東野 圭吾
眠りの森

勝手に採点 ☆☆


名門バレエ団で起った殺人事件。

夜間に忍び込んだ泥棒を女性団員が正当防衛で殺害。


賊の背後関係を捜査するうち刑事加賀は意外な接点に着目する。

そんななか、公演中に主任演出家がされ・・・。


あまりに理屈っぽく現実感の欠けた設定にがっかり。

いわゆる安っぽいミステリーの仕上り。


第一の殺害時点で、なんでとっさにそこまで思いつくの?、

交通事故で聴力を失うって?、公衆の面前で毒物を注射するなんて

可能?と突っ込みどころ満載。


演出家を殺害する動機も説得力なし。

ニコチンで殺せても、ホントにそこまでするかな~。


加賀とプリマ美緒との恋愛模様もかなり中途半端。

特にラストはありきたり。

奥田 英朗
イン・ザ・プール

勝手に採点 ☆☆☆☆


人を深刻にさせない天性のキャラクターを持つ精神科

医伊良部。


またまたヘンテコな症状で苦しむ患者たちを救うべく

奇天烈な対処療法を実行する。


自己中心的性格・マザコンの中年デブで絶対良い所が

ないはずの人物ながら、その天真爛漫さで知らずに知

らずのうちに人を引き付け、症状を改善させる。


天賦の才能とはまさにこのこと。


今回の患者たちは、プール依存症の編集者、ケータイ

依存症の学生、あそこが立ちっぱなしの会社員、強迫

観念症のコンパニオン、ライターと多種多様な取り合わせ。


彼の診療は至ってシンプル。栄養注射を打って、その後は

患者と一緒に生活に溶け込んでいくこと。


伊良部のあまりの馬鹿さ加減に、自分がしっかりしなきゃと

思い、症状が和らぐと同時に、そんな伊良部に癒されしまう。


ほんとにこんな先生がいたら大変だが、一度は訪ねてみた

いもの。

乙一
小生物語

勝手に採点 ☆☆☆


愛知県から東京へ上京し神奈川へ転居するあたりの

日常を、自由気ままな文体で描いた本人のWEB日記。


いまではブログやSNSの登場で全く珍しくなくなった

日記を早い時期から記していた乙一。


作家として自立して行くも、時折見せるごくごく一般人

的視点が頻出して微笑ましい。


特に上京したとき寝泊りするのがマンガ喫茶だったり、

各社の編集者に連れられていく食事の豪華さに気後れ

したり、サイン会で狼狽ぶりなど。


また、日記といいながらも、小説の小ネタのような話が

ちょくちょく出てくるあたりも飽きさせない。


ぜひ、このweb日記再開して欲しいものである。

古田や真鍋を超える存在になるかも!?

重松 清
その日のまえに

勝手に採点 ☆☆☆☆☆!


大切な人との永遠の別れをテーマにした連作短編集。


不治の病に冒された本人の絶望、想いと、母、息子、妻、友

人との死別によって残された者の悲しみ。


それでも前向きに生きようとするひたむきさ、健気な姿を正面

からきちんと描いた印象。


特に家庭をお持ちのお父さん方にはおすすめ。

久しぶりに電車の中で涙が止まらなくなった。


特に題名にもなっている「その日のまえに」、「その日」

「その日のあとに」の三部作は、その前の短編とも連動して

いてよりいっそう深い感動が味わえる。


奥さんには悪いが、自分に置き換えたとき、こんな冷静に、

そして静かな生活を妻と過ごせるだろうか・・・。


現実に起ったらあまりに厳しいシチュエーションに気が動転

してどうにかなってしまうに違いない。


文中でもそれを知った直後とそれから気持ちが落ち着いて

くる過程、それでもしばしば訪れる悲しみを丹念に描く。


我々旦那諸氏よりも、もっとつらいのは子供たち。

息子たちの悲しみ、健気さがいやと言うほど伝わってくる。


今ある生活、家庭の大切さを改めて実感できるとともに、

思わず、がん保険に入っておかなきゃと痛感。

新堂 冬樹
背広の下の衝動

勝手に採点 ☆☆☆


中年サラリーマンなら誰もが抱える不平不満が増幅し

ついにそれが爆発するエピソードを描いた短編集。


そこまで行ってしまう行動は理解できないものの、彼ら

の心情は痛いほど分かる。


特に上司に理不尽に叱責され、妻からは不平不満、娘からは

人間扱いされない男は、典型的日本型会社人間。


彼は不幸な結末を迎えるが、煩悩からは開放されるだろう。


一方、娘の家庭教師と妻の間に、一方的な嫉妬を抱える旦那

の心境は全く同感できない。


結末もこじつけに近く、作り物のイメージが払拭できないので、

ひねりを効かせて欲しかった。


強烈なコンプレックスを抱える主人公たちが繰り広げるホーム

ドラマには心休まる暇がない。

奥田 英朗
空中ブランコ

勝手に採点 ☆☆☆☆☆!


中年のデブで実家の病院で精神科医を勤める伊良部。

変人の彼の下に集まる患者たちも、かなり変わった病

状で苦しんでいる。


空中ブランコに乗れなくなった空中ブランコのリ、1塁へ

の送球が出来なくなったプロ野球選手、小説が書けなく

なった女流作家、破壊衝動に駆られる精神科医など。


そんな彼らにぶっといビタミン注射を打ち、自分が存分

に楽しみながらも患者を開放に導く過程をユーモアた

っぷりに描く。


題名にもなっている「空中ブランコ」は、テレビドラマで

確か阿部ちゃんが変な精神科医を熱演。


ここで描かれる先生は、阿部ちゃんとはかなり隔たりの

ある不細工&デブだが、なぜか好感が持てる。


抱腹絶倒とまではいかないものの、相当ヘンテコな医者

の登場に拍手喝さい。


彼の物事に熱中する姿に感化され、気づかされ、立ち直る

きっかけを掴む患者たち。


強迫観念にとらわれる彼らを救う手立ては、ありのまま、

あるがままに生きる自然さ。


ストレスの多い現在社会で、そうやって生きることが一番

難しいが、それを体現する彼に共感を覚えるのだろう。

伊坂 幸太郎
魔王

勝手に採点 ☆☆


物事を深く、突き詰めて考える癖のある兄と気ままな生活を楽しむ

弟、そして弟の彼女の物語。


そんな兄に宿った不思議な力。宮沢賢治を愛好する新興政治家の

出現に危機感を覚え、その力を最大限活用すべく行動にでるが・・・。


正直がっかり。まず設定に新鮮味が感じられない。

両親のいない兄弟や仙台という設定からもう離れるべき。


ストーリー自体にも意外性や独創性に欠け、ストンと腹に落ちない

もやもや感が残る。


兄の意思が弟に引き継がれるわけだが、それもかなり中途半端に

終わりを迎える。え、これで終わりなの?という感じ。


政治家の描写、背景も説得力が足らず、彼をそこまで危険視する

意図がイマイチ伝わってこない。


独裁者=ファシズム=悪みたいな図式は、いまさらだし、平和

憲法改正論議というテーマも氏の小説の題材としては不向き。


政治的背景や信条と離れ、よりファンタジックな色彩の強い、深い

余韻を楽しませてくれる作品を望みたい。

村上 春樹
東京奇譚集

勝手に採点 ☆☆☆☆


身の回りの不思議な話を集めた中編集。


とはいっても村上氏の話はもともと不思議で幻想的世界が

多いので違和感なく入り込めるはず。


サーファーの息子を無くした母、ある女性を待ち続ける小説家、

名前を盗む猿、行方不明者を探す探偵など。


特に猿のお話は、羊の話にどこか似ていて、微笑ましくも

深く考えさせる作品。


彼女が名前を託した理由は一体なんだろう。


とはいえ、一番不思議で引き付けられるは、冒頭で語られる

ご本人の体験談。


ジャズといい、ゲイの調律士といい、奇跡的な偶然の一致と

はあるんだなぁと感心することしきり。


さらにすごいのは、ここまで読ませ、余韻に浸らしてくれる氏

の表現力と文章力。この続きがもっと読みたい。

宮部 みゆき
孤宿の人 下

勝手に採点 ☆☆


待望の時代物最新刊。


江戸中期、讃岐国丸海藩へ幕府で勘定奉行を務めた大物

加賀がある罪を負って流されてくる。


その罪とは、妻子と部下を切り捨てたというもの。


理由を語らぬ悪魔の所業に影響されたのか、藩内でも流行病

や殺人、暴動が次々と発生する異常事態に。


藩のお家騒動と加賀の真意を巡って混迷の度を深めていくが・・・。


あまりに暗く、いつもの清清しさと全く無縁。


登場人物のほとんどがあっさり死んでいってしまい、

感情移入をする間もない。


それも死に至る理由が不可解で強引。

女子供たちまでも殺すことはなかろう。


親分や石野が殺されなければならない理由も乏しい。

ほうや宇佐が置かれている境遇も悲惨で陰鬱。


さらに不可解なのは加賀の存在と庶民の暴動に至る不安感

の増長。背景は分からないでもないが、あまりに難解。


これでは一般読者のハートはがっしりつかめない。

シドニィ シェルダン, Sidney Sheldon, 天馬 龍行
逃げる男

勝手に採点 


マフィアのドンの殺害犯行現場を目撃し、FBIの要請で法廷で証言

することになった主人公。


しかし、マフィアの強引な圧力で評決が無罪となり、一点命を狙わ

れる羽目に。


証人保護プログラムの適用で防備されるも、次々とマフィアの魔の

手が迫る!


近年まれに見る駄作!


十数年前、「ゲームの達人」で見せた筆力が全く衰えたとしか言い

ようがない。


大胆なストーリー展開や奇抜なアイデアとは無縁のただ逃走先で

恋をして逃げ出す繰り返し。


それも決まって美女と恋に落ち、偶然の幸運で難を逃れる。

こんな人生だったら誰も苦労はしない。