- 大沢 在昌
- 魔女の笑窪
勝手に採点 ☆☆☆
男を完璧に見抜く力を持つ女性が主人公の異色ハード
ボイルド。映画「ニキータ」ばりのアクションが鮮烈。
コンサルタント、占い師として活躍する水原は地獄島から
抜け出した伝説の遊女。
ある事件をきっかけに素性がバレ、地獄島の番人に追わ
れるが・・・。
ニヒルな男性が主役をつとめることが多い大沢作品のなか
ではかなり珍しい設定で、かつ相当ありえないよ~的ストー
リーに面食らう。
なかでも、暴力団でさえ敵わない番人を拳銃を使って血祭
りに上げ、警察の捜査をかわしていくあたりは、法治国家
日本では実行不可能。
警察がそんな売春島の存在を黙認していること自体説明が
つかないし、追求がかなり甘い。
もちろん、そうでないと話が進まないのだが、それでもある
程度の納得性は必要。
それとも裏社会にはこういう伝説の女性も存在するということか。
- 浅田 次郎
- 沙高楼綺譚 草原からの使者
勝手に採点 ☆☆☆
各界の名士が集う高級サロン「沙高楼」
そこで繰り広げられる最高の贅沢は「事実は小説より
奇なり」を地で行くようなあっと驚く体験談の数々。
大掛かりな詐欺にあって無一文になった大富豪や首相の座を目前
に死んでしまった政治家の経緯、日本有数の馬主がその地位に上
り詰めた理由など、確かにあっと驚くタメゴロウ。
ただ、「沙高楼」という設定自体や自ら語る体験談もかなり現実離れ
しているのでイマイチのめり込めない。
特に大富豪の話はあまりの転落人生ぶりにそんな話あるわけない
じゃんと感じてしまい、同情の念を禁じえない。
そんななか、「星条旗よ永遠なれ」は笑いとペーソスが絶妙に溶け
合った珠玉の一遍。アイデア自体はバカバカしいのだが、退役軍人
の友情、日本人妻への愛情など読みどころ満載。
あまりに健気な老軍人たちの姿が目に浮かぶ。
あと数十年したら自分も日章旗がでるのか気になるところ。
- 加藤 廣
- 信長の棺
勝手に採点 ☆☆☆ ![]()
消えた織田信長の遺体をめぐる長編ミステリー。
信長の家臣で文才に優れ、信長の資料として評価の高い「信長公記」
を著わした太田牛一を主人公に、後に彼が仕えた豊臣秀吉も絡めな
がら、その隠し場所を推理を元に探し当てていく。
結末よりはその過程で楽しませてくれる。
特に偶然にもたどり着いた僧侶との出会いはまさに邂逅。
若い女性との生活はうらやましい限りだが、実はスパイだったという
落ちがつき、さらに身分を明かして許しを請い、結局子まで授かる
ハッピーエンド。
その親戚が謎を解き明かす鍵を握る僧侶だったとはあまりに出来
すぎの感。
それと、信長の願望が天皇と一緒に天体観測!?っていうのは幼稚で
説得性に欠ける。
本能寺のトンネルや後の政争の道具になることを避けるため、遺体
を秘匿した秘話、明智光秀が裏切った動機など独創的なアイデアが
盛り込まれているだけにちょっと残念。
歴史にifは禁物だが、信長が生きながらえていたとすると、どんな
歴史が作られていたのかとロマンが掻き立てられる。
- 石田 衣良
- 4TEEN
勝手に採点 ☆☆☆☆ ![]()
東京月島に住む中学生4人の友情を爽やかに描いた青春
グラフティ。
ただのまじめな中学生というよりは、好奇心旺盛でちょっと
ワルイことにも興味があり、友達のためなら一肌脱ぐのも
忘れない良い奴ら。
最初は「なんだ、ガキの話かと」
期待していなかったものの、読後は清清しく、ノスタルジック
な気分に。
不治の難病に冒されている仲間のために取って置きのプレゼ
ントをする話やとある主婦と知り合い、離婚騒動に巻き込まれ
る話など、軽いタッチで描かれ、胃もたれ感がない。
ちょっと重いのは、お父さんを見殺しにしてしまい、憎しみと悲し
み、後悔と希望が絶妙にブレンドされた話。
そんな絶望の淵にあるとき、頼りになるのはやはり友人。
大人になると、仕事や生活に追われ忘れがちだが、それを改め
て思い出させてくれる。
池上 永一
勝手に採点 ☆☆ ![]()
近未来の東京では、巨大空中都市「アトラス」が建設され、
温暖化が進み、洪水のようなスコールが降り注ぐ地上を
離れ、新しい世界での都市開発が行われていた。
一方、貧困層は地上の「ドゥオモ」でスラム街を形成し、
政府軍に対して長期に及ぶゲリラ戦を展開。
「ドゥオモ」の新しい女城主そしてゲリラ部隊メタルエイジの
首領となった國子は、「アトラス」に対して総攻撃を開始するが・・・。
とにかく長い。
1ページ二段書きでおよそ600ページの大作。
終盤のストーリーの支離滅裂さと相まって投げ出したくなる欲求を
抑えるのに一苦労。
アイデアは奇抜で大胆だが、戦闘シーンの荒っぽさ、適当さには
目を覆うばかり。
東京を焼け野原にしたはずなのに、なんで婆さん生きてるの?
おんぼろ飛行機でアトラスへの突入が可能なんて。
そんなに進んだ擬態装置があるなら、レーダーぐらいあるだろ新鋭空母。
さらに、主要人物以外の命の軽さはあんまり。
登場人物はほとんど人殺しで庶民はまさに虫けら以下の扱い。
ラストは大胆にも続編があることを匂わす思わせぶりな終焉。
紙が勿体ないので是非とも思いとどまって欲しい。
- 新堂 冬樹
- 砂漠の薔薇
勝手に採点 ☆☆
名門幼稚園への受験競争を勝ち抜くため、サラリーマンの夫を
持つ主婦・のぶ子は死に物狂いで愛娘を叱咤激励する毎日。
しかし、弁護士や医者、金融関係の家庭など、良家子女が集う
予備校の奥様グループからは、蔑み軽蔑され孤立した状態。
そんななか、グループのリーダー的存在でのぶ子の幼馴染でも
ある十和子の娘・こずえが失踪する・・・。
数年前にお受験戦争が引き金となった同様の事件が起ったが
騒動的には完全なる焼き直しで目新しさがない。
偏執狂の主人公もいつもより迫力がなく、ありきたり。
主人公が十和子とこずえを混同しているあたりは、読者にとって
も理解しがたく、一体どうなっているの?的感じ。
のぶ子の夫に対する態度はうなずけるとしても、子供に対する
行動や愛情表現はどうも中途半端。
心と心の交流が感じられない、上っ面をなぞったよう。
ただ、こういった親子関係は珍しくないかもしれない。
最近起った秋田の事件や頻発する虐待事件を見ても、親になり
きれない大人が多いと痛感させられる。
半島を出よ (上)
- 村上 龍
勝手に採点 ☆☆☆☆ o(^-^)o
北朝鮮からテポドンが発射された今、まさにタイムリーな題材。
ここで描かれている設定もあながち的外れではないかも。
設定は近未来。経済破綻をきたし、国力が衰え、失業者の増加、
治安の悪化、核武装を主張するなど近隣諸国からも疎まれる
存在と成り果てた日本。
そこへ北朝鮮の反乱兵数百名が福岡へ侵攻し、駐留・統治を開始。
あわてた政府は九州地方を封鎖し、アメリカや国連に協力を求める
が、正規軍ではない相手のため、効果的な対応策が見出せない。
すると駐留軍は、後続12万人の軍隊の侵攻を発表。
混迷する事態を打開できるは一体誰か。
主人公を中心に進行するストーリーではなく、場面場面で登場人物
が切り変わっていくため、長編にもかかわらず読みやすい。
麻生幾や福井晴敏ばりのコテコテ軍事モノかと思うとそうでもなく、
より人間性にフォーカスした内容に仕上がっている。
結局、日本を救う役割を担うのが、社会から不適格の烙印を押された
若者たちというのも、なんとも皮肉な結末。
今まで集団行動や協調性からは全く正反対にいた彼らが、突然、北
朝鮮兵士をしのぐ完璧な役割分担、一糸乱れぬチームワークを見せ
るところはご愛嬌か。
実際、こうも堂々と自国へ侵攻されたらたまったものではないが、
アメリカのイラク、旧ソ連のアフガニスタン、イラクのクウェート、
そして日本の満州など、こういった例は後を絶たない。
それにしても、現在の北朝鮮の常軌を逸した行動にはあきれて空い
た口がふさがらない。本編でも登場する対米強硬派が政府内部で
力を保持している証拠か。
- 司馬 遼太郎
- 坂の上の雲〈6〉
勝手に採点 ☆☆☆☆
21世紀に残したい名作ナンバーワン。
自身にとっても読書好きのきっかけとなった忘れがたい作品。
日露戦争の陸戦と海戦の立役者である秋山好古・真之兄弟
の活躍と真之の親友で俳聖・正岡子規とのふれあいを描く大
河ロマン。
読み返しも数回を重ねてくると、初読のときの感動・衝撃は薄れ
ていくものだが、その薄れ具合が少なく、毎度新しい感じ方が出
来るのは名作たる所以。
今回改めて印象深かったのは、真之の生き様。
最初のころは好古の超人的な強さに惹かれていたのだが。
なるべくして連合艦隊の参謀に選任され、日本海海戦の作戦を
任された逸材であったが、戦後は別人のようにその輝きを失う。
自分の頭脳の限りを尽くして戦争による効率的殺戮方法を考え、
それがあまりにうまくいった結果、日本に奇跡的な勝利を呼び込
んだものの、戦争の悲劇に打ちのめされる。
そういった人間の弱さを露呈するあたりが、機械的・超人的では
ないヒューマニズムを感じさせ、彼を身近に親しみ深く共感させる。
今回初めて知った事実にがもうひとつ。
なんと連合艦隊の旗艦として東郷平八郎、真之らが乗艦した三笠
が横須賀に展示保存されている。
http://www.kinenkan-mikasa.or.jp/
小説によると終戦後すぐに火薬庫が誘爆して沈没したはずだが。
さすがに近代日本を救ったシンボルとして心を動かされた人が多
いということか。
- 天童 荒太
- 永遠の仔〈5〉言葉
勝手に採点 ☆☆☆☆
精神的に問題を抱えた児童福祉施設で出会った
優希、梁平、笙一郎。
美しい少女である優希に恋した二人が、彼女を苦
しめる原因を排除するため企てた恐ろしい計画・・・。
そして17年後。彼らは再会し、新たな悲劇が始まる。
あまりに重苦しいテーマ、設定のため読むのが重荷
になるほど。
児童虐待もここまで揃うと気がめいる。
ストーリー的には、落ち着くところに落ち着いた感が
あるが、優希の最後の行動はちょっと疑問。
施設でまり子の面倒を見ながら、彼の遺骨を守るべき
なのでは。そういう意味であまりに冷たい仕打ち。
あまりに登場人物が死んでしまうので、もう少し救いや
希望のある話題を組み込まないと改めて読み返したい
という気持ちは沸き起こらない。
