神のふたつの貌/貫井 徳郎
¥1,950
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勝手に採点 ☆☆


教会を営み人格者の牧師を父に持つその息子のお話。


ある日、牧師が教会内にヤクザに追われた優男を匿ったことから、

平穏だった暮らしは思わぬ方向へ。


母とその男が乗った車がガードレールを突き破り谷底へ転落。

二人とも帰らぬ人に・・・。


それから成長した息子は、父と同様に牧師となる。

そして、自分の母と同様に妻を交通事故で失う。


まったく自分と同じ境遇におかれた息子。そんな彼が犯す罪とは!?


はっきりいって大いに期待はずれ。


牧師の仮面をかぶった殺人狂の変質者。


自分の理解者を時計台から突き落としたり、妊娠した恋人に殴る蹴

るの暴行を加えて流産させたり、熱心な信者に自殺を教唆したりと

やりたい放題。


それも然したる理由もないのだから、納得できるはずもない。

都合よく神とは?みたいな議論を入れられても全く理解できない。


そのうえ、主人公を軸にその父親と息子の三代に渡る、それこそ大河

ドラマなみのスケールをあざ笑うかのような矮小な設定。


息子も自分と全く同じような罪を犯してしまうため、父親と息子を混同

せずにいられない。


作品によって出来の良し悪しがはっきり分かれてしまう筆者が挑んだ

新境地は見事失敗。

活動写真の女/浅田 次郎
¥580
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勝手に採点 ☆☆☆


時代は70年代。


京大生となったばかりの主人公が、同じ大学の医学部に通う友人

の紹介で大好きな映画撮影所でアルバイトを始める。


その二人がエキストラとして時代劇に出演した際、まさに絶世の美女

というべき無名の女優に出会う。


あれこれ調べるうちにその女優は、すでに自殺してしまっており、彼ら

にしか存在の見えない亡霊であることが分かる。


そして、友人はその女優の亡霊と恋に落ち、二度と戻れない禁断の世

界線につき走っていくが・・・。


当時の時代背景や活気満ち溢れる撮影所、大学闘争最中の大学の

雰囲気のなどなかりリアルに描かれ引き込まれる。


ただ、幽霊との恋愛という非現実的な設定がリアリティを壊し、現実

なのか虚構なのか、非常にあいまいでどっちつかずの印象を与える。


「メトロに乗って」同様、都合よく虚構の世界を持ち出してしまっている

あたりが共感出来ない。


それよりも、主人公と同じ下宿に住む先輩との儚い恋模様の結末の

方がよっぽど気になる。

現在からの学生時代を回顧するスタイルをとっているため、主人公

の今がどうなったのか分からずじまい。


そうした過去の経験を踏まえて彼がその後どう生きたかを知りたい

ところ。

日本沈没 下 小学館文庫 こ 11-2/小松 左京
¥600
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勝手に採点 ☆☆☆


最近久しぶりに映画化もされた大ベストセラー。


日本大陸が急激に沈下し、海に沈むと予測した異端の科学者。

彼の考えをサポートする謎のフィクサーと、国家規模で対応を

検討する政治家たち。


未曾有の危機に瀕した日本国民は果たして生き残れるのか!?


日本の消滅となるとさすがにスケールが大きすぎて、イマイチ

焦点が定まらない。主人公がいるのだが、だからといって大

活躍する訳ではないし、全編に渡って登場する訳でもない。


確かに、科学的な視点も踏まえ、より具体的に危機管理、防災

対応を検証した画期的作品で、阪神大震災で現実に証明された

危惧も数多い。


しかしながら、娯楽作品としては少々難解。


特にマントルや大陸プレートなど沈没のメカニズムを何ページ

にも書き連ねるのはいかがなものか。


分かりやすく伝えようとする意図は理解できるものの、小説とし

てはそこまで詳細な説明は不必要。


登場人物や場面設定も多彩すぎで誰かに感情移入できない点

が残念。まるで一日の生活を書き連ねる小学生の絵日記のよう。


ところで、主人公を探し回ってた女性はどうしてそんなに彼に

こだわっていたのだろう。

クローズド・ノート/雫井 脩介
¥1,575
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勝手に採点 ☆☆☆☆☆!


大学でマンドリンクラブに所属する地味目の女子大生が主人公。


彼女はあるとき自分のマンションを見上げ、思い出に浸っているよ

うな若い男性に遭遇し心引かれる。すると彼はバイト先の文房具店

に客として表れ、それ以来二人は顔見知りになる。


思い通りに進展しない恋愛に彼女は、部屋に残されていた数冊の

ノートに記された若い女性教諭と小学生たちの心温まる交流に触

れる事で癒され、励まされ、感動を味わう。


掛け出しの画家だった彼の最初の個展で彼女が送ったお祝いの

メッセージとは!?


最初から展開がわかりつつも泣かされてしまった。


特に、亡くなった教師と小学生たちのやりとりは、いじめ問題や教師

の質の低下を忘れさせてくれるぐらい感動的。


こんな一生懸命な先生が増えれば、悲しい事件も減っていくに違い

ない。


単に女子大生の恋愛話で終わらずに、命の尊さ、大切な人を思う気持

ち、前向きに生きていくひたむきさがひしひしと伝わって、大きな感動を

味わえる。


先生の残した「心の力」。


目には見えないが確実に存在するこの力を強く、たくましく成長させる

ことこそ、今の教育現場には求められているのかもしれない。

夜市/恒川 光太郎
¥1,260
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勝手に採点 ☆☆☆


日本ホラー小説大賞受賞作。


ふと迷い込んだ異次元空間での魅惑的な市。

そこは不思議なものが手に入る幻想的な世界。


野球の才能と引き換えに人攫いへ弟を売ってしまった男が、

再び夜市へ舞い戻り、弟を取り戻すべく交渉するが・・・。


いわゆる「トワイライトゾーン」や「世にも奇妙な話の類」だが、

どうも違和感が残るのが、夜市の日常感。


お金は現世のものが使えるようだし、人間が参加することもできる。

言葉も日本語でOK。あまりに都合がいい感じ。


このあたりは、書き下ろしの作品も似た仕上がり。


それでも中盤から終盤にかけての展開はなかなかのもの。

市で出会った紳士が実は捜し求めていた弟だったとは。


そう考えると主人公ともいえる女子大生の役割は微妙。

いなくても良かったのでは!?

チーム・バチスタの栄光/海堂 尊
¥1,680
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勝手に採点 ☆☆☆☆

このミス第4回大賞受賞作。

東城大学医学部付属病院が舞台。

難易度の高い心臓手術「バチスタ」を奇跡的な成功率で成し遂げる
アメリカ帰りのカリスマ外科医・桐生助教授率いるチームバチスタ。

そんな彼らに突然襲いかかる悲劇。その謎を解明すべく、愚痴外来
と陰口を叩かれる不定愁訴外来を担当する万年講師田口が、高階
病院長の命により調査を始める。

調査が難航し、新たな悲劇が起きるに至って、厚生労働省から一人
の男が派遣され・・・。

ストーリー展開、人物描写、大学病院内部のリアリティとどれを取っ
てもかなりの高水準で、手放しで楽しめる。

特に、大学病院に籍を置きながら権力闘争に無関心の田口、ロジカル
モンスターと呼ばれる変人役人・白鳥、

やり手病院長高階、天才外科医桐生とどれをとっても超個性的で、
人物像が自然と浮かび上がってくるよう。

白鳥だけは現実離れ、浮世離れした設定だが、絶妙なスパイスと
なって物語り全体を引き締める。

名作「白い巨塔」にも通じる大学病院内の権力抗争や医療ミス、
医療用語といった難解で重いテーマを扱いながら、登場人物の
個性と平易な文章で読み手が頭を抱えることもなく、飽きさせない。

難をいえば、犯人と犯行動機に説得力が欠けるところだが、それ
でも納得できる程度には落ち着いている。

どうやらシリーズ二作目も出版されたようなので、田口と白鳥の
新たな活躍を期待したい。
明日の記憶/荻原 浩
¥1,575
Amazon.co.jp

勝手に採点 ☆☆☆☆


渡辺謙主演で映画化された話題作。


若年性アルツハイマーに侵されたサラリーマンの主人公。

もうすぐ孫が生まれ、会社でも営業部長として公私共に充実

した生活を崩壊させる悲劇。


自身の病魔を受け入れ、妻と共に生きていくまでの苦悩と悲

しみ、そして希望を描いた感動作。


自身の日記が、記憶のあいまいさが増すほどに、子供が書い

たようにひらがなばかりの稚拙な文章になって行く。


これって、どこかで読んだことのあるスタイルだが、どうも思い

だせない。もしかしてアルツハイマーかも・・・。


壮年期に人格が徐々に崩壊していく様は本当に恐ろしい。


老人であればボケとしてある程度理解されるだろうが、

第二の人生これからというときでは無念でならないだろう。


自分にも起きる確率がゼロでない。

この病気にかかってしまったらどうしよう・・・。


そんな気持ちばかりが先行してまう一冊。


物語自体は客観的で淡々とした描写とドラマティックな設定

が少ないことから、涙が流れる感じの悲しさは少ない。


それでもラストは印象的。

長年連れ添った自分の妻さえも誰なのか分からない・・・。

雪蛍
¥914
株式会社 ビーケーワン

勝手に採点 ☆☆☆


静岡の薬物リハビリ施設に勤める佐久間。

元探偵の彼は、時折、人探しを依頼され引き受けていた。


今回は、資産家令嬢の女子高生の失踪事件を依頼される。


一見ただの家出に見えたが、裏には家族間の複雑な問題

が絡んでいた!彼は無事に彼女を探し出せるのか!


展開のスピードがかなり遅く、肝心なところにたどり着くころ

には、もう飽きちゃったという感じ。


設定自体が元探偵とありきたりである上に、ヤクザの妨害

や関係者の殺害、その犯人が家族内にいるなど、これは

という目新しさ、斬新さに欠ける。


また、手の付けられないリハビリ施設の問題児も、ごくあっ

さりと改心してしまうあたりは肩透かし。


そもそも、ハードボイルド=探偵

という設定は平和な日本では成り立ちにくい


浮気調査=探偵ならわかるが。


その点では警察官の方が拳銃を携帯しているし、捜査権を

持っているので、ハードボイルド刑事が成り立ちやすい。


新宿鮫のようなスピード、スリル、バイオイレンスをマイルド

にし過ぎた分、魅力も半減。


ぜひ新作「狼花」に期待したいところ。

金融腐蝕列島 下
¥571
株式会社 ビーケーワン

勝手に採点 ☆☆☆☆


舞台はメガバンク協立銀行。一流私大卒ながらも、東大卒が幅を利

かせる行内にあって屈辱的な辞令を受け取る竹中。


それは総会屋対策を専門とする部門への異動だった・・・。

異例の人事異動に隠された銀行を揺るがすスキャンダルとは。


会社の論理に巻き込まれながらも自説を貫こうとする孤高な姿は

見ていて清清しく憧れる。


不正融資に手を貸し、良心の呵責に苛まれながらも、敢えて権力者

に立ち向かう勇気は見習いたいもの。


サラリーマンではなかなかこういった行動は難しい。


それと株主総会のリハーサル風景は、自身の経験と相まって懐かしい

印象。確かにこういった意地悪質問をさせた思い出もあるし、総会後の

お酒のうまいことといったら格別。


主題となっている銀行内部の権力闘争とは本当に凄まじい。


他人を蹴落とし落としいれ、自分の踏み台、盾として利用していく。


その勝者が会社を私物化し、権力にしがみつく様になっては見苦しい

し、なにより会社にとってもは最大の不利益。


権力は清らかな水の如くあり続け、溜まりになってはいけない。


近年の商法改正によって、経営に対する監視、ガバナンスの強化が

図られているが、体質は変わってきているのだろうか。


そういった意味では、ちょっと設定が古い感は否めないが、ぜひ続編

を手にとって見たいもの。

夢にも思わない
¥619
株式会社 ビーケーワン

勝手に採点 ☆☆


男子中学生を主人公に彼が巻き込まれた殺人事件を通じて、

友情や恋愛を深め、人間的に成長していく姿を描く推理小説。


中学生が主人公とあって、全く感情移入ができず、読み進め

るのに一苦労。


同じ少年からの視点で描いた「龍は眠る」のような緊迫感や

スピード感に欠け、少年探偵団的展開がリアル感にも乏しい。


親友の島崎との友情はなかなかうまく描かれ、もどかしい

感がうまく引き出されているものの、クドウさんとの恋愛に

ついては今ひとつ。


何でそこまでこだわるのかが理解出来ない。それも少年

特有の潔癖性的な性分か。そういう心情が分からないと

ころがおじさんのつらいところ。


それと決定的に違和感を感じるのが刑事たち。


たかが中学生に秘密であるはずの捜査情報を与え、まる

で小間使いとして使っている。ありえない。