仕事で食いつな

ぎながら、国許から送られてくる刺客を次々と倒していく。


由亀が父の仇討ちのため又八郎の前に姿を現すまで。


又八郎や同業の細江も若く、剣が冴え渡るあたりは痛快。


そのうえ、本編は忠臣蔵でおなじみの赤穂浪士たちの活躍を

絡めながら、絶妙なタッチで描かれる。


一方、用心棒家業から派生するサイドストーリーも格別。

江戸に生きる町人たちの暮らしぶりが活き活きと伝わってくる。


そんななか、又八郎が守りきれなかった遊女の悲しい死。

仇を取っても彼女の命は返って来ない。


日々の暮らしの中で、刺客の襲撃に備えることも忘れ始めた

ころに届く朗報。


藩の実権を掌握しつつある間宮中老からの救いの手。

しかも由亀が年老いた祖母とともに彼の実家を守っていた。


彼の証言により陰謀の黒幕は倒され、又八郎は元の役目に

復帰する。


次シリーズより重要な役どころを担う佐知もラストに登場。

これからの新たな展開を予感させる。

ドリームバスター〈3〉/宮部 みゆき
¥1,680
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勝手に採点 ☆☆


地球人の夢のなかに逃げ込んだ凶悪犯たちを捕ま

えるため、別次元の人類から来たドリームバスター。


彼らの二つの世界での活躍を描く冒険活劇。


そもそも設定自体が複雑で容易に理解できないので、

万人に受け入れられるタイプの内容ではない。


そのうえ、このパート3は完全に次作へのつなぎとなって

おり、すべて中途半端な形で終わってしまう。


長編大作であれば、模倣犯のように厚くても完結する

形で出版して欲しいもの。


もしや「日本版ハリーポッター」を狙っているのではと

疑いたくなるようなつくり。


宮部氏の作家としての力量は衆知が認めるところだが、

こと趣味であるゲーム関連の題材ものは、いささか完

成度に難があるといえる。


ただ、本作を読んだ以上は当然次を読まないと無駄に

なってしまうので、早々に出版をお願いしたい。