著者: 東野 圭吾
タイトル: 毒笑小説

勝手に採点 ☆☆☆

標題からお察しの通りブラックユーモアに溢れた短編集。
抱腹絶倒型ではなく、毒がちりばめられ、クスッ、ニヤッ
とするような笑いを奇抜な発想で描く。

ただ、「ホームアローンじいさん」と「花婿人形」は途中から
結末がわかってしまい興ざめの感。特に後者は今まで
どうしてたんだよ!突っ込みたくなる。

最後のオチもいただけない。もう少し違った展開で花婿の
滑稽さを伝えて欲しかった。

一番良かったのは「つぐない」。思わず「愛をつぐなえば~♪」
と口ずさみたくなるタイトルだが、ストーリーは全く無関連。

さえない中年サラリーマンが、個人教授を付けてまでピアノを
特訓して、しがない発表会で披露する理由とは?

ラストは切なさと程良い感動が胸を包み、同じ感覚を味わった
氏の別作品を彷彿とさせ、これってユーモア?と少し疑問に。

ところが、巻末の「東野&京極」の対談を読んで納得。
「へぇー、そうだったんだー、確かに似た感じがある」と疑問
が氷解し大満足。

この対談では、人気作家二人がユーモアに対する姿勢・考え方
を率直に語りあっておりとても興味深い。特に「笑わせる方が泣か
せることよりテクニックが必要」というくだりには感心させられた。

これほどの作家でも、はずす、シラける、おもしろくないヤツとい
うレッテルを張られることに恐怖してるってこと。

本編には「鉄道員」のような珠玉の一品があるわけでないが、作家の
笑いにかける挑戦、意気込みのようなものを感じさせる意欲作と言える。


著者: 京極 夏彦
タイトル: 魍魎の匣―文庫版

勝手に採点 ☆☆☆

人気の京極堂シリーズ第二弾!
魍魎に魅入られた空間恐怖症の犯人が引き起こす惨劇。
匣を祀る奇怪な宗教団体、連続少女バラバラ殺人事件、
天才科学者美馬坂幸四郎の正体とは?

鍵を握る元女優に淡い恋心を抱く刑事木場。ご存じ探偵
榎木津、作家関口も大活躍。
京極堂は難敵相手に憑物を落とせるのか!?

最近のものは、キャラクターの性格が定着し、研ぎ澄まさ
れ、単独行動が多くなってきてるだけに、主人公達が結末
以外でも結構絡んでいるので掛け合いが楽しめる。

設定としては若干「絡新婦の理」に似たところもあって、
それほど新鮮味は感じなかった。

また、研究所や研究内容が非現実的過ぎてあまり馴染め
ないこと、患者が消えるトリックが陳腐なこと、美馬坂と
陽子の関係が短絡的すぎということで満足度はいま一歩。

ただ、隙間を埋めずにいられない衝動はかなり奇抜。
箱にしまって大事に取っておきたいということはあるけど。

場面場面で織り込まれるこの妄想に取りつかれた人間の独白
がこの物語を一層幻想的に仕上げていて効果的。

それと宗教はそれが布教のため組織化されることで、本来の
宗旨を失って、法人化、営利化していくものだなと感じざる
を得ない。

「犯罪は、社会的条件と環境条件と、そして通り物みたいな
狂おしい瞬間の心の振幅で成立するんだよ。」

という京極堂の言葉が含蓄深い。


著者: 高見 広春
タイトル: バトル・ロワイアル

勝手に採点 ☆☆☆☆

東洋の全体主義国家、大東亜共和国において繰り広げられる
中学生を対象にした「殺人バトル」。ルールはいたって簡単。
クラス内で最後まで生き残った1人が勝ち。

狂気の世界に突き落とされた「城岩中学校3年B組」の生徒達の
運命は?勝者は誰の手に?

大人がエンターテイメントとして読む分には、フィクション・
娯楽として単純に楽しめた。ゲーム感覚で描かれているので、
スピード・スリル感は申し分なし。

ただし、殺戮シーンや残虐な描写も多々あるので、子供に読ま
せるのはおすすめしない。

着想の独創性には感服。ストーリー、登場人物の設定は単純その
もので複雑さとは無縁。

生徒内における疑心暗鬼、恋愛、信頼、裏切り、そして駆け引き、
みんなで信じあって仲良くやっていこう!が全く通じない世界・・・。

目の前でクラスメートがバタバタと死んでいき、殺さなければ、
殺されるかも知れない過酷な現実・・・。

そんな中でも良心的な主人公たちと悪人の代表みたいのが生き残り、
対決!そして、仲間の裏切りか?といった終盤は、お約束どおりで
意外性はないものの、ストレートなだけ感情移入もしやすい。

にっくき「坂持金発」の扱いなんかは、まるで水戸黄門!を見てる
ようで胸がすく。

ただひとつ気がかりなのは、ゲームやこういった小説に悪影響を受け
て、子供達が変な方向に行かないように注意しなければならないこと。

人間の欲求として、「残虐さ」を好む傾向があることは否めない。
いじめや虐待もそうした深層心理が影響しているため、根絶することは
困難だろう。

両親や学校がそうした気持ちをいかに建設的、創造的な方向へ導くかが
重要な鍵であることを忘れてはならない。


著者: 恩田 陸
タイトル: Q&A

勝手に採点 ☆☆☆

とある郊外の大型ショッピングセンターで起こった死者69名、
負傷者116名の大惨事。一体何が原因なのか?

関係者へ「Q&A」形式でインタビューし、その隠された真実
に迫っていく異色作!

恩田作品は初挑戦とあって、手探りで読んでいきましたが、
読後の感想を一言で言うと「こんなんもありです」という感じかな。

事件の客観的説明なく、当事者からの証言によって構成させる本編、
はっきりとした原因を解明することなく迎える結末にも、理不尽さ、
説明不足は感じなかった。

多分、読み手がいろいろと想像できるように作った印象。

ただ、かといって何かのテーマについて深く考えさせたり、描かれた
事件に感動するようなところもない。

「何でなの?」ってさらっと読んでいって、最後に「こういうことも
あるかもしれないよね」と感じて、はいオシマイ。

小説はいろいろなジャンルがあるから、手に汗握ってスリルがある
のも、感動して涙するも、本品のように「ふーん」と終わるのもあり
じゃないかな。

ただ、証言者がいろいろ出るので、場面設定の切り替えがうまくでき
ないと、途中で飽きてしまうところがあるので要注意。


著者: 高野 和明
タイトル: 幽霊人命救助隊

勝手に採点 ☆☆☆

自殺して魂さまよう男3人女1人が、神様から天国行き
の切符を手にするため課せられた試練は、100人の自殺
志願の人命を救助すること!

タイムリミットは1ヶ月!涙ありお笑いありの痛快小説!
あなたならどんな方法で自殺志願者救助しますか?

まず、第一に感じたのは設定が安易なこと。着想は
なかなか期待させるものがあるが、神様が人間的すぎ。

そこらの人の良いオッサンと変わりない。通信手段が
携帯電話ってのもね~。幽霊同士もっとスピリチャル
な交信方法ぐらいあっても。食欲、性欲がないのは頷けるが。

それと、志願者が変心する過程もちょっと安易なものが
多いかな。なかには、エー何でってのも。全体的にそう
した安易さがこの物語自体を表面的な薄っぺらい印象に。

幽霊達が様々なケースの自殺志願者にぶつかり、救助したり、
悩んだりする姿に共感し、感動し、喝采したい場面も多々
あるので残念。

雰囲気的は「ゴーストバスターズ」の痛快さと+「ゴースト」
の感動が組み合わさった感じ!?

主人公が大学受験に失敗し、挫折とプレッシャーから自殺を
図るが、残された両親、妹の苦悩は察するにあまりある。

軽妙なタッチで進行するものの、所々にちりばめられた悲しみ、
後悔、命の尊厳が程良いアクセントになって飽きさせない。

何と言ってもラストは○


著者: 山田 宗樹
タイトル: 天使の代理人

勝手に採点 ☆☆☆☆

自らの経験から、妊娠後期の人工中絶を阻止しようと立ち上
がる助産婦とその協力者たち。彼女らが遭遇する中絶を望む
女性達の複雑な事情。

子供の命の尊厳を守ろうとする女達の苦難な闘いを描くヒュ
ーマンドラマ。

かなり重いテーマを扱っているためか、結構読み進めるのに
苦労した一冊。こんなことが実際に行われているかと思うと
背筋が凍る気持ちになる。

ただ、中絶が許されるケースとそうでないケースって扱いが
微妙だ。レイプされたり、母胎に生命の危険がある場合は理
解できるが、本書で扱ったケース全部が明確に「許されない」
と断罪するのは酷な気もする。

せっかくこの世に生を受けても、昨今は虐待によって尊い命
が失われたり、傷つけられたりと悲しい話題も多い。

それではどうすればいいのか・・・。

地道であるが、子供のすばらしさ、産んで育てることの喜び
を普遍的に広めていくことが大切ではないか。

私も子供の分娩に立ち会い、育ててみて、始めて「子供が大切なこと」
を実感できた。

本書のラストには中絶を思いとどまった母子の厳しい現実と
ひたむきな生活ぶりが描かれている。

やはり苦楽をともにする覚悟がなければ、厳しい生活環境下
での育児は大変だが、子供と格闘し、その成長によって自分
もまた成長させられる貴重な経験は何物にも代え難い。

その過程で得られる感動・喜びをできるだけ多くの人が共有
できればいいと痛感した。


著者: 京極 夏彦
タイトル: 文庫版 絡新婦の理

勝手に採点 ☆☆☆☆

人気の京極堂シリーズ第5弾!
房総のとある女子校を舞台に繰り広げられる連続殺人劇。

悪魔・魔女崇拝に溺れる女子中学生、女性連続目潰し殺人鬼、名門
富豪・織作家に秘められた禁断の過去、それらが複雑に絡み合い、
八方に張り巡らされた蜘蛛の巣に捕らわれていく・・・・。

この悲劇は悪魔の呪いか?謎の解明に京極堂が立ち上がる!

このシリーズを読むにあたって最も失敗した点は、順番どおり
進めなかった点。

物語が微妙に重なるし、登場人物も洗練されていくので、ぜひ
シリーズ順に読むべき!

内容的にはシリーズ中、最もエロティック&ショッキング!
また、次作「塗仏の宴」に比べると入りやすい気がします。

最もこの読みにくさ、複雑怪奇な理屈がたまらないという方々
も多いでしょうが。

ちょっと混乱したのが構成。最後まで行ってから最初に戻って読み
返して、やっとああ、こういうことかと納得。

できれば間を空けて、もう一度読んだ方が良いかなと感じました。

なにせ文庫本としては超分厚くボリューム満点!
一度通読したぐらいではもったいない気が・・・・。

終盤の京極堂の活躍には胸のすく思いがしますが、関口にはもうちょ
っと出て欲しかったかな。まあ、次作で過酷な苦労をするから休養か。

それにしても毎回思うのは複雑なストーリー構成と独特な時代設定、
登場人物の役割・人間像の描き方が見事な点。

映画の封切りも期待大。
勝手に採点 ☆☆☆

予知、念力放火、透視といった超能力を生まれながらに
身につけた女性達の3編の物語。パイロキネシスを題材
にした「燔祭」は映画化された「クロスファイア」へと発展。

一番良かったのはタイトルにもなっている「鳩笛草」かな。
ストーリーが最も現実的で貴子を取り巻く刑事達の温か
みが伝わってくる。

「凍える牙」のような女性刑事物はあまり好みませんが、
目立って活躍するでもなく、徐々に喪失していく自分の
能力に戸惑い、悩むひとりの女性を淡々と描いています。

できれば続編が期待されるところです。

「朽ちてゆくまで」は結末が寂しすぎる感じ。
もう少し早く助けてあげても良いと思う。
ストーリーにもよりますが、悲しい結末よりはハッピーエンドが○。

「燔祭」も全体的に陰鬱な印象。すでに「クロスファイア」
を読んでいただけに、青木淳子の未来が暗示され少し
悲しい気分になる。

「弾を込めた銃」の如き能力を持って生まれる悲劇。
そんな能力があったら、彼女だけでなく誰でもそれを使
ってみたくなるのだろう。

この薄幸な女性達の悲哀を描きつつ、一級のエンタテイメント
に仕上げる宮部氏の力量には感服です。


著者: 宮部 みゆき
タイトル: 魔術はささやく

勝手に採点 ☆☆☆

連続殺人事件と催眠術を関連づけた宮部ミステリー初期
の作品。

小説を読み終えたとき、ストーリー全体に辻褄や整合性、
納得感がないと私の中では良い作品とは呼べません。
あくまで主観的な見方ですが・・・。

読後の最初の印象は、「催眠術の使われ方があまりに
都合がいいな」というもの。さすがに書中でも、心に隙が
あったり、後ろめたい気持ちがないと、ここまでうまくいか
ないとありましたが、ちょっと納得できるレベルではないかな。

特に副社長は催眠術に操られてるといった感じ。
サブリミナル効果も今となっては手垢が付いた題材だし、
それが基で突然非現実的な行動をとるのもねー。

ただし、主人公「守」の描写は素晴らしく、感情移入も
しやすいため、かなり引き込まれるものがあります。

また、金庫屋のおじいさんやあねご、書店の上司など魅
力が溢れ、多彩な登場人物は読者を飽きさせることなく、
最後まで一気に読み進めることができます。

本品のストーりー的な違和感を除去したものが「龍は眠る」。
一緒に読むのもかなりお勧め。

宮部氏の少年ものミステリーは、自分探しの側面があって
なかなかおもしろいです。


著者: ガッツ石松&鈴木佑季, EXCITING編集部
タイトル: 最驚!ガッツ伝説

勝手に採点 ☆☆

話題になった芸能人本。
あのガッツ石松氏の公私わたる驚愕のエピソードを満載

まず、現物を手にとってびっくりしたのが本の薄さ。
大きさ厚みとも岩波新書のよう。ただし、文字は特大!

完読するのに1時間もかからないほど。
抱腹絶倒するかと思いきやそれほどでもなく、どちらか
というと感心させられた印象。

さすが長年芸能界を生き抜いて来ただけあってその特異
な個性には感服。

しかし、氏の行動は天然というよりも、ある程度計算さ
れたものもかなりあると感じた。ということは、彼は単
なる変なおじさんではないようだ。

如何にして自分を「売れる商品」にするかよく分かって
いる。もちろんスタッフの多大な努力の賜だろうが。

テレビでは容姿や言動を茶化されたり、からかわれたり
して、ちょっと可哀想に見えるときもあるが、それもき
っと自然に身につけた特有の「商品化」であることは間
違いない。

今風のサングラスと白いスーツに身を固めた写真の、見
ているものの心を見透かすような瞳が印象的。

読書というよりは漫画を読む気持ちでご覧あれ。